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DATE/ 2017.02.16

アウト?セーフ?ついやりがちな「業務上横領」

 「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する」(刑法第253条)---会社の金やものを横領してしまう、いわゆる業務上横領罪です。全国のあちこちで起こった横領に関する事件がニュースとなっていますが、皆さんは大丈夫でしょうか?意外と身近なところに落とし穴があるかもしれません―。

ポイントやマイルを自分のものにしてしまったら?

 いきなり物騒なフレーズを使って脅してしまい、すみません。「横領なんてするわけないじゃないか!」とお怒りの方もいらっしゃるでしょう。では出張で貯まるマイルや、備品を購入したときのポイント、自分のものにしてしまったことはありませんか?これらが即、業務上横領となってしまうわけでは決してありませんが、グレーといえる範囲になるのです。

 実際のところ、こうした事例で横領の罪に問われた判例はないため、問題がないように見えます。ただ、従業員規定に出張時や備品購入時のルールが記載されてある場合はご注意を!

 たとえば、会社支給のクレジットカードで航空券を買わなければいけないのに、私用のカードで購入した場合、何らかの処罰の対象となったり、経費として処理してもらえない可能性は十分にあります。いま一度、従業員規定をチェックしてみるのも良いかもしれません。特に規定がない場合、今のところ追及される可能性は低いといって良いでしょう。

QUOカード付きビジネスホテルは大丈夫?

 出張時の宿泊費は実費支給という会社は少なくないと思いますが、そんな会社員のために(?)QUOカード付き宿泊プランを用意しているビジネスホテルが存在します。カラクリを説明しましょう。たとえば、あるホテルには一泊9,000円のプランと、1,000円のQUOカード付きで10,000円というプランがあります。QUOカードの有無を除けばまったく差はありません。それならば、宿泊客は10,000円のプランを利用し、1,000円のQUOカードを自分の懐に入れてしまえばトク。ホテルにとっても損をせず集客効果を見込めるわけです。

 でも会社は損をしてしまいますよね。これは許されるのでしょうか?厳密にいえば、横領となるでしょう。領収書を見ただけではバレないかもしれませんが、経理担当者がホテルのプランを調べたり、問い合わせをすればすぐにバレてしまいます。1,000円程度の“横領”で刑事罰を問われる可能性は低いと思いますが、社内の懲戒処分の対象となることはあり得ます。

 会社から備品として支給されている文具等を私用で使ってしまうのも、原則論に則れば、アウトです。そこまで細かいことを言ってくる会社は多くないでしょうが、何事も後ろ指をさされないように過ごすのが肝心。ちょっとした出来心で立場や仕事を失ってしまうかもしれないのですから。

<参考サイト>
・e-Govウェブサイト(刑法)より
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/M40/M40HO045.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授