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コロナの影響で世界的に財政の累積負債は急増、最悪は日本

コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題(2)感染防止と経済政策

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
感染拡大を抑えるにはワクチンの開発が不可欠だが、それには長い時間がかかる。その間に経済に深刻なダメージが出ないように、各国はさまざまな金融政策を採っている。アメリカの連邦準備制度やEUは積極的な財政支援策に乗り出しているが、各国の累積債務の増加は深刻な水準にあり、特に日本の債務は世界最悪の水準になることが予想されている。(全12話中第2話)
時間:06:36
収録日:2020/07/16
追加日:2020/08/25
キーワード:
≪全文≫

●感染拡大防止と経済の沈滞というトレードオフ


 有効なワクチンの開発は、最も重要な対策の一つですが、ワクチン開発には多大な時間がかかります。ワクチン開発が進み普及するまでは、地球社会はソーシャルディスタンスを保って生活しなければならず、あるいはより強力なロックダウンという手段を通じて感染を抑制しなければなりません。そのためには、外出自粛やあるいは自己隔離が必要となります。各国で外出規制は行われていますが、さらに休業の要請や指令によって、最終的には都市封鎖まで行うことも必要になるかもしれません。こうした対策を取ると、経済活動は縮小するだけではなく停止するので、所得が減り売上が減りGDPが縮小し、非常に大きなコストが発生します。

 こうした強力な対策が必要となるのは、ようするに医療崩壊を防ぐためです。医療システムには一定のキャパシティがあるので、そのキャパシティを超えて感染者が発生すると、医療の処理能力を上回り、医療崩壊につながります。こうなると、イタリアのように、多くの死者が出てしまいます。こうした事態を引き起こさないようにするためには、感染爆発を起こさないようにコントロールすることが非常に重要となります。つまり、感染カーブのピークを引き伸ばすのです。

 ただ、ピークを引き伸ばしたとしても、積分すると同じ面積になるので、経済には同じだけマイナスの影響を持つことになります。この感染抑制に乗り出すと不況が深刻化するというトレードオフは、大きな問題です。どのようにして不況の深刻化を軽減するかが重要で、そのために金融財政政策を考えなければならないのです。

●新型コロナによる混乱を避けるべき積極的な金融政策へ


 2020年3月にヨーロッパやアメリカで感染が拡大した際に、投資家たちは強い恐怖を感じて、一斉にリスク資産から安全資産に資産を移そうとしたために、パニック状態となりました。その結果、金融システムが非常に不安定になることが予想されたのですが、世界各国の中央銀行が見事に協力して、金融機関は信用供与など乗り出しました。また、多くの国で資金流出によって通貨価値が下落したのですが、これに対応して連邦準備制度(FRB)はドルの流動性を高める政策に積極的に取り組みました。

 金融機関は、営業停止によって収入が激減した人々のために、流動性を増やすことに関して大きな役割を果たしま...
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