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DATE/ 2017.09.26

日本の貧困…東京と地方はどれだけ違う?

 貧困問題が日本においてもかなり深刻な状態に陥っています。それにもかかわらず、きちんとフィーチャーされない理由は、その実態が見えにくいからかもしれません。貧困は、環境によってケースバイケースで、なかなか一概に語ることができないのです。

 そんな中、『週刊SPA! 2017年8月15日・22日合併号』では、「悲惨なのはどっちだ? 東京VS地方」という特集が組まれ、これまであまり語られてこなかった「東京型」と「地方型」の相違点を明らかにしました。本誌をもとに、東京型貧困と地方型貧困のそれぞれについて解説したいと思います。

沖縄の貧困率は30パーセント以上

 山形大学の戸室健作准教授が2016年に発表した資料によると、全国の貧困率は18.3パーセントとなっています。東京は16.8パーセントです。最も貧困率が高い県は沖縄で、なんと34.8パーセント。ここに、東京と地方の貧困の差が如実に表れています。

年収1000万円の「隠れ貧困」もいる

 もちろん、数字だけでは貧困の違いは見えてきません。次に質的な違いにも着目したいと思います。

 本誌では、東京型の特徴について
「1.初職で正社員以外は、非正規労働をループ」
「2.高止まりする家賃に圧迫されて難民化」
「3.誰からも気づかれない不可視の貧困」の3つが挙げられています。

 「1」については、現在、「大学を卒業しても約25パーセントの初職が非正規労働」という状況で、大卒者の4分の1が貧困のループに巻き込まれ、そこから逃れられなくなっているそうです。

 「3」の「不可視の貧困」については、「隠れ貧困」という切り口で語られることもあります。東京新聞の記事によると、「隠れ貧困」とは、一見裕福そうでも、貯蓄が乏しく将来は困窮を極める可能性のある状態をいいます。信じられないかもしれませんが、年収1000万近くもある家庭にも貧困の危機が迫っているのです。

コミィニティのあり方が貧困を助長している

 「地方型」の特徴については
「1.インフラ系以外の仕事がそもそも少ない」
「2.地縁・血縁がなければ都市部より生きづらい」
「3.匿名性がないためリセットできない」となっています。

 「2」「3」については、「情報が筒抜けなので、福祉を頼ることも難しいのが実情」とあります。一方、東京では「ヒューマンリソースが地方に比べて希薄」なため、孤独や孤立が問題となります。いずれにしても、東京でも地方でも、コミィニティのあり方が貧困を助長しているというわけです。

貧困に陥らないためには

 貧困の魔の手は、今やどこにでも潜んでいます。「隠れ貧困」について先述しましたが、年収が1000万円あってもまったく安心はできません。貧困に陥らないためにはどうすればいいのか。『隠れ貧困』(朝日新書)の著者・荻原博子氏は、「身の丈に合った生活をするよう貯蓄と出費を見直して」と助言しています。

 具体的には、たとえば、出費の大きい住宅費について、「これからマイホーム購入を考えている場合は、二〇年の東京五輪後に住宅価格が暴落することが予想されるため、それまで待つ方が賢明」、「一生賃貸の選択でもいい」と述べています。

 怖がっているだけでは貧困は防ぐことができません。まずは、自分を含めて多くの人に貧困の危機が迫っていること、すなわち、日本の貧困の現実から目をそらさないようにするべきでしょう。それが、貧困を防ぐ大事なクスリになるはずです。

<参考文献・参考サイト>
・『週刊SPA! 2017年8月15日・22日合併号』(扶桑社)
・東京新聞:「隠れ貧困」家庭が増加 高収入だが将来への貯蓄せず
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201707/CK2017070602000187.html
・『隠れ貧困 中流以上でも破綻する危ない家計』(荻原博子著、朝日新聞出版)
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授