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新型コロナの感染拡大前に起こっていたDX革命と米中対立

コロナパンデミックと闘う世界と今後の課題(10)技術革新と米中対立

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
20世紀後半のアメリカで始まったデジタルトランスフォーメーション(DX)は、現代社会の急速な転換に一役買っている。中国でも鄧小平以降の改革開放政策が実を結び、習近平体勢は世界の大国としての振る舞いを強化しつつある。こうした流れはアメリカと中国のハイテク分野での覇権対立を尖鋭化させた。コロナウイルス拡大以前には、両国の対立はかなり危険な水域に入ってきていた。(全12話中第10話)
時間:11:27
収録日:2020/07/16
追加日:2020/09/02
≪全文≫

●デジタルトランスフォーメーションとアメリカの発展


 もう1つの大きな流れは、デジタルトランスフォーメーション(DX)です。これは人類の文明史的大技術革新です。この流れは、シリコンバレーで発展しました。シリコンバレーはもともと半導体の生産基地です。1980年代の前半には、日本の半導体が世界を席巻していたので、シリコンバレーは苦境に立たされていました。あの品質と価格では日本に勝てないといわれていたのです。当時のアメリカの産業界は、熱心に日本を研究して、日本型経営の原理から解明することに取り組みました。

 私はシリコンバレーを訪ねて、ダニエル沖本先生に会ったことがあります。彼は偉大な人です。戦争で苦労して強制収容所に押し込められたのですが、その後スタンフォード大学の教授となって、アメリカのリーダーになりました。彼に詳しい話を聞きました。

 1980年代のスタンフォード大学は、アメリカのトップ10の中にも入っていなかったのですが、アメリカで一番の大学になるという目標を掲げました。フレデリック・ターマンという工学部長がいて、ハーバード大学に挑戦するといい出しました。そのために、領域を超えた研究を行う、インターディシプリナリースタディーズを追求しました。工学から、生物学やビジネススクールまで、全てを巻き込んだプロジェクトを立ち上げました。Center for IS(integrated systems)、semi-conductors、new material researchなどいろいろです。そして集積回路を発明したウィリアム・ショックレー教授などの世界中の傑出した研究者次々と招き、大学主導のエコシステムからベンチャー群を創出することを目指しました。フェアチャイルドやIntelの創業者がそうですが、、ヒューレットパッカードの創業者もスタンフォード出身です。10年間で4000社のベンチャーをつくったといわれています。

 こうした動きときびすを接して、大きな方法論革命が世界で起きました。アメリカを中心としたアルゴリズム革命です。具体的にいうと、コンピュータの計算速度が、何百倍、何千倍という単位で加速度的に高まりました。それによって、ビッグデータの解析が行えるようになりました。当初の科学研究では、社会科学でも自然科学でも、サンプリングして、理論仮説を作業仮説につくり直してテストを行っていました。仮説検定をクリアしたものが、ポリシーインプリケーションにな...
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