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首都直下地震は起こるのか?
「これから大きな地震が来るのか、来るとすれば、いつ頃、どこで、どんな規模なのか?」――災害大国といわれる日本、近年は毎年のように大型台風や地震、豪雨など自然災害が発生していますが、なかでも特に気になるのは地震ではないでしょうか。
そこで、今後の地震について、京都大学名誉教授で同大学レジリエンス実践ユニット特任教授の鎌田浩毅先生の近著『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)を参考に考えてみたいと思います。『首都直下地震と南海トラフ』では、女優の室井滋さんとの対談と本論の二段構えで、地震と噴火の活動期に入った日本列島において災害を正しく恐れる知識を、分かりやすく説き明かしています。
ちなみに鎌田先生の専門は、地球科学・火山学・科学コミュニケーション。一般市民向けに科学を明快に解説するダンディな姿は、「世界一受けたい授業」や「情熱大陸」「又吉直樹のヘウレーカ!」などでもおなじみです。
まず、同じ震源域で起こる最大M8クラスの海の地震。これは本書が出版された翌週、2021年2月13日の福島沖地震(M7.3)により証明されてしまいました。1000年に一度の巨大地震で列島周辺のプレートにひずみが起こっているのです。東日本の岩盤は東西方向に伸長し、その結果として内陸性の直下型地震が誘発されています。鎌田先生が危惧するのは、誘発地震の可能性がある北米プレートに東京がまるまる入っていること。都市直下で誘発地震が起これば、阪神・淡路大震災のような大災害は免れないからです。
これらとは別に、東京より西の東海(静岡沖)、東南海(名古屋沖)、南海(紀伊半島沖)で巨大地震が起こるリスクも控えています。これは「三連動地震」となる可能性が極めて高く、30年以内に発生する確率はM8.0の東海地震が88%、M8.1の東南海地震が70%、M8.4の南海地震が60%と予測されています。
「もしも東京で火山灰が降ったら?」という室井さんの質問に対して、鎌田先生は「過去は未来を解く鍵」という地質学上の言葉を持ち出し、300年前の宝永噴火を参照します。1週間ぐらいの間に横浜で10センチ、江戸で5センチの火山灰が積もりました。
同じことが現在起こると、どの程度の被害があるでしょう。火山灰は非常に細かいため、コンピュータや電子機器に大きな影響を及ぼし、電車も止まって都市機能をストップさせます。また、細かいガラスの粉が目やのどに入って炎症を起こすなど、人体への被害もかなり懸念されます。
ただ、火山噴火の場合、1か月ほど前から予兆が現れるとされています。地震のように準備期間がまったくない、というわけではありません。
なぜなら、「日本人のDNAには、天災から生きのびる要素が入っている」と確信するからです。さらに、地震にも火山にも「恵み」の面が大きくあります。一時的に地震や噴火という災害を受ける以外の長い時間、われわれは豊富な地下水、温泉、優美な地形などの恵みを享受しています。
日本人に限らず、人類は何千年も「地震の巣」の上に好んで住み着いてきた歴史があります。いつ起きてもおかしくない災害への準備は大切ですが、長いスパンで自然現象を捉える見方を「長尺の目」として鎌田先生は提唱します。長尺の目を持つための古典として、本書ではプラトンやユクスキュル、中谷宇吉郎などの文章を紹介。いずれも、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」わたしたちを普遍的な知へ導いてくれます。
もう一つの提案は「ストックからフロー」へのシフト。膨大なエネルギーによって成り立っている文明生活が破綻しつつあることを警告しているのが「3・11」や今日のコロナ禍だというのは、誰もがひそかに思い当たっていることではないでしょうか。
地質学者と女優の対談を切り口とした本書は、不安を理解に変えてくれる妙薬。リスクへの備えが必要なすべての日本人にお勧めです。
そこで、今後の地震について、京都大学名誉教授で同大学レジリエンス実践ユニット特任教授の鎌田浩毅先生の近著『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)を参考に考えてみたいと思います。『首都直下地震と南海トラフ』では、女優の室井滋さんとの対談と本論の二段構えで、地震と噴火の活動期に入った日本列島において災害を正しく恐れる知識を、分かりやすく説き明かしています。
ちなみに鎌田先生の専門は、地球科学・火山学・科学コミュニケーション。一般市民向けに科学を明快に解説するダンディな姿は、「世界一受けたい授業」や「情熱大陸」「又吉直樹のヘウレーカ!」などでもおなじみです。
東日本大震災の本当の怖さを地震学者が語る
室井さんが最初に聞きたかったのは、冒頭に挙げた「これから大きな地震が来るのか、来るとすれば、いつ頃、どこで、どんな規模なのか?」。コロナ禍の日本で、口には出さずとも誰もが抱えている、ひそかな懸念です。これに対して、鎌田先生は「大災害は、いつどこに来てもおかしくない」と断言。東日本大震災のマグニチュード9の揺れを引き金として、「動く大地の時代」が始まり、1000年ぶりに「日本列島全体が活動期に入ってしまった」のだといいます。まず、同じ震源域で起こる最大M8クラスの海の地震。これは本書が出版された翌週、2021年2月13日の福島沖地震(M7.3)により証明されてしまいました。1000年に一度の巨大地震で列島周辺のプレートにひずみが起こっているのです。東日本の岩盤は東西方向に伸長し、その結果として内陸性の直下型地震が誘発されています。鎌田先生が危惧するのは、誘発地震の可能性がある北米プレートに東京がまるまる入っていること。都市直下で誘発地震が起これば、阪神・淡路大震災のような大災害は免れないからです。
これらとは別に、東京より西の東海(静岡沖)、東南海(名古屋沖)、南海(紀伊半島沖)で巨大地震が起こるリスクも控えています。これは「三連動地震」となる可能性が極めて高く、30年以内に発生する確率はM8.0の東海地震が88%、M8.1の東南海地震が70%、M8.4の南海地震が60%と予測されています。
富士山噴火のリスクも高まってきた?
コロナ禍の陰で大きく報道はされませんでしたが、2020年4月、政府は富士山での大規模噴火が発生した場合に生ずる首都圏への被害シミュレーションを発表しました。富士山は「噴火のデパート」と呼ばれ、火山災害の6パターン(火山灰、噴石、溶岩流、火砕流、泥流、岩なだれ)のどれが起こっても不思議ではないといいます。「もしも東京で火山灰が降ったら?」という室井さんの質問に対して、鎌田先生は「過去は未来を解く鍵」という地質学上の言葉を持ち出し、300年前の宝永噴火を参照します。1週間ぐらいの間に横浜で10センチ、江戸で5センチの火山灰が積もりました。
同じことが現在起こると、どの程度の被害があるでしょう。火山灰は非常に細かいため、コンピュータや電子機器に大きな影響を及ぼし、電車も止まって都市機能をストップさせます。また、細かいガラスの粉が目やのどに入って炎症を起こすなど、人体への被害もかなり懸念されます。
ただ、火山噴火の場合、1か月ほど前から予兆が現れるとされています。地震のように準備期間がまったくない、というわけではありません。
リスクをスケジューリングした上で長尺の目を
地殻変動期に入った21世紀の日本人は、海域で起きる「余震」と「三連動地震」、陸域で起きる「誘発地震」、活火山の「噴火」という四つを、自分の人生のスケジュールに入れなくてはならない、というのが本書の教え。それでも鎌田先生は決して悲観的ではありません。なぜなら、「日本人のDNAには、天災から生きのびる要素が入っている」と確信するからです。さらに、地震にも火山にも「恵み」の面が大きくあります。一時的に地震や噴火という災害を受ける以外の長い時間、われわれは豊富な地下水、温泉、優美な地形などの恵みを享受しています。
日本人に限らず、人類は何千年も「地震の巣」の上に好んで住み着いてきた歴史があります。いつ起きてもおかしくない災害への準備は大切ですが、長いスパンで自然現象を捉える見方を「長尺の目」として鎌田先生は提唱します。長尺の目を持つための古典として、本書ではプラトンやユクスキュル、中谷宇吉郎などの文章を紹介。いずれも、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」わたしたちを普遍的な知へ導いてくれます。
もう一つの提案は「ストックからフロー」へのシフト。膨大なエネルギーによって成り立っている文明生活が破綻しつつあることを警告しているのが「3・11」や今日のコロナ禍だというのは、誰もがひそかに思い当たっていることではないでしょうか。
地質学者と女優の対談を切り口とした本書は、不安を理解に変えてくれる妙薬。リスクへの備えが必要なすべての日本人にお勧めです。
<参考文献>
『首都直下地震と南海トラフ』(鎌田浩毅著、MdN新書)
https://shinsho.mdn.co.jp/books/3220903022/
<関連サイト>
鎌田浩毅先生のホームページ
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/~kamata/
『首都直下地震と南海トラフ』(鎌田浩毅著、MdN新書)
https://shinsho.mdn.co.jp/books/3220903022/
<関連サイト>
鎌田浩毅先生のホームページ
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/resilience/~kamata/
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