社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
転職回数と生涯賃金の意外な関係とは?
さらなるキャリアアップ、そして収入アップを期待して転職をする人は多いでしょう。転職=収入アップを期待させるような求人サイトの広告も目にしますが、実際のところ、ひとつの会社で正社員として勤め上げるのと、転職をしながら仕事を続けるのとでは、どちらがより稼ぐことができるのでしょうか。
その結果、Aのパターンで大学・大学院卒の男性の生涯賃金(退職金は含めない)は2億7,000万円、女性は2億2,000万円であるのに対し、Bの大学・大学院卒の男性の生涯賃金(退職金は含めない)は2億9,000万円、女性は2億4,000万円で、Aと比べて2,000万円ほど高いことがわかりました。またBの場合、学歴が高くなるほど就業年数は短くなるものの、賃金水準が高くなるため、結果として生涯賃金も高くなるとしています。
以上は平均値ではありますが、同一企業で働き続けたほうが、転職をしながら働き続けるよりも2,000万円多く稼げるようです。また生涯賃金は学歴が高いほど、また企業規模が大きくなるほど生涯賃金も比例して高くなるという結果も発表しています。
[転職による退職金減少率]
25歳:-14.9%
30歳:-34.9%
35歳:-48.3%
40歳:-54.8%
45歳:-55.5%
50歳:-47.7%
55歳:-31.6%
(2015年、1,000人以上規模企業の男性大学卒の男性労働者)
一般に、退職金は長年勤めれば勤めるほどその額は増えていきます。逆に言えば、転職をすればするほど、当然退職金の額も下がっていくということ。転職でその時の収入は上がっても、転職のタイミングによって結果的に生涯年収が大幅に下がってしまう可能性があるのです。
[転職による生涯賃金減少率](転職なしを0とする)
25歳:-3.6%
30歳:-8.3%
35歳:-11.4%
40歳:-12.8%
45歳:-12.7%
50歳:-10.7%
55歳:-7.0%
(2015年、1,000人以上規模企業の男性大学卒の男性労働者)
とはいえ、統計はあくまで全体的な傾向で、転職先は前職と同じ企業規模の会社であることが前提となっています。より規模の大きい会社への転職や、実力重視のベンチャー企業への就職などで一気に収入を上げるケースは少なくなく、転職によって賃金を上げている人の割合が2015年からプラスに転じた、という結果も報告されています。
ひとつの会社に長く勤めたほうが結果的に「得」ではあるでしょう。とはいえ、終身雇用制度が崩れ、どんなに大きな会社でも突然倒産に追い込まれることもある昨今。今後、働き方を変えざるを得ない事態に直面しないとも限りません。
今回発表されたデータをもとに、将来自分がどうなりたいかを思い浮かべながら、今後どうキャリアアップを目指すか考えてみてはいかがでしょうか。
同一企業で働き続けたほうが、2,000万円オトク
厚生労働省管轄の独立行政法人である労働政策研究・研修機構は、既存の労働統計をもとに独自の視点と計算方法で「ユースフル労働統計2017」をまとめています。そのなかで、A転職は平均的にするが、60歳で定年退職するまでフルタイムの正社員を続けるパターンと、B同じ企業で、60歳で定年退職するまでフルタイムの正社員を続けるパターンとで分けて集計しています。その結果、Aのパターンで大学・大学院卒の男性の生涯賃金(退職金は含めない)は2億7,000万円、女性は2億2,000万円であるのに対し、Bの大学・大学院卒の男性の生涯賃金(退職金は含めない)は2億9,000万円、女性は2億4,000万円で、Aと比べて2,000万円ほど高いことがわかりました。またBの場合、学歴が高くなるほど就業年数は短くなるものの、賃金水準が高くなるため、結果として生涯賃金も高くなるとしています。
以上は平均値ではありますが、同一企業で働き続けたほうが、転職をしながら働き続けるよりも2,000万円多く稼げるようです。また生涯賃金は学歴が高いほど、また企業規模が大きくなるほど生涯賃金も比例して高くなるという結果も発表しています。
転職をすればするほど下がる退職金
「ユースフル労働統計2017」では、転職による退職金の減少率もまとめています。最も減少率が大きくなったのは45歳で転職した場合の55.5%。これは、退職金制度がある企業の多くが、ある一定の勤続年数(概ね20年)を超えた時に退職金が大きく増額されるためで、ちょうど40~45歳前後で勤続年数が二分されてしまうからだということです。[転職による退職金減少率]
25歳:-14.9%
30歳:-34.9%
35歳:-48.3%
40歳:-54.8%
45歳:-55.5%
50歳:-47.7%
55歳:-31.6%
(2015年、1,000人以上規模企業の男性大学卒の男性労働者)
一般に、退職金は長年勤めれば勤めるほどその額は増えていきます。逆に言えば、転職をすればするほど、当然退職金の額も下がっていくということ。転職でその時の収入は上がっても、転職のタイミングによって結果的に生涯年収が大幅に下がってしまう可能性があるのです。
転職のタイミングによっても生涯賃金は下がる
また、転職を1度経験してから定年を迎えると、1度も転職せずに定年を迎えた時と比べて最高で12.8%の減少になるという結果が。特に40~45歳で減少率が目立っているのは、前述した退職金の額とリンクしているからと考えられます。[転職による生涯賃金減少率](転職なしを0とする)
25歳:-3.6%
30歳:-8.3%
35歳:-11.4%
40歳:-12.8%
45歳:-12.7%
50歳:-10.7%
55歳:-7.0%
(2015年、1,000人以上規模企業の男性大学卒の男性労働者)
生涯賃金を上げたいなら現状維持がベスト。ただしそれもリスクはある
以上の結果から、少しでも生涯賃金を多くしたいなら転職はしない、あるいは、転職はできる限り40代前でしたほうがよいといえるでしょう。とはいえ、統計はあくまで全体的な傾向で、転職先は前職と同じ企業規模の会社であることが前提となっています。より規模の大きい会社への転職や、実力重視のベンチャー企業への就職などで一気に収入を上げるケースは少なくなく、転職によって賃金を上げている人の割合が2015年からプラスに転じた、という結果も報告されています。
ひとつの会社に長く勤めたほうが結果的に「得」ではあるでしょう。とはいえ、終身雇用制度が崩れ、どんなに大きな会社でも突然倒産に追い込まれることもある昨今。今後、働き方を変えざるを得ない事態に直面しないとも限りません。
今回発表されたデータをもとに、将来自分がどうなりたいかを思い浮かべながら、今後どうキャリアアップを目指すか考えてみてはいかがでしょうか。
<参考サイト>
・独立行政法人労働政策研究・研修機構:ユースフル労働統計 2017 労働統計加工指標集
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2017/index.html
・独立行政法人労働政策研究・研修機構:ユースフル労働統計 2017 労働統計加工指標集
http://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2017/index.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
トランプ関税はアダム・スミス以前の重商主義より原始的
第2次トランプ政権の危険性と本質(2)トランプ関税のおかしな発想
「トランプ関税」といわれる関税政策を積極的に行う第二次トランプ政権だが、この政策によるショックから株価が乱高下している。この政策は二国間の貿易収支を問題視し、それを「損得」で判断してのものだが、そもそもその考え...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/05/17
大隈重信と福澤諭吉…実は多元性に富んでいた明治日本
デモクラシーの基盤とは何か(2)明治日本の惑溺と多元性
アメリカは民主主義の土壌が育まれていたが、日本はどうだったのだろうか。幕末の藩士たちはアメリカの建国の父たちに憧憬を抱いていた。そして、幕末から明治初期には雨後の筍のように、様々な政治結社も登場した。明治日本は...
収録日:2024/09/11
追加日:2025/05/16
【会員アンケート】談論風発!トランプ関税をどう考える?
編集部ラジオ2025(8)会員アンケート企画:トランプ関税
会員の皆さまからお寄せいただいたご意見を元に考え、テンミニッツTVの講義をつないでいく「会員アンケート企画」。今回は、「トランプ関税をどう考える?」というテーマでご意見をいただきました。
第2次トランプ...
第2次トランプ...
収録日:2025/05/07
追加日:2025/05/15
相互関税の影響は?…トランプが築く現代版の万里の長城
世界を混乱させるトランプ関税攻勢の狙い(1)「相互関税」とは何か?
トランプ大統領は、2025年4月2日(アメリカ時間)に貿易相手国に「相互関税」を課すと発表し、「解放の日」だと唱えた。しかし、「相互関税」の考え方は、まったくよくわからないのが実状だ。はたして、トランプ大統領がめざす...
収録日:2025/04/04
追加日:2025/04/10
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24