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DATE/ 2018.03.03

ドローンで何が変わる?最先端の活用事例とは

 2018年平昌オリンピックの開会式は、1218機のドローンが描く五輪で話題になりました。その光景を見て、あらためて小型無人航空機ドローンを基本から知りたくなった人も多いでしょう。そんな方は、ドローン研究の第一人者で日本無人機運行管理コンソーシアム(JUTM)の代表である鈴木真二教授(東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻)のレクチャーが必見です。

「空飛ぶロボット」は、3Dな作業を3Sで処理する

 「ドローン」とは「蜂の羽音」を意味する言葉、無人飛行機のプロペラが風を切る音が、蜂の飛ぶときの音に似ているからです。日本語にすると「ブーンブーン…」という感じでしょうか。

 2010年代になって急速に広まったドローンは、これまでの飛行機が飛ぶことのできなかった、非常に低い高度の空域を利用できることから、「空の産業革命」をひらくものと期待されています。空撮や測量、無線中継、物質輸送、物質投下など、さまざまな領域で活躍できるからです。

 といっても、活躍の現場は決して華やかなものばかりではありません。むしろ、定点観察などの「ダル(dull:退屈)」な作業、汚染された「ダーティ(dirty:汚い)」区域、交通遮断などが行われ倒壊の危険が迫る「デンジャラス(dangerous:危険)」な現場など、「3D」な作業が中心です。

 人が立ち入ることができなかったり、長く逗留していられない場所での作業をドローンは受け持ちます。しかも、「スマート(smart:賢く)」に、「シンプル(simple:簡単)」に、「セキュア(secure:安全・確実)」に、と「3S」で処理することができる「空飛ぶロボット」。それが、鈴木教授の描く理想的なドローン活用法です。

リモコン並みの簡単操作で、迫力ある空撮映像

 ドローンがさまざまな現場での活躍を期待されているのは、操作方法が基本的にラジコンと同じぐらい簡単だからです。ドローン自体はヘリコプター同様、不安定な特性を持っているため、ひっきりなしに操縦・制御が必要。でも、それが逆に、半導体ジャイロやGPSを利用したフィードバック制御による自動操縦システムの開発につながりました。

 GPSを利用すればプログラム(自動)飛行もできますが、必要な操縦は、コントローラーのマニュアル操作で行われます。機体本体にはGPSやコンパスが備えられていて、空中の一点でホバリングすることも可能。従来のヘリコプターやクレーン以上に低い高度から、ダイナミックでぶれない撮影ができるのは、このためです。

 さらにドローンが撮影したカメラ映像を手元のタブレットやスマホに映し出せば、「FPV(ファースト・パーソン・ヴュー)」と呼ばれる、本人視点での操縦も可能になります。空からの映像をダイナミックに伝えるための道具として、報道や映画などの空撮にドローンは欠かせないものになりつつあります。

広がる用途と需要、注目される法規制

 空撮ができることから、高所での「点検」にドローンを使う試みも出てき、現場での「測量」という新しい用途を生みました。すでに福島では、空中の放射線量測定にドローンが利用され始めました。農薬散布はすでに実用段階に入っていますし、空から消火剤をまけば、消防作業への利用も期待できます。小さな荷物の配送・輸送も、ドローンの重要な利用分野です。いずれも法規制をどうするか、検討中の課題です。

 そして、無線の中継機としてドローンを用いる研究も行われています。東日本大震災では地上の無線局が機能しなくなりましたが、空中に無線機を飛ばしておけば、常に通信が利用できるのではないかと期待されているのです。

 大手の海外IT業者では、太陽電池を無人機に取り付けて、数年間着陸させることなく中継機として機能させ、例えばアフリカのような土地で、インターネットの利用を可能にする壮大な計画も立てられています。

 増え続けるドローン需要に対して、国は航空法改正により「無人航空機の飛行等に関する罪」を定めています。該当するとされた場合は50万円以下の罰金、実際に逮捕者も出てきました。興味がわいて始めたくなった方は、くれぐれもご注意を。
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授