社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.03.15

「はしり」「さかり」「なごり」もの…日本の旬は3つある!

 店頭に山盛りに積まれた野菜やフルーツ、「今が旬」とシールが貼られた魚など、スーパーに行ってその品揃えを見さえすれば旬の食べ物がひと目でわかるほど、日本の食は「旬」に敏感です。

 実はこの「旬」、さらに深く3つにわかれているのをご存知でしょうか?

3つの旬を知って、美味しい季節をいただこう

 日本の「旬」には、収穫の時期を追って分類した「はしりもの」「さかりもの」「なごりもの」の、3つの味があります。世界中で、ここまで旬の味を細分化しているのは、日本くらいだといいます。

 まず「はしりもの」とは、その季節にはじめて収穫され、市場に出回りはじめたもののこと。日本には初物は縁起がいいという考え方や、新しいものを先取りすることを粋とする文化があり、それは「初カツオ」や「鮎漁解禁日」「新茶」などの「はしりもの」に象徴されています。

 味に関しては、みずみずしさや青くさい味わいを楽しむ野菜もありますが、おおむね未熟で安定していないもの。それに反して値段は初物の希少価値から高めになりますが、それでも食べたい、というのが「はしりもの」の魅力です。

 次に「さかりもの」。これはたいていの人が「旬」として意識している、季節の食べ物の一番美味しい盛りのこと。スーパーの売り場で一番目立つところにどっさりと積まれているものが、まさにこの「さかりもの」です。今はハウス栽培などで一年中食べられる野菜もたくさんありますが、たとえばトマトの夏の盛りの完熟した甘みは、この季節を逃すとなかなか味わうことができません。

 収穫量も安定し、値段の変動も少なく安くなり、栄養価も一番高い時期。「さかりもの」を、進んで食卓に並べたいものです。

 そして、一番聞き慣れない「なごりもの」とは、その旬の終わりかけの食材のこと。野菜なら水分が減り硬くなってくるものもありますが、コクや深みを感じる味わいを楽しめるものも。なごりの柿は酸味や渋味がほぼ抜け円熟した味になり、フグはなごりの3月に白子が一番大きくなるため、食通の間では「なごりふぐ」を楽しみにしている人もいるほど。

 「なごりもの」は、「来年もまた美味しく食べられますように」という願いを込めて名残り惜しみながら食べるという、日本人の食べ物への感謝の心をあらわしています。

食卓で旬が出会う、「であいもの」

 日本には、このような旬の食べ物同士を合わせた「であいもの」という食文化もあります。

 たとえば冬の「さかりもの」の大根と鰤を合わせたぶり大根。秋の「はしりもの」の松茸と、夏の「なごりもの」の鱧を合わせた京料理。これからの季節なら、旬のワカメと筍を合わせた「若竹煮」もおすすめです。

 相性の良い旬の食べ物同士を出会わせることで、風味を引き立て合ったり、より季節感を高めたりと、日本の食文化の奥深さを「であいもの」が教えてくれます。

 四季があるからこそ、発展し受け継がれてきたのが、日本の食文化なのですね。

 献立選びに迷ったときは、「はしりもの」「さかりもの」「なごりもの」の3つの旬を意識して、あなたなりの「であいもの」で料理を作ってみるのはいかがでしょうか。季節から献立を組み立てていくおもしろさに、開眼するかもしれません。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質

中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景

チベット、内モンゴル、新疆ウイグルなど、少数民族に対する深刻な人権侵害をめぐって欧米諸国から強い批判を浴びている中国。しかし、こうした人権問題は今に始まったことではない。中華人民共和国建国の経緯と中国共産党の思...
収録日:2021/10/15
追加日:2021/12/24
橋爪大三郎
社会学者 東京科学大学名誉教授 大学院大学至善館教授
2

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために

エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如

現代社会にとって空海の思想がいかに重要か。AIが仕事の仕組みを変え、超高齢社会が医療の仕組みを変え、高度化する情報・通信ネットワークが生活の仕組みを変えたが、それらによって急激な変化を遂げた現代社会に将来不安が増...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/12
3

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害

内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害

高度成長のために頑張った日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の評価を得たが、その後の日本企業の凋落、競争力の低下を考えると、その弊害を感じずにはおられない。読書人口が減っている現状をみると、いつのまにか「世界...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/12/01
4

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係

熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か

お酒やコーヒーなど世の中には睡眠に良くないのではないかといわれるものがある。また、現代においては特に、スマホの「ブルーライト」が睡眠には大敵だといわれているが、それらは本当に悪者なのか。一般に良い睡眠を妨げると...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/30
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
5

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授