社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
学びとは何か~自分探しよりも「学びの入り口」探しを
人生100年時代といわれる今日、重要なのは「学びの入り口」だとするのは、専修大学文学部教授の貫成人氏です。貫氏は、哲学を身近なものとするため、授業のかたわら、さまざまな著書を執筆。2017年には哲学コミック『となりのカントくん』の原作も行っています。10MTVでも「西洋哲学史の10人」と題するシリーズ講義で、ソクラテスやプラトンに始まる10人の哲学者を紹介。一人ひとりの思想をかみ砕いて伝えるやさしさに定評があります。
現代人は「哲学」というだけで難しい本を読まなければならないと身構えてしまいますが、哲学のもともとの意味は、まだ手にしていない「未知の知」を愛するということ。つまり、名付けられていなかったり、定義されていなかったり、普遍化されていない考えに対して、「どうしても知りたい」とあこがれを強く持つことを言います。
ソクラテスが求めたのも、「勇気」や「知識」など、毎日何度も使いながらも、一旦「それは何を意味しているのか」を問い出すとキリがなくなるような、身近にあることばや概念でした。そう考えると、「学びの入り口」はどこにでもあるのです。
最初は「なんとなく好き」だったものが、調査して論文を書いていくなかで、漫画なら「アートとは何か」、ロックなら「音楽とは何か」、漫才なら「笑いとは何か」という哲学的な思考にまで高められ、深められていく。
普段人が当たり前のように見ているものについて、今まで誰も気づかなかったことを発見するのは、まさに「学び」の醍醐味であり、知や哲学だけが与えてくれる深い喜びです。そこにたどり着くための基本は、まず「自分」であり、自分の生きている場所を掘り下げ、自分のやりたいことなどを考えることが重要だと貫氏は言います。
自分の関心から出てくる学びであれば、より深く、より身近に学ぶことができると貫氏。さらに、それを掘り下げていく過程で必要になるのが、先人の知恵です。彼らの考えたことを身につければ、それを「てこ」にして、自分の考えをさらに深めたり、高めたりしながら、全然考えてもいなかった方向に進めていくということができるからです。
漫画を追求する学生が美学の本を読むように、自分の議論を鍛え、考えていくための武器やツールとして、「昔の哲学者が書いたものを使っていくことは極めて重要」と貫氏は言います。
学びの入り口はどこにでも転がっていて、考え方や物の見方さえ身に付ければ、24時間365日哲学ができる、と貫氏。「学び」とは、やがて自分を発見し、現実の身の周りの在り方を発見する、そのための過程であり、結局は自分探しにもつながる王道であるようです。
「学びの入り口」はどこにでもある
貫氏は、哲学の入り口が「身の周り」にあると確信するのは、哲学の祖であるソクラテスの方法がそうだからだ、と言います。現代人は「哲学」というだけで難しい本を読まなければならないと身構えてしまいますが、哲学のもともとの意味は、まだ手にしていない「未知の知」を愛するということ。つまり、名付けられていなかったり、定義されていなかったり、普遍化されていない考えに対して、「どうしても知りたい」とあこがれを強く持つことを言います。
ソクラテスが求めたのも、「勇気」や「知識」など、毎日何度も使いながらも、一旦「それは何を意味しているのか」を問い出すとキリがなくなるような、身近にあることばや概念でした。そう考えると、「学びの入り口」はどこにでもあるのです。
「なんとなく好き」を哲学的な思索に変えていく
貫氏のゼミでは、漫画好きの学生は漫画について、ロック音楽や落語の好きな学生は、ロック音楽や落語について、それぞれ材料を集め、調べ、考えを練り上げていくのだと言います。最初は「なんとなく好き」だったものが、調査して論文を書いていくなかで、漫画なら「アートとは何か」、ロックなら「音楽とは何か」、漫才なら「笑いとは何か」という哲学的な思考にまで高められ、深められていく。
普段人が当たり前のように見ているものについて、今まで誰も気づかなかったことを発見するのは、まさに「学び」の醍醐味であり、知や哲学だけが与えてくれる深い喜びです。そこにたどり着くための基本は、まず「自分」であり、自分の生きている場所を掘り下げ、自分のやりたいことなどを考えることが重要だと貫氏は言います。
学びの入り口はどこにでも、先人の知恵は「てこ」にする
入り口はどこにでもありますが、人と同じように見ているだけでは、学びに高めていくことはできないのも事実。たとえば漫画の例で言えば、古今の漫画を読んでいるうちに、どこかで「そもそも芸術とは何か」を調べるために、美学のさまざまな著作を読む必要とぶつかります。自分の関心から出てくる学びであれば、より深く、より身近に学ぶことができると貫氏。さらに、それを掘り下げていく過程で必要になるのが、先人の知恵です。彼らの考えたことを身につければ、それを「てこ」にして、自分の考えをさらに深めたり、高めたりしながら、全然考えてもいなかった方向に進めていくということができるからです。
漫画を追求する学生が美学の本を読むように、自分の議論を鍛え、考えていくための武器やツールとして、「昔の哲学者が書いたものを使っていくことは極めて重要」と貫氏は言います。
学びの入り口はどこにでも転がっていて、考え方や物の見方さえ身に付ければ、24時間365日哲学ができる、と貫氏。「学び」とは、やがて自分を発見し、現実の身の周りの在り方を発見する、そのための過程であり、結局は自分探しにもつながる王道であるようです。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
ヒトは、そもそもの生き方であった狩猟採集生活でも子育てを分担してきた。それは農業社会においても大きくは変わらなかったが、しかし産業革命以降、都市化が進み、貨幣経済と核家族化と個人主義が浸透した。ヒトが従来行って...
収録日:2025/03/17
追加日:2025/09/14
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
アメリカのトランプ大統領は、2025年5月に訪れたサウジアラビアでの演説で「トランプ・ドクトリン」を表明した。それは外交政策の指針を民主主義の牽引からビジネスファーストへと転換することを意味していた。中東歴訪において...
収録日:2025/08/04
追加日:2025/09/13
外政家・原敬とは違う…職業外交官・幣原喜重郎の評価は?
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(2)外交と軍事のバランス
国際関係においては外交と軍事(内政)のバランスが重要となる。著書では、近代日本において、それらのバランスが崩れていった過程を3つのステージに分けて解説しているが、今回はその中の、国のトップが外政家・原敬から職業外...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/12
フーリエ解析、三角関数…数学を使えば音の原材料が分かる
数学と音楽の不思議な関係(3)音と三角関数とフーリエ級数
音が波であることは分かっても、それが三角関数で支えられていると言われてもピンとこないという方は少なくないだろう。そこで、その話を補足するのが倍音や周波数という概念であり、そのことを目で確認できるとっておきのイメ...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/11
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15