●「いいところ」と「悪いところ」の分担は?
執行 われわれは今、ホモ・サピエンスの頂点の文明として、いいとか悪いは別にして、自由、平等、民主主義、科学を掲げています。これを現行人類が達成できるかできないかというと、結論から言えば、まず絶対できません。
―― なるほど。絶対できないと。
執行 達成しようと思ったのが、昔の大宗教家です。
―― そうですか。大宗教家たち。
執行 自由、平等、それから愛情、科学文明、正しく物(宇宙)を見る目、さらには宇宙の中の一環としてのわれわれの位置を見る目、これらをキリスト教も仏教も全部説いています。宗教を研究すればわかります。そして警告したのが大宗教家です。
ところが、大宗教家が言ったことをわれわれは聞かず、物質文明に走って、ここに来ているのです。よく考えると、平等や民主主義、科学的真実を遂行できるのは、今やAIとロボットになっています。
AIとロボットは科学を遂行できるとわかっていなければダメです。そして、科学を遂行できるということは、われわれホモ・サピエンスが理想としてきた平等も実現できるし、民主的な考え方も実現できるということです。発展していけば、ですが。
―― なるほど。
執行 われわれはこれらを物質主義で、「自分たちの都合」でしか使えませんでした。だから、われわれが頂点の夢として民主主義を描いたなら、この夢を叶えるのがAIなのです。
―― 夢を叶える強力なサポート手段が出てきたということですね。
執行 そうです。いいほうの、ね。
―― いいほうの、ですね。
執行 では、われわれ人類とAIがどのように共存していくかですが、結論から言うとAIとロボットが、いいほうを全部やります。
―― なるほど、いいほうを全部。
執行 知能とか民主主義、平等のいいところ、優しいところ、愛情のいいところ。そういうものを全部AIがやることになる社会ができるということです。できなければ、人類は生き残れません。ではわれわれ旧人類のホモ・サピエンスが受け持つのは何かというと、悪いところだけです。
―― なるほど、悪いところだけ。
執行 悪いところとは、宇宙的な言葉で言うと「混沌」です。混沌。不合理。それから悪い意味の愛。
―― なるほど。混沌、悪い意味の愛。
執行 科学や平等、民主主義、正義といったものでは解決できない混沌が、われわれにはあります。
―― はい。ありますね。
執行 この混沌の部分が、われわれが生存する正しい理由になるのです。
―― 確かにそうですね。混沌の部分ですね。
執行 それを私は「魂」と呼んでいます。だから魂は、悪い部分が多いのです。それが現行人類の役目だと思います。魂を持っている人たちだけが家畜にならず、AIと共存し、人間として生き残る社会が成立するのです。
―― 家畜にならないで、ですね。
執行 先ほどから「われわれが滅びる」と言っていますが、死ぬわけではありません。AIとロボットという新しい人類が誕生して、われわれは家畜として生き残って何もしない。AIが殺したいときは殺せるけれども、殺すか殺さないかはわからない。家畜として養ってもらう社会になるのです。
―― なるほど。
●ローマ帝国の時代から中世に移ったのは「予行練習」
執行 なぜ私がそういう見方をできるかというと、武士道が好きだからです。武士道は強力な文化ですが、綺麗事ではありません。歴史に残っているのは、悪いことばかりです。死んだ。殺された。自分でも切腹したり、人を殺したり。騎士道もそうです。
私は武士道と騎士道が好きでずっと研究し、自分もそのように生きたいと思っていたから気がついたのです。
―― そのように生きたいと思って、それをやってきたからですね。
執行 「いい人間になろう」と思っている人は、絶対わかりません。「いい人間」の部分は、もうないということです。
―― ある種、混沌と魂を持った人間になるために。
執行 私は今までの人類文化をずっと研究してきて、人類が生み出した最大の文化がヨーロッパでは騎士道、日本では武士道だと思っています。優れたものには全部、武士道が貫通しています。ヨーロッパでも優れた文明には、全部、騎士道が貫通しています。
その騎士道と武士道の中身は何かというと、文明の中の悪いものを包含している文化です。悪いものを「よし」とする。
―― なるほど、面白いですね。悪いものをよしとすると。
執行 その悪いものをよしとする文明である武士道と騎士道が滅びてきて、そこから現行人類は終わりに向かっているのです。そして、綺麗事の頂点である民主主義と平等と平和に(進んで)来たのです。
―― なるほど。全部脅かされていますね。
執行 ここからどう分かれるかというと、AIとロボットがいいも...