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DATE/ 2016.12.14

ベストセラー小説より古典を読むべき?

 「読書するなら、古典を読みなさい」とよく言われるけれど、古典は難しくてなかなか読む気にならない…。そう思っている方々に朗報だ。

 山内昌之氏(東京大学名誉教授、明治大学特任教授)によれば、松下村塾を開き、高杉晋作や伊藤博文を育てたあの吉田松陰は、実はベストセラー小説などをよく読んだという。(『10MTV』収録「読書とは何か(3)人生修行の素材としての読書」)

 ペリーが来た時、松陰がアメリカに密かに渡航しようとして失敗し、投獄されたのは有名な話だが、その牢屋の中で松陰は、『赤穂義臣伝』という赤穂四十七士の討ち入りの話、三河地域の旅行案内本『三河後風土記』、真田十勇士などを中心とした通俗的な歴史物語『真田三代記』などを読んでいたことが分かっている。

 そして、そのような本を読みながら、「今日の読書こそ真の学問と言うものなり」と真面目に語ったという記録も残っている。

 なぜかといえば、松陰は読書を、単に知識や教養を得るだけでなく、“人生修行のための素材”と考えていたからだ。赤穂四十七士や真田十勇士からも、人生の糧を得ていたのだ。自分ならどのように行動するかを真剣に考えながら読んだのだろう。そのような姿勢があれば、ベストセラー小説からも学ぶことはたくさんあるのだ。

 むろん古典の読書にはおおいなる効用があるが、松陰の例からも分かるように、ベストセラー小説などから得るものがないわけでは決してない。読む側の考え方次第で、読書には様々な可能性と多様性がある。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授