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独裁・共和政・民主政――繰り返されてきた世界の歴史

独裁の世界史~未来への提言編(1)国家の三つの要素

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
概要・テキスト
古代ギリシアに始まった「独裁の世界史」シリーズは、独裁・共和政・民主政の違いを主要なテーマとして、その後、ローマ、ヴェネツィア、フランス革命と解説を進めてきた。ここで、いったん現代に立ち返り、これまでの講義を振り返りつつ「ポストコロナ」の時代にふさわしい歴史の見方、活用の仕方に対するヒントを提示する。(全10話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14:19
収録日:2020/08/07
追加日:2020/10/30
カテゴリー:
≪全文≫

●独裁、共和政、民主政の違いはギリシア史から


―― 皆様、こんにちは。本日は本村凌二先生に「独裁の世界史」シリーズのまとめの講義をお話しいただこうと思っております。本村先生、本日はどうぞよろしくお願いいたします。

本村 よろしくお願いします。

―― 「独裁の世界史」シリーズは古代ギリシアから始まり、ローマ、ヴェネツィア、そしてフランス革命、という順で講義が進んでまいりました(後日、ビスマルク編、ロシア革命編、ムッソリーニ編、ヒトラー編を配信いたします)。ここで改めて、今回の「独裁の世界史」という企画の本筋といいますか、それがどういう意味を持つかということでお話をうかがえればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、先生には今回のシリーズを通して、独裁と共和政と民主政の三つを論じていただきました。改めて独裁、共和政、民主政の違いをこの場で分かりやすくご説明いただけますでしょうか。

本村 独裁というのは、要するに単独の為政者による支配ということで、その人の意志や人格のようなものが非常に大きく出てくるところだと思います。

 歴史を振り返ると、そういうことはどんな時代にもあり、古い時代になればなるほど有力な人間がのし上がってきて、単独の支配者になったケースが多いのです。それでうまくいっている場合もありますが、得てして独善的なあるいは暴君や悪帝と呼ばれる人たちが出てきて、うまくいかなくなります。

 それが特に典型的というか、今のわれわれから見て資料がきちんと残っているので分かりやすいという意味では、ギリシア史が一番基本だと思います。


●僭主の始まり、ペイシストラトスと息子たち


本村 ギリシア史を遡っていくと、いろいろなポリスが成立するのが紀元前8世紀ぐらいですが、最初の200年間ほどは王侯貴族が互いに競い合い、合議しながら政治を行っていました。ただ、そのやり方がうまくいっていたというより、しょっちゅうゴタゴタが起こる状態でした。それをうまく収拾しきれない形で、独裁者つまり「僭主(ティラノス)」と呼ばれる人が出てきます。現在では傲慢な人を「タイラント(tyrant)」とよくいいますが、それは「ティラノス(tyrannos)」というギリシア語から来ている言葉です。

 さて、しかし、僭主になったからといって、全ての独裁者が暴君であったり悪い王であったりす...
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