社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
無印良品が海外でなぜ人気なのか?
「良品計画」V字回復の秘密
どこの家庭にも1つや2つは「無印良品」の商品があるのではないか。そう思わせるほど定番アイテムとして私たちの生活に根をおろしている無印良品を展開するのが株式会社 良品計画です。1979年の設立以来、シンプルで飽きのこないデザイン、品質にも信頼がおける「良品」をリーズナブルな価格で提供し続けてきました。今や無印良品、MUJIの店舗数は国内外合計で870店舗、そのうち、海外店舗は418店舗、海外の展開地域はアジア、欧米、中東に広がり26ヶ国という押しも押されぬグローバル企業ですが、実はこの良品計画も2001年頃は赤字で苦しんでいました。この状況を、2001年いわば良品計画が最悪であった時期に社長に就任した松井忠三氏が見事にV字回復させました。その回復劇成功の秘密は、松井氏の著書『無印良品は仕組みが9割』のタイトルが示す通り、無印良品独自の仕組み「MUJIGRAM」にある、と明かすのは産業戦略研究所代表の村上輝康氏です。
村上氏はサービスの世界に科学的、工学的アプローチを導入しサービスイノベーションを推進するサービソロジーの第一人者。このサービソロジーの理論を実践することで、サービス提供者の経験価値創造と利用者の利用価値創造が相互に関係して、かつ、満足度評価、学習度評価が適切に行われることで両者の間にサイクルが作られ、持続可能なサービスイノベーションにレベルアップしていくわけです。
「生きた」マニュアル・MUJIGRAM
そのサービスイノベーションのプロセスにおいては、知識やスキルが確実に蓄積されて、次のアクションに活用されることが重要なのですが、村上氏は今回その蓄積のノウハウとして、MUJIGRAMに着目しました。MUJIGRAMは一言でいえば、販売オペレーションマニュアルで、現場での作業を働く人の視点から13のカテゴリーに分割し、計13冊、トータル2000ページほどにまとめたものです。マニュアルというと、「分厚いファイル」「本棚の隅にでん!と鎮座している」というイメージがありますが、このMUJIGRAMは日々現場で活用されている「生きたマニュアル」だと村上氏は語ります。MUJIGRAMが「生きた」マニュアルである第一の理由は、一度作って終わりではなく、現場から上がってくる改善提案をどんどん取り入れ、更新していく点にあります。毎月10件以上の改善提案が上がってくるとのことですが、このような提案はすべて、店頭でお客さまに直接接するスタッフが顧客視点で得た経験価値を学習成果として店舗のサービスに還元させていくもの。こうして、新しい知識・スキルがハイペースで蓄積され、マニュアルの中に一元化されていくのです。こう聞くと、「生きた」マニュアルとは「育てる」ものなのだとも言えそうです。
「見える化」がグローバルな成長に貢献
さらに、堅苦しい管理用語を並べるのを止めて、グラフや画像などを積極的に活用しているのも、マニュアルが生きている、生かされている理由の一つ。マニュアルという堅苦しいイメージを払しょくし、誰もが手に取りやすく分かりやすいものとなっており、外国人や新人スタッフでも直観的に理解できるようになっているのだそうです。「知識やスキルの見える化」を可能にしたマニュアルがあることで、無印良品では日々のアイディアを世界中の店舗でほぼリアルタイムで共有できるようになっており、村上氏はこのMUJIGRAMが良品計画のグローバルな成長に大きく貢献していると言います。
「変えられる」からこそ生きてくる
さて、ここまで完璧なマニュアルがあると、「そればかりに頼りっきりになってしまうのではないか」という懸念も生まれてきますが、MUJIGRAMはあくまでも店舗運営のベース部分に関するもの。「こうしてはいけない」「それはだめ」と、書かれている以上のことをしてはいけないと禁じる規則書ではありません。MUJIGRAMで皆がベース部分を確認し、そのうえで「こうするともっとよくなるのではないか」という創意工夫が非常にしやすい仕組みでもあるそうです。村上氏によると、当初の13に分割されたMUJIGRAMはファイルの冊数こそ変わらないものの、全体の枠組みは柔軟に変化させ、より現場に則した体系に変化しているのだとか。マニュアルというと、一度出来上がったらおいそれとは変わらないもの、変えられないものといったイメージがありますが、このMUJIGRAMのように「変わっていく」ことこそ、知識やスキルを蓄積し、生かしていくマニュアルの鉄則なのかもしれません。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
日本は山紫水明の国なのに水不足!? お金と同じ水の価値
水から考える「持続可能」な未来(5)「水みんフラ」が水不足を防ぐ
日本は水に恵まれた国であるというイメージがあるかもしれないが、実際にはそうではない。しかし、それでも深刻な水不足に陥らないのには秘密がある。インフラによって水が「均されている」からだ。今回は、その点を啓発するた...
収録日:2024/09/14
追加日:2025/04/03
大谷翔平選手の活躍はなぜ必然なのか?~その思考の深み
編集部ラジオ2025(5)大谷翔平選手の「成功哲学」
投手と打者の二刀流への挑戦をはじめ、驚くべき活躍を続けてきて、野球界で数々の記録を樹立してきた大谷翔平選手。今回の編集部ラジオでは、その大谷選手の「名言」を紹介しながら、その成功哲学に迫っていく桑原晃弥先生の名...
収録日:2025/03/19
追加日:2025/04/03
花粉、炭素、酸素同位体…重複分析で分かる弥生時代の環境
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(3)弥生時代の環境と気候
古代の気候を推測するために、研究者はさまざまな方法を駆使してきた。海水面の位置をもとにした「弥生の小海退」説をはじめ、花粉や炭素濃度などから行う分析法には難点もある。その難点を克服した方法によって見えてきた弥生...
収録日:2024/07/29
追加日:2025/04/02
プラトンが警告!人間の「欲望の暴走」を哲学的に考える
哲学の役割と近代日本の挑戦(1)欲望暴走のメカニズム
プラトンが深く考察した対象に「欲望」がある。欲望はしばしば、日常的に手に取れることのできる健全な欲求を超えると、理念的なものへと膨らんでいく。一旦理念となった欲望は増殖してとどまるところを知らない。そのためには...
収録日:2023/07/28
追加日:2023/09/30
分断進む世界でつなげていく力――ジェトロ「3つの役割」
グローバル環境の変化と日本の課題(5)ジェトロが取り組む企業支援
グローバル経済の中で日本企業がプレゼンスを高めていくための支援を、ジェトロ(日本貿易振興機構)は積極的に行っている。「攻めの経営」の機運が出始めた今、その好循環を促進していくための取り組みの数々を紹介する。(全6...
収録日:2025/01/17
追加日:2025/04/01