●妄想力の課題はついつい現実性を考えてしまうこと
ではこれから、「妄想・知覚・組替・表現」の4つのステップについてそれぞれ紹介していきたいと思います。1個目が、自分の内から湧き出る動機にアクセスする妄想力です。
妄想する力の課題は、私たちがついつい現実性を考えてしまうというところです。
ここから思考をどう飛ばしていけるのかということなのですが、キーワードは妄想だと思います。妄想とは、自らがまず「やりたい」と心から思える原動力で、しかも今の段階では現実性がないものです。
「それって単なる妄想なのだけどね…」みたいな言葉をよく日常で語ると思うのですが、私たちは日常生活の中であまり妄想について話さないですよね。特に、ビジネスの現場でそれを話すのは、比較的タブー視されていると思います。
日本人はある種謙虚な生き物なので、ちゃんとできるという確信がないとなかなか話さないという特徴があります。私が海外に留学をしていた時、いろいろな世界のビジョナリーな人と会いました。彼らに共通した特徴は、将来こんなことできたら面白いよねという、いってみれば妄想レベルの話を日常会話でしているところでした。
以前にU理論を提唱したMIT(マサチューセッツ工科大学)教授のオットー・シャーマン先生と話をした時に、以下のような話がありました。
日本人は何重にも防御壁を張っているので、絶対に失敗しないことを言おうとする。そうすると、日本人がこれをやりたいと言ってきたものは、アメリカ人だと具体的にできる企画くらいに落とし込んでいるものが多い。そう言っていたのですが、その時、逆に私たちはもっと大きな構想を日常的に語ってもいいのだなと思いました。
●VISION-DrivenとISSUE-Drivenの違い
時あたかも、こういう考え方が最近出てきています。VISION-DrivenとISSUE-Drivenです。これはそれぞれ、ある世の中の課題、つまりマイナスをゼロにする思考法(ISSUE-Driven)と、こういうような社会であったらいいなから逆算して、それをどう実現するといいか考える、ゼロとプラスのギャップを埋めるという思考法(VISION-Driven)です。
スライドの下側(ISSUE-Driven)がいわゆるユーザーニーズ、つまり社会におけるニーズで、上側(VISION-Driven)がウォンツで、こういうことをしたらいい、ということになります。
これらは、それぞれ典型的な問いがあります。まず(VISION-Driven:ウォンツですが)What if、例えばもしも地球以外に火星へ人類が移住できるとしたら、というものです。これは、「もしも〇〇」からスタートする、VISION-Drivenな妄想を考えるためのフォーマットになります。
それに対して(ISSUE-Driven:ニーズですが)、例えばどうやって宇宙デブリを除去するか。これは、世の中に現れている課題(「How might be」といいますけれども)をどうやって解決するかというフォーマットで、課題を表現していくこともできます。
ここで大事なことですが、いわゆるビジネスの現場で事業にするためには、基本的にこのHow might beで、どうやって〇〇という問題を解決できるか、それを通じてどうお金を生んでいけるかというものが共通の言語になります。
今、テクノロジーの進化がすごく速い時代です。WIREDの創業者でもあるケビン・ケリー(Kevin Kelly)氏は、「技術の進化のスピードが人間の想像力に追いついた時代」だといいますけれども、技術の進化が速いので、自分が想像していた未来は思ったより速く世の中で実現してしまう環境になってきている、というのが今の時代です。むしろ、課題を見ているのに、課題の先に大きなビジョンがないと、だんだんと何のためにやっているのか分からなくなってきますし、いつの間にか課題解決しまったということも、起こりやすくなっているのが今の特徴です。
そうすると、自分自身の想像力をさらに大きく鍛えていくための方法論が必要になります。
●ある一点を超えると一気に成果が出てくる「Exponential思考」
ここでキーワードになるのが「Exponential(指数関数)」という考え方です。右肩上がりに上がっていく曲線を「収穫逓増」といいます。
人間の脳は、基本的には「昨日今日がこうだったから、明日はこうと考える」という線形思考になっています。それに対して、「Exponential思考」は指数関...