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『ゆるストイック』に学ぶ、不確実な時代を生きる新たな方法
「少し力を抜いて生きよう」――コロナ禍にあったとき、世の中はそうした風潮が広がりました。それから少し時間が経過した現在、「がんばりすぎない」という生き方から抜け出せず、方向性が見えないまま戸惑っている人もいるのではないでしょうか。この状況に対しては、周囲のノイズから少し距離を置き「淡々と自分のペースで歩み続ける」というスタンスが有効かもしれません。
ただしSNSなどを目にすると、絶えず情報が流れ込んできます。そうなると「自分のペースで」ということは簡単ではありません。ではどうすればよいのでしょうか。この点に関して「ゆるストイック」というキーワードを中心に筆者の思索をまとめた本が、今回紹介する「ゆるストイック──ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考」(佐藤航陽著、ダイヤモンド社)です。
著者の佐藤航陽(さとうかつあき)氏は1986年福島県生まれの起業家、発明家、宇宙ロボット開発者です。佐藤氏は早稲田大学法学部在学中の2007年に、ビッグデータ解析やオンライン決済に関する会社を立ち上げます。その後、世界8カ国に展開し、2015年には20代でマザーズに上場。この頃には年商200億を達成し、2017年に宇宙開発を目的とした株式会社スペースデータを創業しました。現在は宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働しています。他の著書としては『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(NewsPicks Book)や『行動する人に世界は優しい―自分の可能性を解き放つ言葉―』(新潮社)など多数あります。
このために佐藤氏は、まずは一度「アンラーニング」することを推奨します。具体的にはSNSのアプリを消して、日常的に入手する情報を一度遮断し、自分の価値観を一旦捨てることから始めるとよさそうです。こうして自分の思考を一度リセットすると、「なぜあれほどまでにどうでもいいことを気にしていたのだろう」と思うようになるとのこと。佐藤氏は「古くなった価値観をアンインストールして『空き容量』を確保すること」がまずは最優先だといいます。
このとき、過去の人々が生み出し社会に定着させた「発明品」(=古くなった価値観)について、本当に自分に必要なものを選び取り、それ以外は手放します。この価値観として挙げられているのが「公正世界仮説」「被害者意識」「自己責任論」「ゼロリスク思考」「ゼロ失敗思考」「ロジカルシンキング信仰」の6つです。本書ではそれぞれについて、現代ではどういう点がそぐわないのかということについても触れられます。
ここではこの部分の詳細については割愛しますが、該当部分を読むと自分が解放されるかもしれません。また、この代わりの発想方法として、「自分がコントロールできないことに焦点を当てない」姿勢と「『願望』と『現実』を混同せず、現実の仕組みを理解する」ことが推奨されています。これらが「ゆるく(柔軟に)」考える土台となります。
さらに努力を続けるには「あらゆることをゲーム化すること」が勧められています。おおよそ20%から30%の確率で自分の望んだ結果が返ってくるときに人は没頭しやすいことがわかっています。つまり10回中2~3回当たるゲームにすることです。こういったタスクを自分に設定することで、意欲が続きやすくなります。
また目標設定は、現在の自分では少し「できなさそうなこと」こそが、自分にとって最適な難易度です。たとえば「まず2キロ減らす」「毎日10分運動する」といった例が示されています。このような小さな目標を達成したら、ゲームでステージが進むごとに少しずつ難しくなるのと同様に少しずつ目標を高くしていきます。こうしていくと小さな成功体験が積み重なり、挑戦が楽しくなります。こうして達成感を重ねていくと、大きな目標への自信とモチベーションが高まります。
現代は何が起こるかわかりません。しかし私たちは、回数制限なしにくじを引くことができます。なんどでもチャレンジしていれば、いつかは当たりがくるかもしれません。運がいい人の特徴はシンプルに「とにかく試行回数が多い」ことです。「運の悪い人」から脱却するためには、「失敗」=「無能」という固定観念から早めに脱却し、なんどでもチャレンジすることです。
本書での「ゆるさ」とは「柔軟さ」のことです。一方で「ストイックさ」とは「今日が最後かもしれないと意識して生きること」とも言えます。佐藤氏は「もし何の制約もなかったとしたら、自分は何をするだろうか?」と考えるそうです。そうして出てきたことを実行していくだけで、日々は充実するといいます。
本書のあとがきでは、「『持たざる者』は世の中の仕組みを誰よりも理解した上で『運』を味方につける必要がある」と示されています。この「運」を味方につけるには、「ゆるく」努力を続けながら、「ストイックに」自身を見つめて生きていくことです。本書はこのように、不確実な現代での生き方のヒントが「ゆるストイック」という言葉に凝縮されています。ぜひ本書を開いてみてください。読み終える頃には、目の前の現実やここに立っている自分の姿が以前よりもだいぶクリアになっているはずです。
ただしSNSなどを目にすると、絶えず情報が流れ込んできます。そうなると「自分のペースで」ということは簡単ではありません。ではどうすればよいのでしょうか。この点に関して「ゆるストイック」というキーワードを中心に筆者の思索をまとめた本が、今回紹介する「ゆるストイック──ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考」(佐藤航陽著、ダイヤモンド社)です。
著者の佐藤航陽(さとうかつあき)氏は1986年福島県生まれの起業家、発明家、宇宙ロボット開発者です。佐藤氏は早稲田大学法学部在学中の2007年に、ビッグデータ解析やオンライン決済に関する会社を立ち上げます。その後、世界8カ国に展開し、2015年には20代でマザーズに上場。この頃には年商200億を達成し、2017年に宇宙開発を目的とした株式会社スペースデータを創業しました。現在は宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働しています。他の著書としては『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』(NewsPicks Book)や『行動する人に世界は優しい―自分の可能性を解き放つ言葉―』(新潮社)など多数あります。
まずは「アンラーニング」して価値観をリセット
「ゆるストイック」というスタンスでは、「あなたは◯◯すべきだ!」というマウントは決してとりません。また、自分の力だけで成し遂げようとせず、周りの助けを素直に受け入れる「ゆるさ」も重要です。現代の二極化した超格差社会では、「ゴールを急ぐのではなく、続けることそのものを楽しむ」こと、つまり「こつこつと持続的に楽しみながら努力すること」が大事です。「自分を律するストイックさ」と他人と違う考えを許容し干渉しない「寛容さ(ゆるさ)」という、相反する価値観を同時に持つことが「強さ」に直結する、と佐藤氏は述べます。このために佐藤氏は、まずは一度「アンラーニング」することを推奨します。具体的にはSNSのアプリを消して、日常的に入手する情報を一度遮断し、自分の価値観を一旦捨てることから始めるとよさそうです。こうして自分の思考を一度リセットすると、「なぜあれほどまでにどうでもいいことを気にしていたのだろう」と思うようになるとのこと。佐藤氏は「古くなった価値観をアンインストールして『空き容量』を確保すること」がまずは最優先だといいます。
このとき、過去の人々が生み出し社会に定着させた「発明品」(=古くなった価値観)について、本当に自分に必要なものを選び取り、それ以外は手放します。この価値観として挙げられているのが「公正世界仮説」「被害者意識」「自己責任論」「ゼロリスク思考」「ゼロ失敗思考」「ロジカルシンキング信仰」の6つです。本書ではそれぞれについて、現代ではどういう点がそぐわないのかということについても触れられます。
ここではこの部分の詳細については割愛しますが、該当部分を読むと自分が解放されるかもしれません。また、この代わりの発想方法として、「自分がコントロールできないことに焦点を当てない」姿勢と「『願望』と『現実』を混同せず、現実の仕組みを理解する」ことが推奨されています。これらが「ゆるく(柔軟に)」考える土台となります。
努力はゲーム化して実践する
こうして「柔軟な思考」を取り入れることができたら、あとは努力します。ただし、努力は必ず報われるわけではありません。また、「才能」だけで成功するわけでもありません。より大事なのは環境などの「運」です。運を味方につけることで「ほんの少し他人より優れた特徴があれば、それだけで十分にチャンスを掴むことができる」と佐藤氏は言います。さらに努力を続けるには「あらゆることをゲーム化すること」が勧められています。おおよそ20%から30%の確率で自分の望んだ結果が返ってくるときに人は没頭しやすいことがわかっています。つまり10回中2~3回当たるゲームにすることです。こういったタスクを自分に設定することで、意欲が続きやすくなります。
また目標設定は、現在の自分では少し「できなさそうなこと」こそが、自分にとって最適な難易度です。たとえば「まず2キロ減らす」「毎日10分運動する」といった例が示されています。このような小さな目標を達成したら、ゲームでステージが進むごとに少しずつ難しくなるのと同様に少しずつ目標を高くしていきます。こうしていくと小さな成功体験が積み重なり、挑戦が楽しくなります。こうして達成感を重ねていくと、大きな目標への自信とモチベーションが高まります。
ゆるさ=環境の力を借りる柔軟性、ストイックさ=自力での成長
佐藤氏は「他力」と「自力」という異なるエネルギー源を組み合わせて自分を成長させること、つまり、「環境の力を借りる柔軟さ」と、「自力での成長」を両立させることを大事にします。これがつまり「ゆるさ」と「ストイックさ」です。このとき大事なことは「因果にとらわれず、ランダムな出来事を自然なものとして受け入れる」ことです。現代は何が起こるかわかりません。しかし私たちは、回数制限なしにくじを引くことができます。なんどでもチャレンジしていれば、いつかは当たりがくるかもしれません。運がいい人の特徴はシンプルに「とにかく試行回数が多い」ことです。「運の悪い人」から脱却するためには、「失敗」=「無能」という固定観念から早めに脱却し、なんどでもチャレンジすることです。
本書での「ゆるさ」とは「柔軟さ」のことです。一方で「ストイックさ」とは「今日が最後かもしれないと意識して生きること」とも言えます。佐藤氏は「もし何の制約もなかったとしたら、自分は何をするだろうか?」と考えるそうです。そうして出てきたことを実行していくだけで、日々は充実するといいます。
本書のあとがきでは、「『持たざる者』は世の中の仕組みを誰よりも理解した上で『運』を味方につける必要がある」と示されています。この「運」を味方につけるには、「ゆるく」努力を続けながら、「ストイックに」自身を見つめて生きていくことです。本書はこのように、不確実な現代での生き方のヒントが「ゆるストイック」という言葉に凝縮されています。ぜひ本書を開いてみてください。読み終える頃には、目の前の現実やここに立っている自分の姿が以前よりもだいぶクリアになっているはずです。
<参考文献>
『ゆるストイック──ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考』(佐藤航陽著、ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478120729.html
<参考サイト>
佐藤航陽氏のX(旧Twitter)
https://x.com/ka2aki86
『ゆるストイック──ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考』(佐藤航陽著、ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478120729.html
<参考サイト>
佐藤航陽氏のX(旧Twitter)
https://x.com/ka2aki86
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