テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.09.18

最も失業率が低い県は?働き方でみる都道府県ランキング

 統計に表れる数字を通じて、各都道府県の「住みやすさ」を探るシリーズ。今回はワークスタイル篇です。「地域おこし」「田舎暮らし」「Iターン」などを考える上でも、生活を支えるための「就業機会」がどの程度あるかは、最も気になるところです。都道府県別のワークスタイル状況を探ります。

「住みたい町」が「働ける町」とは限らない

 よほど潤沢なリタイア資金を持って移住するのでないかぎり、気になるのはその土地で働けるのかどうか、ということ。まず総務省の「労働力調査」から「年間完全失業率」のランキングを見てみましょう(以下は2015年度の調査結果ですが、「労働力調査」はもともと都道府県別の分析を目的としていないため、結果精度は「十分に確保できない」と発表時に明言されています。参考程度にしたほうがいいでしょう)。

 失業率の全国平均は3.4パーセント。都道府県で一番高いのは、沖縄県で5.1パーセント。2位以下には青森県4.5パーセント、大阪府、福岡県4.2パーセント、秋田県、宮城県3.8パーセントと続きます。今回のデータは参考程度にしたほうがいいとはいえ、雑誌「田舎暮らしの本」2015読者アンケートで移住したい都道府県ランキング4位に入っている沖縄県が年間完全失業率1位とはショックですね。一方、最も失業率が低いのは福井県で1.9パーセント。滋賀県、三重県2.2パーセント、富山県2.3パーセント、岐阜県2.4パーセントが続いています。

 ちなみに東京都の完全失業率は、全国平均を上回る3.6パーセント。人口の多さを考え合わせると、状況は決して明るいとはいえません。また、失業率の高さと未婚率は相関関係が高いともいわれています。不安定な経済状況が結婚をあきらめさせる原因となるのは致し方ないとはいえ、何らかの逆転策によって、失業と少子社会から同時に脱出することも可能といえるのではないでしょうか。

育った町で働けるのかどうかをチェックする

 その町で育った若者が就職できる町なのかどうかも問題です。「高卒求人倍率」ランキングを見てみましょう。

 厚生労働省の報道発表資料による2012年の数字によると、全国平均は1.37倍で、求人倍率第1位は東京都で4.34倍。続いて、愛知県1.89倍、大阪府1.86倍、京都府1.77倍、広島県1.74倍となります。ただし、この数字は当然のことながら、高卒求職者数との関係があります。東京都の高卒求職者数は、高校3年生100人あたり5.27人と、全国平均15.04人を大きく下回し最下位。大学進学率が高いからなのはいうまでもありません。

「正規雇用」をゲットしたければ、日本海側へ移住?

 ワークスタイルの中でも「格差」の代名詞となっている「非正規雇用率」のランキングはどうでしょうか。総務省の「就業構造基本調査」を見てみましょう。2012年時点で、全国平均の非正規雇用率は38.15パーセント。企業で雇用されている労働者の5人に2人ほどが非正規労働者ということになります。

 最も非正規雇用率が高いのは、沖縄県で44.52パーセント。2位は北海道42.82パーセントで、京都府41.75パーセント、大阪府41.30パーセント、福岡県39.97パーセントと続きます。一方、最も非正規雇用率が低いのは福井県で32.73パーセント。富山県32.89パーセント、徳島県33.74パーセント、新潟県34.08パーセント、福島県34.74パーセントと続きます。

 このように見ると、「年間完全失業率」でも低位を誇っていた福井県や富山県の「正規雇用率」の高さが光ります。従業員が安心して働ける県は、日本海側に集中しているということでしょうか。

「内定取り消し」「派遣切り」にも地域性はある?

 さて、働く側にとって最も避けたい状況は何でしょうか。少し数字は古いのですが、「内定取り消し」についてのランキングが厚生労働省から発表されています(2009年度)。

 圧倒的に多いのは東京都の総数905人で、人口10万人あたり7.09人に上ります。第2位の静岡県の総数182人も、人口10万人当たりでは4.79人となり、この2都県が他県よりも高い内定取り消し率となっていました。

 さらに「派遣切り」はどうでしょうか。厚労省が生産年齢人口(15~64歳)10万人あたりの数字を発表しています(2009年)。それによると、ワースト1は愛知県799.59人。続いて山形県788.84人、長野県761.97人。リーマン・ショックの翌年だったからか、自動車産業関連事業の多い愛知県、長野県などが直撃を受けました。

「地方で起業!」を夢で終わらせるのか

 最後に総務省の「就業構造基本調査」(2012年)に戻って、人口100人あたりの起業家数の順位を見てみましょう。

 全国の起業家の総数は145万500人で人口100人あたり1.14人。国民のおよそ1パーセントが起業家ということになりますが、「人口」には子どもやお年寄りも含まれていることをお忘れなく。

 起業家がもっとも多いのは東京都で、人口100人あたり1.9人。2位は神奈川県1.3人で、以下、埼玉県1.29人、群馬県1.25人、山梨県1.22人の順です。一方、もっとも少ないのは岩手県と0.67人で、秋田県0.67人(総数は岩手より多い)、沖縄県0.72人、高知県0.73人、滋賀県0.76人と続いています。

 なお起業家と自営業のボーダーラインは難しく、混同しがちです。政府などの統計上での「自営業」とは、「個人経営の商店主、工場主、開業医、弁護士、著述家、家政婦など自分で事業を営んでいる者」。従業員の有無や会社組織にしているかどうかは問いません。また「起業家」とは、「過去1年間に職を変えたり新しく職に就いた者のうち、現在は自営業主(内職者を除く)となっている者」とされています。この点にも、ご注意を。

 環境に恵まれた地方で、自分の腕やIT力をふるって起業! それを成功させている人の例は、残念ながら現状では例外なのでしょう。でも、だからこそチャレンジする意味もあるのかもしれません。

<参考サイト>
・都道府県別統計とランキングで見る県民性
http://todo-ran.com/
・総務省のホームページ(「平成24年就業構造基本調査」より)
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視

第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?

「第二次トランプ政権は、第一次政権とは全く別の政権である」――そう見たほうが良いのだと、柿埜氏は語る。ついつい「第1次は経済重視の政権だった」と考えてしまいがちだが、実は第2次政権では「経済」の優先順位は低いのだと...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/10
柿埜真吾
経済学者
2

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本

デモクラシーの基盤とは何か(2)明治日本の惑溺と多元性

アメリカは民主主義の土壌が育まれていたが、日本はどうだったのだろうか。幕末の藩士たちはアメリカの建国の父たちに憧憬を抱いていた。そして、幕末から明治初期には雨後の筍のように、様々な政治結社も登場した。明治日本は...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/16
3

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?

編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税

会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。

第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
テンミニッツTV編集部
教養動画メディア
4

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

今や化学兵器の主流…「バイナリー」兵器とは?

医療から考える国家安全保障上の脅威(3)NBC兵器をめぐる最新情勢

2006年ロシアのKGB元職員暗殺には「ポロニウム210」というNBC兵器が用いられた。これは、検知しやすいγ線がほとんど出ない放射線核種で、監視の目を容易にすり抜ける。また、2017年金正男氏殺害に使われた「VX」は、2種の薬剤を...
収録日:2024/09/20
追加日:2025/05/15
山口芳裕
杏林大学医学部教授
5

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

生と死が明確に分かれていた…弥生人が生きていた世界とは

弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(9)弥生人の「生の世界」

弥生時代の衣食住には、いったいどんな文化があったのだろうか。土器やスタンプ痕の分析から浮かび上がる弥生人が生きていた世界、その生活をひもとくと、農耕の発展の経路や死生観など当時のさまざまな文化の背景が見えてくる...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/05/14
藤尾慎一郎
国立歴史民俗博物館 名誉教授