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すべての評価が「量」になれば人間はみんな自信を失う

自信について(6)精神論は人間にとって一番大切なもの

対談 | 執行草舟田村潤
概要・テキスト
一昔前の英米人は、「仕事」と「信仰の生活」とは別ものだった。だからこそ、ビジネスは「金儲け」だと割り切っていた。アメリカの寄附文化も、単に仕事を引退した人が、キリスト教の世界に戻って、慈善を行っているだけである。日本の場合は、仕事そのものが「道」を目指すものであり、「世のため人のため」を考えていた。だから引退後に慈善活動をする必要がなかった。だが現代は、欧米も日本もそうした精神を失い、「質」ではなく「量」を求めるようになった。評価が量になった結果、誰もが自信を持てない時代になってしまった。(全12話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12:09
収録日:2022/01/25
追加日:2022/04/29
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≪全文≫

●アメリカ人の成功者が「寄付」をするのは別に偉くない


執行 ただ一つ言えるのは、西田幾多郎の本と田邊元の本をこれから一念発起して誰かがこの番組を見て、読んだとします。読んだら全員、あまりの自分の頭の悪さに打ちひしがれるでしょうね。それが真実です。私もそうですが、あまりの能力の差に。

 能力の差といっても、大学受験の能力といったものとは違います。西田幾多郎と田邊元の能力は、「苦悩し続ける能力」です。だから旧制高校や大学から始まって哲学の研究に入り、死ぬまで自分が考えた哲学課題に食らいついて、苦しみ続けるというか……。

田村 理想を追求するということなんでしょうね。

執行 そうです。それが「理想」なのです。だから「自信」とは反対なんです。

田村 企業においては「企業理念」を「理想」と置き替えて、そこに向かう集団を作ればいい。要するに、組織というのは「心の集合体」ですから、心を燃やせばいい。そのためには、やはり理想に向かわせないと燃えない。

 理想を追求するためには、組織ですから「理想が実現された状態」を具体的に定義して、あとはもう戦略を自分たちで考えて実行していく。これを組織の仕組みに落としていかないと、理想は追求できません。「そういう気持ちでやろう」という精神論で終わってしまう。

 そうではなく、「自分たちの使命は理念を実現することなんだ」と変えなければいけない。それは、やってみるとそれほど難しくないのですが、やはり最初の一歩を踏み出せるかどうかです。

 やったら集団がそうなると、行動によって人の意識は変わってきます。善なるものがいっそう出てきて、業績が上がっていく。企業人は、自分のためではなく、誰かのためにやって業績が上がるのが一番嬉しいわけですから。

執行 人間は全部そうです。

田村 特に日本人はそうです。日本人の強みはそこなのに、それを自ら否定して、英米のシステムやルールにしてしまった。

執行 先ほど少し触れましたが、英米は生活がまったく別なんです。昔は神がいて、ゴッドのいる信仰の生活があったのです。そしてビジネスという社会が別途にあった。ビジネスは「金儲け」と割り切っているのです。

 だから「アメリカ人はよく寄付をして偉い」と言いますが、偉くも何ともありません。金儲けの世界に現役時代はいて、引退したらキリスト教の世界に戻る。それ...
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