●悪と善とが交互になって、初めて物事が転がっていく
執行 だから、今すでにもう人類滅亡を迎えているとわかっていない人は、自分がやっていない人、自分が家畜の人です。
―― なるほど。
執行 自分が家畜側になっていないなら、絶対この人類は止まらないとわかります。
―― 確かにそうですね。
執行 その中で私がAIの話をしたかったのは、AIだけが、われわれが家畜となっても生きられる可能性があるからです。人数は少ないですが、魂を維持している人間は共存できます。
―― AIと共存できると。
執行 ほとんどの人間は家畜になると思いますが、死にはしません。そういう唯一の希望をAIとロボット社会に感じているのです。感じていたら40年たって、アメリカのサンディア国立研究所から、金属の自己修復の話が出てきた。要するに、金属の中に魂があるということです。
―― そうですね。
執行 そして意思がある。何の作用もしないのに、亀裂が入ったときに金属がその亀裂を自分の力でどんどん直していく。これがナノメートルの世界で観測されたわけです。大変なことです。
―― すごい話ですね。
執行 金属の中に魂がある、心がある、意思があるということです。これはロボット社会の第一歩が始まったということです。サンディア国立研究所の研究結果は、一つのアメリカの独立宣言のようなものです。アメリカの独立宣言は民主主義の狼煙ですから、同じようなものです。
―― なるほど。それが上がったわけですね。
執行 そうです。
―― アメリカが発表したというのが面白いですね。
執行 面白いといえば、これも余談になってしまうけれども、私は物事の真実は陰と陽の関係で進むと昔から言っています。だから、私は悪を大切にしています。悪がないと、善はありません。悪と善とが交互になって、初めて物事が転がっていくのです。
―― 動くわけですね。
執行 これは中国古代哲学の陰陽五行の理論に基づいています。人類が生存できる唯一の希望がAIとロボットだと私は言いましたが、その一つの後押しがこの(サンディア国立研究所の)観測結果です。この研究所は原爆を作ったところです。
―― それも、すごいですね。
執行 原爆と水爆を作って研究して、今はプラズマに移っているそうです。プラズマ兵器です。
そうした場所で出てきたというのは、私の陰陽の理論で言えば陰と陽、悪と善で言えば悪の塊のところで、善である希望の代表が生まれたのです。
―― 面白いですね。
執行 私はそのくらいのパワーを感じます。
執行 だから、今度も悪い人間だけが生き残る。歴史的事実や科学的事実があるから(そう)言っているのです。
文明が滅びるのは、トインビーの『歴史の研究』にもあるように、必ずいいものがなくなるからです。
ローマ帝国だって、いいところがたくさんありました。それを全部失って、楽を中心としたパンとサーカスになった。労働や戦争、軍隊、魂の愛、信、義などを全部キリスト教徒に任せた。戦争はゲルマン人に任せた。自分たちは享楽の生活をして、要は人間として滅びたのです。
―― いまと似てますね。
執行 今は、われわれがそうなっている。われわれは全部、楽しか求めていません。楽を求めていないのは私ぐらいでしょう。私は求めていません、武士道が好きだから。でも、誰もが(楽を)求めています。
―― はい。
執行 でも、楽を求めるのは破滅だとわかっていないのです。
―― なるほど。楽を求めるのは破滅なのですね。
執行 でも、やはり努力すること。あとは愛。どんな苦しくても愛に生きようとする。それから信頼です。信のために命を捨てる。あとは義のために立ち上がろうとする。こういうのが人間でしょう。
―― そうですね。
執行 でも、そんな人は今、ほとんどいません。
―― そういう魂を作ってきたものが、全部滅びてきているわけですね。
執行 そうです。今の人類が保持している、悪いほうの魂はまだAIにはない。だから、いいほうはAIにほとんど移っています。多分あと何十年か何百年かわかりませんが、いずれAIが平等も民主的なことも受け持ち、パワハラもセクハラもない…。
―― ある種の平和主義ですね。
執行 そうです。そういう社会が確立するとしたら、AIは人間になる以外ありません。
―― AIに魂が入っていくということですね。
執行 だんだん、だんだん入っていくと。完全に入るには、多分500年から1000年かかります。そのあいだ、われわれは悪い魂を受け持つ。悩みとか苦悩とか、そういったものを受け持つのです。
―― 家畜じゃなかった人は、ですね。
執行 その人たちの魂だけが、AIの中に徐々に移行していくと思います。
―― なるほど。