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行き過ぎた「綺麗事」で人間が自らを否定している

電脳社会の未来(4)綺麗事と人間

執行草舟
実業家/著述家/歌人
概要・テキスト
われわれは民主主義や平等といった綺麗事に侵され過ぎて、人類が滅びるところまで来ている。それは武士道と騎士道が受け持っていた「悪をぶった切る悪」を認めないからである。「AIには人情がない」などと言うが、その人情は人間からもすでに失われている。科学文明が発展しすぎて、現代人はひたすら「楽をすること」ばかりを考えるようになった。また、その科学文明の下、人権擁護が度を過ぎて、パワハラやセクハラといった考え方まで出てきた。それも綺麗事である。本来の人間が失われ、本末転倒な状況になってしまっている。(全9話中第4話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:09:47
収録日:2023/08/02
追加日:2023/10/06
カテゴリー:
キーワード:
≪全文≫

●人情そのものが実はもう人間から抜けていっている


執行 これ(ホモ・サピエンスの魂はAIやロボットの中に入るという考え)は私だけ特別なのかと思っていた時期もありますが、違いました。詩人などにもいるのです。

―― すでに考えていた人たちが(いるのですね)。

執行 考えている人がやっぱりいるわけです。私も好きな詩人ですが、この詩は知りませんでした。19世紀のジェラール・ド・ネルヴァルという人です。新しく発見したもので「黄金賦」という詩です。

 これを読むと、全部書かれています。あらゆるものの中に、すべての命が入っている。19世紀ですから200年ぐらい前の人で、その人が「金属の中にも、愛の神秘が宿る」と。

―― それは、すごいですね。

執行 そう。フランス語で「金属の中にも、愛の神秘が宿るなり。『万物は感ず』――しかり、なんじの存在を鷲づかみにして」と。鷲づかみとは「命の共感」ということです。命の共感さえあれば、金属の中にもどんどん命が宿っていくということを詩にして(語って)いるのです。

―― すごいですね。

執行 神蔵さんも、今の人類の非常にまずいところは綺麗事に侵されている社会だと感じますよね。

―― ものすごく感じます。

執行 私も感じます。綺麗事に侵され過ぎて、われわれ人類は滅びるところまで来ている。悪をぶった切る悪を認めないからです。

―― なるほど。悪をぶった切る悪。

執行 それが武士道と騎士道ですから。

―― そうですね。

執行 悪をぶった切る悪を認めるところにおいて、騎士道と武士道が発生してきたのです。

―― なるほど。

執行 でも、今はそれを否定しています。われわれは民主主義平等といったものを言い過ぎた。これをここまで発展させたこと自体が、われわれが自滅する兆候ということです。そして、われわれの自滅とともに、知識も何もかも、いいことを最も得意としているのがAIなのです。

 だからAIに移るように、われわれはもう動いてきてしまっているということで、それに気づかなければダメということです。人情や愛、親子の情愛といったものを、私が子どものときまでは誰でも認めていました。だから、親が子どもを殴っても、「殴る」という言葉は使いません。

―― はい。

執行 でも今、親が子どもを殴ったら、どこの家でも警察が飛んできます。それを「甘い社会になった」と...
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