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DATE/ 2017.03.15

あのTVや新聞はどっち?政治とメディアの右と左

 ここ数年、「ヘイトスピーチ」(憎悪扇動)や「レイシズム」(人種差別)が問題として取り上げられることが多くなりましたが、「右傾化」「保守化」する日本社会という報道を耳にしたことはないでしょうか。

 「政治は右寄り、経済は左寄り」など、世界を評する会話のキーワードとしての「左・右」。「左派、右派」、「左翼と右翼」など、人物だけでなく、新聞やTVなどメディアを評するときにも、そうした対立した二分法で語られることが少なくありません。

TVや新聞を分けるとすると?

 Yahoo!知恵袋には、「TVと新聞の対応関係と右左を教えてください。例えば読売新聞→日本テレビ→やや右、朝日新聞→朝日テレビ→やや左ってありますよね?」という質問があり、以下の回答がベストアンサーに選ばれていました。

左 朝日新聞/テレビ朝日
↑ 毎日新聞/TBS
| 日本経済新聞/テレビ東京
↓ 読売新聞/日本テレビ
右 産経新聞/フジテレビ

 こうした分け方は時代や立場、視点によっても変化しますが、社会的に「左」といえば、社会主義的な傾向で語られ、「右」といえば愛国的なイメージを持たれるように思います。社会を二分する「左・右」については歴史的な事実もふまえて理解しておいたほうがよいでしょう。

左翼と右翼の起源はフランス革命後の国民議会での座席位置にあり

 伝統的に、「左」には、進歩主義、社会主義共産主義、アナキズム、そして、「右」には保守主義、国家主義、ファシズムなどのイメージが定着し、絶対的ともいわれる意味づけでコミュニケーションされているというのが現状です。

 左翼と右翼、その歴史的な起源は、フランス革命後の国民議会での座席位置にありました。革命後の国としての指針を議論する上で、革新または急進主義が「左翼」、保守が「右翼」と呼ばれた事が起源とされています。

 フランス革命の初期国民議会において、右翼は完全な王党派であり、左翼は王権の制限を主張しました。この革命的意義を政治的・哲学的に検証したヘーゲル、マルクスの研究成果が、フランス革命における左翼主張の発展的形態として、共産主義社会主義国家を生み出したことが、一般的な意味づけを決定的にしました。

 日本は天皇制を維持する立憲君主国家であることから、天皇制を軸に、右翼と左翼のコントラストが明確になりやすい傾向にあります。しかし、東西冷戦後、20世紀後半にソ連など西欧の共産主義国家群が崩壊し、より複雑化し混迷を極める今日の世界情勢のなかで、伝統的な意味づけでの「左翼と右翼」という二分法は意味をなさなくなってきているというのが現状です。

60年代の安保闘争が影響するメディアの傾向

 そして、新聞、テレビといったメディアについては、もともとニュートラルであることが求められますが、メディアとしての出自、経営者から現場の記者にいたるまで、それぞれのスタンスからの影響が少なからずあるといってよいでしょう。例えば、60年代の安保闘争に参加していた学生が、現行メディアの経営やベテラン記者になっている事情から、メディアの左傾向は想像に難くありません。

 政治における権力の集中と独占も困りますが、そのメディアによる批判から解体されたまま再構築できない状況はさらに困ります。自民党と民主党だけではなく、日本にはかつて保守と革新の闘争が社会を右往左往させ、疲弊させてきた歴史があります。

 目指すべきは経世済民で、メディアにしてもその役割は明確です。対立を鮮明化させる「右・左」のキーワード的な扱いを改め、よりよい社会を実現するため、それぞれの考え方の違いから協調する方向にシフトさせるタイミングに来ているのではないでしょうか。

<参考サイト>
・Yahoo!知恵袋
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10110898910
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