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名将たちほど敵を怖れ、窓際族は自信に満ちている

自信について(12)自信を持ったら「ただのバカ」

対談 | 執行草舟田村潤
情報・テキスト
日本人は「自信を持たないこと」が素晴らしい活動のできる根源だった。それは、皇室や家制度があって、尊いものが常に自分の上にあったからこそのものだった。また、理想を掲げていれば負けても「誇り」を持てるが、「自信」は勝ち負けである。その自信が、戦いに負ける原因にさえなる。日露戦争の名将たちは、みな敵を怖れていた。しかし、日露戦争に勝って自信を持ってしまったため、大東亜戦争で日本は狂信的になり、負けた。過去の歴史に「自信」を持ったら「ただのバカ」である。考えてみれば、窓際族はみな、自信がすごい。(全12話中第12話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15:57
収録日:2022/01/25
追加日:2022/06/10
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●日本人は「尊いもの」があるからこそ自信がなかった


執行 でも人生というのは、やっぱり「道」の追求です。特に日本は。だから「自信」は日本人にはダメなものなのです、本当は。

田村 そうですね。

執行 だから日本人は、永遠に自信を持たないことが、素晴らしい活動のできる根源だった。昔の家制度もそうです。家制度は、長男を中心にしてヒエラルキーを決められています。

 多くの人が証言していますが、戦前まではどんなに優秀でも、最高学府を出ようが大学教授になろうがノーベル賞をとろうが、田舎に帰ったら関係ありません。田舎には必ず本家である長男の家があって、長男は大体、土地の学校を出て小学校の先生をしたりしている。どんなに偉い人でも、本家の長男には頭を下げなければならない。そういう文化なのです。

 それが、日本人の「力が出せる」という背景にある。いい意味で「量」や「自信」を目指さない。ある種、天皇制のスモール版です。日本は天皇制があったから、独裁者などおかしな人間は出なかった。どんな権力者でも、もっと尊い方が上にいるからです。これは重大なことなのです。

 日本は少なくとも天皇制だけは維持してきたので、今でもそういう文化が残っていて、独裁者のような人が出ないのです。大家族もそうです。

田村 そうですね。だから自分を「相対化」できるのでしょうね。「自分が絶対なのではない」と。そことの関係性だから。

執行 今流に言えば、みんな自信がないのです。

田村 「謙虚になれ」と言われたのは、そういうことなんでしょうね。「自信」と「謙虚さ」はちょっと正反対な感じがしますからね。

―― 今のお話でいうと、日本人は常に自信がないというのが……。

執行 ないほうが国家として……。

田村 健全なんです。

執行 健全だったということです。

―― 天皇のあり方もそうですし、例えば「志を立てる」とか「道を究める」というのもそうですけれども、常に「高い理想」を持っているからこそ、自信もないし……。

執行 そういうことです。家もそうです。今の「マイホーム」ではなく「大家族」だから、どんなに偉くなっても、本家には頭を下げなければならない。本家の長男には、みんなが挨拶にも行かなければならない。現にそうだったと、みんな言っています。例えばGAFAになろうがノーベル賞とろうが、あくまでそうだった。そういうものが、私は日本人の本体だと思うのです。これは縄文以来のものですから。

田村 だから、「自分は三男だ」といった後ろめたさといっていいのかわかりませんが、なにか、そのようなものが大事ですね。

執行 「後ろめたい」というのとはちょっと違いますね。

田村 後ろめたいとは違いますよね、なんといったらいいか。

執行 「どこまでやっても、一番偉いものではない」ということでしょう。

田村 そういうことですよね。

執行 これが重要だということです。でも、戦後教育は絶対逆だと思います。「偉くなれ、偉くなれ」という教育です。

田村 そうですね。少なくとも「世の中に尽くせ」という教育を受けた記憶はありません。私は戦後教育ですから、いかに権利を主張するか。「権利を主張するのが民主主義国家」と教わった記憶があります。

執行 教わったどころでなく、今がそうなんです。

田村 「権利」「権利」を主張する。でも「義務」も社会のために必要です。だから不幸ですよね、今は。

執行 だから私が今日知ってほしいのは、その反面として、こういう無謀な、国民を一人一人をダメにしてしまう「自信を持て」みたいな教育が、ストレス解消としてあるのではないかということです。

 極端に言うとこれからは、どんな人間でも、生まれただけで自信がある社会ができます。生まれただけで尊い。だから、努力して尊くなる必要はなくなる。これが今の民主主義の行き着いた先です。もう近い。多分10年です。

田村 「生きていればいいんだ」と。

執行 国がそれを推進しているのだから。これから何か価値のあることに向かうのは、本当に大変で、つらい時代になります。向かっているだけで「問題児」ですから。私は「危険思想の持ち主」と言われていますから。

田村 褒め言葉じゃないですか(笑)。

執行 いやいや、けなし言葉です(笑)。では、なぜ言われるのか。それは理想を持っているからです。それが若い頃から一番大きい原因です。理想を何もなくすと、問題でなくなるのです。

―― 変な質問かもしれませんが、理想を持つことに「自信」はないのですか。

執行 ないです。

――「理想を俺は持っている」ということへの矜持と誇りは。

執行 それは「自信」ではない。

―― では、どういう感覚ですか。

執行 「誇り」です。「誇り」は自信ではない。例えば今大河ドラ...
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