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DATE/ 2022.03.22

教科書には載ってない!鎌倉幕府と北条氏の真実

 2022年NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が好調のようで、脚本を務める三谷幸喜さんらしい軽妙なシーンと残酷なシーンの対比も、大いに話題になっています。とはいえ、この時代のことは、案外ご存じない方も多いはず。せっかくの機会ですから、ぜひとも「武士の誕生」から「武家政権の確立」までの歴史を学んでおきたいもの。ドラマをご覧になる方は、楽しみが幾倍にもなるはずです。ドラマをご覧にならない方も、日本史の教養として重要なポイントです。

鎌倉幕府と北条氏の真実の姿に迫る

 そこで今回は、坂井孝一氏(創価大学文学部教授)のテンミニッツTVでの講座を紹介します。坂井氏は今回の大河ドラマの時代考証も努めており、また、鎌倉幕府誕生前後のことについて、新書も含め数多くの書籍を発刊されている、まさに第一人者です。

 鎌倉幕府誕生前後の過程は、とかく複雑ではありますが、坂井氏は、柔らかな口調で、とてもわかりやすく解説しています。例えば、源平の戦いの前の北条氏が、かなり小さな規模の武士団だったこと。頼朝の女性トラブルが北条氏の運命を大きく変えたこと。北条政子、義時、そして彼らの父・北条時政が、いかに時代を切り拓いたのか、などの概略が説明されます。

 大河ドラマの第1回(北条家)でも、さっそく源頼朝(演・大泉洋さん)の女性トラブルが描かれましたが、講義の第1話をご覧いただくだけで、その背景がよく理解できるようになるはずです。とくに、当時の都(京都)と東国武士団の「夫婦関係の常識の違い」がトラブルの元になることなど、まことに興味深い話といえるでしょう。

 第2話以降で、まず取り上げられるのがその「頼朝をめぐる女性問題」です。最初の話題は、源頼朝と、最初の妻とされる八重にまつわる物語です。

 伊豆に流されていた源頼朝は、よりによって自分の配流先で監視役でもある伊東祐親の末娘・八重とのあいだに子供をつくってしまいます。しかも、伊東祐親が役務で京都に滞在していたあいだに、です。

 ドラマでは新垣結衣さんが演じている「八重」ですが、詳細な歴史は伝わっていません。頼朝との子供を父の伊東祐親に殺された後、自害したという伝説も広く流布していますが、坂井先生は別の説を唱えておられます。実はその後、かなり重要な人物になったのではないかというのですが……。そのことについては、第2話、第3話で詳細に描かれますので、ぜひお楽しみにご覧ください。

 そして北条政子と源頼朝の関係です。伊東祐親は、半ば厄介払いのようなかたちで、源頼朝を自分の縁戚(娘婿)だった北条時政の元に追放したのではないかと坂井氏はいいます。そこで時政の娘の政子に、また頼朝が手を出すのです。

 しかし政子は、頼朝と行動をともにすることで、人間的に大きく成長していきます。小さな規模の武士団で育った政子は、東国武士たちの気持ちもくみ取ることができる「おかみさん」のような立場になっていきました。

 一方、女癖の悪い(?)頼朝は、その後も女性問題を起こし続けます。そこで、政子は浮気相手の家財道具の打ち壊しに及んだというのですが……。北条政子の興味深い実像については、ぜひ第4話、第5話をご覧ください。

将軍の悲劇と御家人たちの抗争、そして東国武士による幕府政権へ

 第6話以降では、源頼朝と北条政子のあいだに生まれた2人の息子、源頼家(2代将軍)と源実朝(3代将軍)のこと、そして御家人たちの凄惨な抗争や暗殺劇の実像が詳しく語られていきます。源頼家も実朝も、「それほど力がない将軍だったのではないか」といわれることもありますが、坂井氏はその見方を否定されます。

 たとえば『吾妻鏡』には、実朝が暗殺されたときに104名の御家人が出家したと書かれています。それは頼朝が死去したときより、はるかに多い人数でした。そこまで大きなショックを御家人たちに与えるほどの存在だったのです。

 しかし、第2代、第3代の将軍の力がそのようなものだったからこそ、彼ら頼朝の息子たちをめぐって、御家人たちの抗争が続くことにもなるのです。

 ところで源実朝は、実は「公武合体」を構想し、実際に、後鳥羽上皇とも交渉を重ねさせていました。ところが、実朝が暗殺されたことで、事態は一気に京都側と鎌倉側が激突した「承久の乱」へと流れ込んでいきます。

 その後、東国武士たちによる幕府政権が確立していきますが、そうした経緯も含め、頭のなかに人間関係や歴史の構図をバッチリと描くことができる講座です。

 なお、合わせて「鎌倉殿と北条氏…武士の誕生と権力の確立」特集もご覧ください。実は、この時代の実像は、学校の歴史で習った内容からかなり変わってきています。新しい知見を学べる多面的な特集です。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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