自信について
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「質」も「量」も追求して成功した岩波書店・岩波茂雄
自信について(9)「質」と「量」のバランス
考察と随想
対談 | 執行草舟田村潤
「量の文明」が席捲するなかではあっても、「質の追求」は誰でも日常生活でできる。ただし、限界はある。質は、量が増えるとダメになるという相関関係があるからである。だが、大正から昭和初期にかけて、見事に「質」と「量」を両立させた人物がいた。岩波書店創業者の岩波茂雄である。岩波茂雄は、「ヨーロッパの最も高い知識を日本に植え込まなければ日本は発展しない」という思いで出版活動に邁進し、大量に売れる種類の本でなくても見事に売り抜く仕組みをつくりあげたのだ。それを可能にするのは、「なんとしても成し遂げる」という執念であろう。(全12話中第9話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分11秒
収録日:2022年1月25日
追加日:2022年5月20日
カテゴリー:
≪全文≫

●「質の追求」は誰でも日常生活でできるが……


―― 今のお話だと「人の幸せのためなのか」「自分の幸せのためなのか」が大きいところですね。

田村 そうです。今の経営学の教科書は「利益の追求」ですから、あの目的を変えてしまって「人間いかに幸せになるか」を追求する経営学の教科書を作ってもいいのではないでしょうか。

執行 ただ、私もそういうケースをたくさん見てきましたが、それも全部「量」に変えられてしまうのです。途中から。考えはいいんですが、たとえばボランティアです。人の手伝いをするのは尊いことです。ところがそれを「何時間やったのか」「どのくらいやったのか」という量の評価につながっていく。何でも変えられてしまうのです。

田村 西洋はそうですね。普遍化しないといけないから、分析して数値化する。そうしないと会話が成り立たないという前提がありますが、そうではないのだ、というお話ですよね。

執行 だから最初に言ったように西洋がどうして「量的文明」を築いたかというと、キリスト教があったからなんです。キリスト教は「無償の愛」です。そちらもすごかったのです、19世紀までの西洋人は。だから科学文明という「量の文明」が発展できた。

田村 それが今度、宗教がなくなったから、質がおかしくなった。

執行 アメリカンビジネスになったのです。今はもうアメリカも病んでいます。

田村 行き詰まっています。

執行 でもアメリカの(20世紀初頭の経済学者フレデリック・)テイラーが大企業の理論を作った頃は、ものすごいプロテスタンティズムでガチガチの国でした。われわれが見ても、とても嫌になるくらいです。だけど、そのキリスト教精神によって「量は量」「心の質は質」という生活をアメリカ人は送っていたのです。それこそ日本に来た(札幌農学校の初代教頭)クラーク博士など、有名な人たちはみんなそうです。

田村 英米の「精神文化」の上に「制度」ができているから、一貫していた。

執行 日本は、それ(制度)だけ取ってしまいましたから。

田村 日本も最初の頃は、武士道がありました。

執行 まだ、ありました。

田村 これが宗教と同じ役割を果たしましたが、日本もそちらがなくなってしまった。

執行 金儲けだけになってしまった。

田村 だから、もう行き詰っている。

執行 だから、それはもう「真の自信」を生み...