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DATE/ 2016.12.12

なぜ歴史を学ぶと良いのだろうか

 ビジネスのヒントを得るために、人生の糧として、あるいは好奇心の赴くままに、“歴史”を学ぶ人は多い。一方、それよりも現在を知った方がよいといった理由で、歴史を軽視する人もいる。人さまざまだ。

 では、なぜ歴史を学ぶと良いのだろうか。果たして歴史を学ぶことに何の意味があるのだろうか。この問いに答えるのは意外と難しい。

 このような時こそ、プロの声に耳を傾けてみたい。例えば、中東・イスラーム地域研究の第一人者、山内昌之氏(東京大学名誉教授、明治大学特任教授)は、歴史を学ぶ意味を次のように説明する。(『10MTV』収録「読書とは何か(1)私たちは本から何を得るべきなのか」)

 まず、15世紀から16世紀に活躍した『君主論』のマキャヴェッリは、「世の識者は、将来の出来事をあらかじめ知ろうと思えば、過去に目を向けよ、と言っている。この発言は道理にかなったものだ」と言っている。

 また、ルイ14世の寵臣、カリエールは「事実や歴史にくわしいということは、交渉家が敏腕であるために大切な素養の一つである」と語った。

 二人の意見に共通するのは、今も昔も人間は常に同じような欲望に動かされてきたのだから、“過去の先例”こそ、今後の自らの行動を決める際、大いに参考になるということだ。

 マキャヴェッリとカリエールを踏まえて、山内氏は次のように指摘する。「平成の時代に生きる私たち日本人にとっても、例えば歴史の書物をひもとくのは、そこに現代の性格を理解し、未来への道筋を考える豊かな手がかりを求めることができるから」だ。

 つまり、現代や未来を考えるためにこそ、私たちは歴史を知る必要があるのだ。

 西郷隆盛や勝海舟が後に大きく影響を受けた江戸の思想家・佐藤一斎は、「読書するとき、昔の聖人や賢人やあるいは豪傑の…精神がいまだに生きていると思うと、目を開いて発奮して奮い立つ」と書いた。

 本の中には、過去の人々の知恵が今も息づいている。現在や未来を見極めたい人ほど、彼らの言葉から得られるものは多いはずだ。
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