テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.07.13

商店街はこのまま絶滅してしまうのか?

 シャッター商店街という言葉すら半ば過去のものになってしまったほど、「商店街」が廃れて久しい。まだまだ活気の残っている商店街でも、コンビニや大規模チェーン店が大部分を占領しているところが多い。個人商店の集まりとしての商店街は、全国的に滅びつつあるといってよい状況だ。

ショッピングモールがあればいい?

 商店街が廃れた原因としてよく挙げられるのが「郊外型ショッピングモール」だ。確かにショッピングモールに行けば、ほとんどの買い物は済んでしまうし、映画や食事を楽しむこともできる。ショッピングモールさえあればいいと思っている人は多いだろう。もしかすると、ネットショップがありさえすればいいという人も、いるかもしれない。

 しかし、本当にショッピングモールやネットショップがあればいいのだろうか。

商店街も昔は最先端だった

 商店街といえば保守的なイメージが強いが、本来、商店街は伝統的なものではない。1930年代、商店街は個人商店たちが百貨店に対抗して行う最先端の小売ビジネスモデルだった。「横の百貨店」といわれ、全国に広まっていったのだ。

 戦後の高度成長期、都市部の企業で働く人が爆発的に増えていったが、実は、商店街も企業に劣らず、日本の雇用を支える重要な拠点だった。いま、個人が新たにお店を出して、長く続けていくのは大変なことだが、30年前、40年前は、もっと気軽にお店を出すことができた。

 その頃は、企業で働く以外に、商店街で都市型自営業を行うという「抜け道」が確実にあったのだ。

 20世紀のあいだ、商店街は、雇用の受け皿の一つとして社会に必要とされ続けた。そのため、商店街は国から手厚い保護を受け、努力を怠ってきた側面も否めない。個人商店が、非効率的で儲からない存在とみなされていったのは、自業自得の部分もある。

本当は商店街があったほうがいい

 しかし、商店街には見逃せない「能力」がある。地域コミュニティを育む力だ。ショッピングモールやネットショップは楽しく便利だが、そこで地域の人々の交流が図られることはほとんどない。

 対する商店街は、地域の人間関係のハブとなり、地域の祭りや催しの主体者となることができる。本当は、地域社会には商店街があったほうがいいのだ。

 今後、地域を支える新たなコミュニティが全国各地で必要となってくるだろう。そのコミュニティを創る手段の一つとして、商店街の再生が有効だ。

 地域の協同組合や社会的企業に営業権を付与する仕組みをつくるなど、商店街を再興させる方法はあり、実際に再生が進んでいる商店街がいくつもあるという。商店街には、実はまだまだチャンスと可能性が残されている。

<参考文献>
・『商店街はなぜ滅びるのか』(新雅史著 光文社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
2

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景

国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
3

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
4

「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実

「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実

戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌

日本の陸軍は第二次世界大戦を「100年戦争」であると見なした。勝てる見込みは少なかったにもかかわらず、天皇と国民の一体性という精神主義によって、総力戦になだれこんでいった。石原莞爾が満州事変を起こした時に描いたスト...
収録日:2020/02/26
追加日:2020/08/04
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
5

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家