社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
東京五輪でも期待大、airbnbのサービスモデルとは
2020年の東京五輪に向けて、全国的に民泊を解禁する「民泊新法(住宅宿泊事業法)」が2018年6月15日から施行されます。その中に明記されているのが、「airbnb(エアービーアンドビー)」「HomeAway(ホームアウェイ)」などの企業名です。
とりわけairbnbは、2016年のリオ五輪で代替宿泊施設公式サプライヤーに認定されたシステム。リオデジャネイロ市内において8万5000人のゲストがサービスを利用しました。ホストの収益は3000万ドル(約30億円)を超え、全体で約1億ドル(約76億円)の経済活動があったと推計されています。
これほどの経済効果をもたらすairbnbのビジネスモデルばかりが注目されることに不満を抱いているのが、サービソロジーを推進する村上輝康氏(産業戦略研究所代表)。氏が注目しているのは、airbnbの「サービスモデル」が優れていることなのです。どういうことなのか、教えていただきましょう。
情報の送り手(ホスト)と受け手(ゲスト)が主役で、airbnbの立場は「媒介」です。媒介として行うのは、デジタルなオープンプラットフォーム上で、登録された宿の中から、顧客の事前期待を完全に充足するような宿泊体験を実現すること。
この宿泊体験の実現が、いわゆるコンテンツ。airbnbの創業メンバーが「ホテルは高くて、ありきたりだ」と感じていたことから、エアーマット1枚から始まったというエピソードは広く知られています。当初は「ホテルとホステルの中間」、あくまで実用性がねらいだったのが、現在ではツリーハウスやヨーロッパの古城、モンゴルのパオなど、信じられないほど多様でユニークな宿泊体験が可能になりました。送り手と受け手で構成される利用者の数が増えれば増えるほど、コンテンツが雪だるま式に充実するのが、airbnbの魅力です。
airbnbにおいて利用価値共創がどのように行われているかというと、チャネルとコンテキストがものを言います。チャネルの充実は、ユーザーインターフェイスとも言いかえられるでしょう。airbnbでは創業メンバー3人中2人がデザイナーであるため、デザイン性に非常に優れています。また、可能な限りスマホ対応できる手軽さにより、ゲストもホストも価値共創に参加しやすくなります。
コンテキスト(文脈)を共有することは、サービス産業の重要ポイント。airbnbは現在192カ国でサービスを提供しているため、土地に応じて異なる文化、慣習、法規制等の間を結ぶ役もこなしています。ホストとゲストの双方がトラブルなく満足する環境を生み出すための努力です。
最後に、コストとリターンについてもガラス張りのしくみで、ホスト・ゲストともに満足を得ています。結果としての交換価値は、airbnbが非公開企業であるため不明確ですが、ヒルトンやマリオットなど世界有数のホテル・チェーンと並ぶほどの企業価値を実現していると言われています。
airbnbが急速に成長した理由は、利用価値共創のサイクルと経験価値共創のサイクルがつながり、価値共創の自律的成長のスパイラルを形成していること。また、それが市場での交換価値実現のサイクルにつながることだと村上氏は言います。持続可能なサービスイノベーションとして、東京五輪でもairbnbはさらに注目される存在でありそうです。
とりわけairbnbは、2016年のリオ五輪で代替宿泊施設公式サプライヤーに認定されたシステム。リオデジャネイロ市内において8万5000人のゲストがサービスを利用しました。ホストの収益は3000万ドル(約30億円)を超え、全体で約1億ドル(約76億円)の経済活動があったと推計されています。
これほどの経済効果をもたらすairbnbのビジネスモデルばかりが注目されることに不満を抱いているのが、サービソロジーを推進する村上輝康氏(産業戦略研究所代表)。氏が注目しているのは、airbnbの「サービスモデル」が優れていることなのです。どういうことなのか、教えていただきましょう。
「ユニークな宿泊体験」がairbnbのコンテンツ
airbnbは、個人事業主であるホストが、自分の家や部屋を、自分のいない間、宿泊先を探しているゲストに適当な値段で貸し出すためのマッチングを行うプラットフォームを運営しています。そこで、まず「送り手、受け手、コンテンツ」の面からサービスモデルを検証しましょう。情報の送り手(ホスト)と受け手(ゲスト)が主役で、airbnbの立場は「媒介」です。媒介として行うのは、デジタルなオープンプラットフォーム上で、登録された宿の中から、顧客の事前期待を完全に充足するような宿泊体験を実現すること。
この宿泊体験の実現が、いわゆるコンテンツ。airbnbの創業メンバーが「ホテルは高くて、ありきたりだ」と感じていたことから、エアーマット1枚から始まったというエピソードは広く知られています。当初は「ホテルとホステルの中間」、あくまで実用性がねらいだったのが、現在ではツリーハウスやヨーロッパの古城、モンゴルのパオなど、信じられないほど多様でユニークな宿泊体験が可能になりました。送り手と受け手で構成される利用者の数が増えれば増えるほど、コンテンツが雪だるま式に充実するのが、airbnbの魅力です。
「価値共創」の時代のサービス産業はどう動く
また、村上氏が重要視しているコンセプトは「利用価値共創」です。これまでは企業が価値を創出し、消費者は企業の生み出した価値を消費するととらえられるのが普通でしたが、サービソロジーでは、価値は企業と顧客が一緒に生み出していくものと考えています。アップルやグーグルなど、時代の先端で成功している企業の多くが、価値の共創を主軸に置いています。airbnbにおいて利用価値共創がどのように行われているかというと、チャネルとコンテキストがものを言います。チャネルの充実は、ユーザーインターフェイスとも言いかえられるでしょう。airbnbでは創業メンバー3人中2人がデザイナーであるため、デザイン性に非常に優れています。また、可能な限りスマホ対応できる手軽さにより、ゲストもホストも価値共創に参加しやすくなります。
コンテキスト(文脈)を共有することは、サービス産業の重要ポイント。airbnbは現在192カ国でサービスを提供しているため、土地に応じて異なる文化、慣習、法規制等の間を結ぶ役もこなしています。ホストとゲストの双方がトラブルなく満足する環境を生み出すための努力です。
イノベーションを立ち止まらせない評価システム
このほかに、airbnbでは満足度評価を顧客に義務付けて、事前期待を上回るしくみをつくり、新しい価値発信を充実させるよう取り組んでいます。満足度評価によって、ゲストとホストの間で行われた価値共創の結果は経験価値に位置付けられ、評価を受けることでairbnbとホストには学習度評価がもたらされます。このようにして、ホストにもairbnbにも知識とスキルが蓄積されていきます。最後に、コストとリターンについてもガラス張りのしくみで、ホスト・ゲストともに満足を得ています。結果としての交換価値は、airbnbが非公開企業であるため不明確ですが、ヒルトンやマリオットなど世界有数のホテル・チェーンと並ぶほどの企業価値を実現していると言われています。
airbnbが急速に成長した理由は、利用価値共創のサイクルと経験価値共創のサイクルがつながり、価値共創の自律的成長のスパイラルを形成していること。また、それが市場での交換価値実現のサイクルにつながることだと村上氏は言います。持続可能なサービスイノベーションとして、東京五輪でもairbnbはさらに注目される存在でありそうです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
シフトワークによる脱同調に要注意…時差ボケへの対策は?
睡眠と健康~その驚きの影響(5)時差ボケと脱同調
シフト勤務者にとって避けて通れない問題がある。それは、時差ボケによる睡眠のリズムである。現在、日本では労働者の何割かがシフトワークに就いているが、この働き方では睡眠のリズムが崩れ、健康を大きく害する危険がある。...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/07/03
なぜ『ホトトギス』に注目?江藤淳の「リアリズムの源流」
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(2)江藤淳の「リアリズムの源流」
文芸評論を再考するに当たり、江藤淳氏の「リアリズムの源流」を振り返ってみる。一般的に日本で近代小説が始まった起源は坪内逍遥だといわれるが、江藤氏はそれに疑問を呈す。そして注目したのが、夏目漱石の「坊ちゃん」であ...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/07/02
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
国際政治の戦略を考える上で今やかかせない地政学の視座。今回のシリーズではヨーロッパに焦点を当て、地政学の観点から情勢分析をする。第1話目では、まず地政学の要点をおさらいし、常に揺れ動いてきた「ヨーロッパ」という領...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/05/05
最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか
第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは
日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道
機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01