小澤開作と満洲事変・日中戦争
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「こちらが信じれば、向こうも信じてくれる」を信念として
小澤開作と満洲事変・日中戦争(5)この戦争には勝てない
小澤俊夫(小澤昔ばなし研究所所長/筑波大学名誉教授)
果敢に中国の民衆への働きかけを行っていく小澤開作には、敵から懸賞金すらかかっていた。しかし、小澤開作は腹が据わっていて、恐れを知らぬ人だった。「運転手を夜遅く働かせたらかわいそう」と呑んだ帰りは1人で人力車で帰り、大使館からもらったピストルも携行することはなかった。何より、「こちらが信じれば、向こうも信じてくれるんだ」という信念を胸に、相手にまっすぐにぶつかっていったのである。だが、その小澤開作は、太平洋戦争が始まる前の昭和15年の段階で「この戦争には勝てない」と言い出した。(全10話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:9分17秒
収録日:2019年10月9日
追加日:2020年10月12日
≪全文≫

●腹が据わって恐れを知らず、運が強い


小澤 でもね、親父は、何かあの人は恐れを知らぬ人というか、何というか、腹が据わってるというか、首に懸賞金がかかってるんですよ、いつも。中国側から。

―― 敵からですね。それはそうですね。

小澤 小澤開作を殺れと。

―― (農村に入り込んでいく)浸透工作というか、そういう活動をやっているわけですからね。

小澤 だから、お袋が心配して、夜、宴会などで飲んだ帰りには、必ず自分の家に車があるんだから、運転手さんを呼んで、その車で帰ってきてくださいとお袋は言うんだけど、「夜遅く運転手なんか働かしちゃかわいそうだ」と言って、洋車(ヤンチョ)で帰ってくるの、人力車で。お袋はもう、いつも、ひやひやしてましたよ。夜遅く帰ってくるときは。いつも1人で平気で帰ってきちゃうんだもん。僕もひやひやしたな、だけど、それは。いつ殺られるかと思った。

―― 本当に肝が据わっていたということですね。

小澤 肝が据わってましたねえ。

―― けっこう開作さんも、あちこち行かれる機会が多くて。(電車の中で)たまたま出会った人と意気投合してお酒を飲んでいたら、(匪賊がその鉄道を)爆破したっていう話もありますね。

小澤 そうそう。その話は、親父から直接聞いたんですよ。恐らく奉天で乗ったんだと思うのね。列車に乗って北京まで、これはもう十何時間かかるわけですけれども。その乗った始発の駅で、一升瓶を持ってご機嫌で乗り込んだ。1等車は、一番先頭にあるんだそうですよ。それで、1等車まで行こうと思って歩いていたら、途中の2等車で知ってる人に会った。それで2等車に乗って、酒を持っていたから2人で飲み出して、1等車に行くのが面倒くさくなって、そのまま2等車で飲んだり、寝たりしていた。

 そうしたら、夜中に地雷に引っかかって、バーンと列車がひっくり返ったんですね。それでそのとき、すぐ敵から攻撃があると思ってね、「伏せろ!」と親父が叫んだんですって。みんな、椅子の下に隠れた。そしたら、もうバンバン、バンバン、匪賊(ひぞく)が撃ってきた。それで、30~40分経って、やっと日本の援軍が来て、救われたというんですよ。そのとき1等車は破壊されて、全員死んだそうです。だから、親父がもしそのとき知ってる人に会わないで、1等車に乗っていたら、死んでいたんですよ、確実に。

―― また、そういう時代で...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
近現代史に学ぶ、日本の成功・失敗の本質(1)「無任所大臣」が生まれた経緯
現代の「担当大臣」の是非は戦前の「無任所大臣」でわかる
片山杜秀
「武士の誕生」の真実(1)10世紀の東アジア情勢と「王朝国家」
「王朝国家」と「武士」が誕生した理由は大唐帝国の解体
関幸彦
明治維新から学ぶもの~改革への道(1)五つの歴史観を踏まえて
明治維新…官軍史観、占領軍史観、司馬史観、過誤論の超克
島田晴雄
天下人・織田信長の実像に迫る(1)戦国時代の日本のすがた
近年の研究で変わってきた織田信長の実像
柴裕之

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(4)トランプ大統領VS.中国
トランプ政権は実は与しやすい?…ディールで「時間稼ぎ」
垂秀夫