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DATE/ 2016.05.12

あの悪役のモデルはトランプだった!米大統領選にみる共通点

 昨年2015年は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ第2作に描かれた未来の年。アメリカはもちろん日本でも記念イベントが開催された「2015年到着日」の10月21日には、「ビフのモデルはトランプ」という事実も発覚しました。

脚本家自身が肯定した「ビフのモデルはトランプ」説

 米ニュースサイト「デイリー・ビースト」が報じたのは、憶測や推察ではなく、シリーズの脚本家ボブ・ゲイル氏自身の談話。これにより、主人公へのいじめを繰り返す悪役ビフ・タネンのキャラクターが、2016年米大統領選挙の共和党最有力候補ドナルド・トランプ氏に着想を得ていたことがわかったのです。

 まさか「PART 2」が公開された1989年に大統領選出馬まで予想したわけではないでしょうが、映画ではマーティがビフのオフィスで彼と対決するシーンで、自分の肖像画の前で同じポーズをキメてみせるビフの姿を見ることもできます。

暴言を連発するトランプ氏とビフの共通点

 映画の中では、過去の自分自身から渡された「スポーツ年鑑」1冊を振り出しに巨万の富を得たビフが、27階建てカジノのオーナーに。その間、マーティの父を殺害して母と結婚したビフは、かつてのホームタウンをスラム街に変えてしまい、一人勝ちを誇っているという設定でした。

 一方のトランプ氏は、大統領選挙に立候補してからも「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ」「メキシコ国境に万里の長城をつくる。費用はメキシコ持ちだ」などの暴言を連発。これまでの候補者なら一発で世論の総スカンを食らっていたはずのところ、支持層からますます熱いラブコールを受け、いまだ勢力は伸長中です。

政治の素人だからこそ「ウケて」いるのがトランプ現象?

 この大統領選の不透明さを丁寧に分析し、10MTVのなかで語っているのが、政治学者の曽根泰教氏(慶應義塾大学大学院教授)です。

 本命候補であるヒラリー・クリントン氏が実力とは裏腹に苦戦を強いられていることに加え、共和党の中でもトランプ氏に伯仲するほどの候補がいないことが、トランプ氏の存在感をどんどん高めています。

 本業の不動産業で財をなした大金持ちが、政治経験も知識も乏しく、特筆すべきブレーンもつけず、熟知したエンターテイナーとしての手法で国民の支持を集めてきた、というのが曽根氏の見方です。

民主党からは「社会主義」候補も?

 欧米のメディアから集中非難を浴びる状態が続いても、どこ吹く風。日本のことわざで言えば「憎まれっ子、世にはばかる」を地でいく「ビフもどき」の候補。彼が、予備選を経て生き残る見通しは、高まってきました。

 一方で、民主党の側でも社会主義者を名乗るバーニー・サンダース候補が「大学の入学金ゼロ」などを掲げて、支持を集めています。まっとうに努力を重ねても、「素人」では逆転の効かない格差の現状をアメリカ国民の大半が憂い、なんとか転覆したい気持ちが伝わってくるのはたしかなことです。
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授