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伝統は「これを日に新たに救い出さなければ」ならぬもの

自信について(11)絶えず挑戦するのが「保守」

対談 | 執行草舟田村潤
概要・テキスト
たとえば売上げ目標を「前年比102」などにすると、実際には「100」にも到達しない。リスクを侵さず、去年と同じやり方でやろうとするから、時代の変化についていけない。伸びる組織は自分たちで工夫して、イノベーションを起こしている。それは「もっと役に立とう」という「理念」に向かうからこそ、イノベーションは起きる。小林秀雄は「伝統は、これを日に新たに救い出さなければ」ならないものだと語った。まさに不断の挑戦こそが「保守」の核心なのである。(全12話中第11話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:35
収録日:2022/01/25
追加日:2022/06/03
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≪全文≫

●「理念」に向かわないとイノベーションは起こるはずがない


―― 主題の「自信」に戻すと、「量」に行ってしまうとどんどん自信がなくなる方向に行くというお話でもあったと思います。それが「社会に役立つ、質のいいものができた」となると、一種の矜持や誇り、自己信頼の源になってくる。これは下手をすると「一本道を歩いていて、どちらに落ちるかわからない」という局面もあると思うのですが、これはどのように行けばいいか。

田村 やはり「量」に向かうと、うまくいかないんです。大体「前年比102」とか「103」で目標が来ます。そうすると必ず、「去年よりもう少し頑張れば、なんとかなる」と思うんです。そういうときはリスクを絶対に冒さないのです。これだと100にさえ行かない。去年やったことを同じように一生懸命やるけれども、時代が変わってくるから大体100に行かない。

 そうではなく、伸びるところは、自分たちで工夫して、いろんなイノベーションを起こしています。売り方の工夫とか、商品の工夫とか。これは「理念」に向かわないと、イノベーションは起こるはずがないのです。

執行 起きません。

田村 絶対起きない。「理念」に向かうと、商品というのは「役に立つ」ということですから、「もっと役に立とう」「もっと役に立とう」「もっと役に立とう」という方向に行くしかないんです。そうすれば売れるようになります。結果として。それで数字がついてくる。

 逆に、数字から入ると失敗する。数字から入ると、必ず目標達成できません。キリンが10年間、ずっと予定未達だったのは、数字から入ったからです。

執行 それどころか先ほど言った「だます」とか「嘘をつく」とか……。

田村 そっちに行くかもしれない。

執行 ほとんどが、そっちに行きます。私は自分がしないのでわかりませんが、ほとんどの人がなります。

田村 「その場しのぎ」とか、そういう感じですね。

執行 量の追求です。これは誰を見ていてもそうです。人間は弱いんです。

田村 量を追求すると、量では獲得できないんです。そうではなく質や理念といった、もっと上の概念です。量より上の概念を追求すると、量がどんどん増えてくる。

執行 だから絶えず改革なのです。絶えず改革することが保守なんです。本当の保守。だから「会社を守る」とか「身を守る」というのは、実は革命なんです。真の保守とは...
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