社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
知られざる「トモダチ作戦」…健康被害の実態
知られざる「トモダチ作戦」の健康被害
東日本大震災以降、脱原発を実現するべく活動を行っている元内閣総理大臣の小泉純一郎氏。活動を進めていく中で、「トモダチ作戦」に参加した兵士たちの健康被害について知ります。東日本大震災当時、太平洋上を航行していた原子力空母ロナルド・レーガンは、日本政府の要精に応じて、被災地の支援に駆けつけます。これがトモダチ作戦です。米軍兵士たちは、沖合に停泊した空母からヘリコプターで現地に向かい、さまざまな活動を行いました。その後、彼らは深刻な健康被害に悩むことになります。
なぜそんなことになってしまったのでしょうか。彼らはもしかすると、福島第一原発事故の影響で、外側だけでなく内側からも被ばくしていたのではないかと、小泉氏は考えます。屋外での活動を終えた兵士たちからは放射能が検出されます。しかも防護服を脱いでもまだ放射能(測定器)が鳴っていたそうです。後に聞いた話ですが、兵士たちが使うシャワーは、沖合の海水を真水にして使用したものでした。そこでは塩分は除去できるのですが、放射性物質は除去できないとのこと。またその真水は、空母上での食事にも使われていました。つまり、兵士たちは、外部だけでなく内部からも被ばくしてしまった可能性があるということです。
小泉氏は、カリフォルニアで10人の兵士たちに話を聞きました。以前であれば健康そのものだった彼らの体は、トモダチ作戦によって一変してしまいました。ある者は、鼻血や下血が止まらなくなり、除隊せざるを得なくなりました。作戦当時、妊娠をしており、その後障害を持った子どもを産み、やがて亡くしてしまった女性兵士もいます。日本国民は、トモダチ作戦のこうした現実を、知らないままで過ごしてきたのです。
政府もマスメディアも静観?
トモダチ作戦の健康被害は、どうして問題にならなかったのでしょうか。まずマスメディアは、この問題をほとんど報道しませんでした。アメリカ政府も、事態を把握していましたが、国防総省から出された報告書では、健康被害は放射能被ばくによるものとは断定できないとされています。そこで、東京電力との裁判が始まるわけですが、裁判をアメリカでやるのか日本でやるのかすら、最終的な結論が出るのはしばらく先のようです。日本政府は、係争中であるということで、この件に関して静観している様子です。
寄付金は1億円を超えた!広がる支援の輪
そこで小泉氏が始めたのが、「トモダチ支援基金」です。2016年7月から2017年3月までの9カ月間で1億円を集め、それをトモダチ作戦の健康被害を受けた兵士たちに、見舞金として届けるという壮大なプロジェクトです。無謀な挑戦、と思われるかもしれません。しかし小泉氏の熱意に共感した支援の輪は、広がっていきます。その一人である安藤忠雄氏は、大阪で小泉氏を招いて講演会を開き、そこで集めた会費を全額寄付するという方法を提案してくれました。そして、なんと一度に1000万円以上の寄付が集ったそうです。2017年3月時点で寄付は1億円を超え、さらに集まっていると聞きます。こうして、小泉氏が始めた米軍兵士への支援の輪は、確実に広がっているのです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
国際社会における中国の動きに注目が集まっている。新冷戦ともいわれる米中摩擦が激化する中、2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎えた。毛沢東以来、初めて「思想」という言葉を党規約に盛り込んだ習近平。彼が唱える「中...
収録日:2021/07/07
追加日:2021/09/07
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
「熟睡とは健康な睡眠」だと西野氏はいうが、健康な睡眠のためには具体的にどうすればいいのか。睡眠とは壊れやすいもので、睡眠に影響を与える環境要因、内面的要因、身体的要因など、さまざまな要因を取り除いていくことが大...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/11/23
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
実際に史料をどうやって読み解いていけばいいのか。今回から具体的な史料の読み解き方をケース・スタディしていく。最初は『太閤記』に関する参考資料を用いて、太閤・豊臣秀吉と関白・秀次の関係を考える。そもそも『太閤記』...
収録日:2025/04/26
追加日:2025/11/22
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
岡本浩氏、長谷川敏彦氏の話を受けて、今回から鎌田氏による講義となる。まず指摘するのは、空海が説く『弁顕密二教論』の考え方である。この著書で空海は、仏教の顕教は「中論」「唯識論」「空観」など世界を分割して見ていく...
収録日:2025/03/03
追加日:2025/11/20
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
労働経済を学んでいた島田氏は、ウィスコンシン大学留学中、労働者の教化運動に参加している。アメリカ産業史を学習する中、労働運動の実態を触れ、ウォルター・ルーサーとヘンリー・フォードの熾烈な闘いを知ったからだ。労働...
収録日:2025/09/02
追加日:2025/11/18


