社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
毎日が“たのしく”なる! まほうの「しかけ」とは?
日常にあふれるいろいろな問題を、“たのしく”変えてくれる「しかけ」があることをご存知でしょうか。
[問 題]書類の整理ができない
「しかけ」並べたファイルボックスの側面に斜めの線を引く
[解 決]直線になるように並べ替えたくなる
[問 題]運動不足なのについエレベーターを使ってしまう
「しかけ」階段をピアノに見立てて音がでるようにする
[解 決]階段を使ってピアノの音を鳴らしたくなる
[問 題]トイレをきれいに使ってほしい
「しかけ」トイレの中に的をつける
[解 決]的を狙いたくなる
大阪大学大学院経済学研究科教授で大阪大学シカケラボを主催する松村真宏(まつむら・なおひろ)先生の『しかけは世界を変える!! 毎日がたのしくなる!まほうのしかけ』(徳間書店)には、小学生から“たのしく”「しかけ」に取り組むための「仕掛学」の理論と実践が、網羅的かつわかりやすく書かれています。
この筒こそが、「動物以外のものも見てほしい」という動物園スタッフの「しかけ」であり、松村先生に初めて「しかけ」の可能性に気づかせてくれた「しかけ」となりました。
そこから、松村先生は“人に気づかせることが重要。そのために「しかけ」をデザインすればいい”というブレイクスルーを得ます。さらに「しかけ」の事例を集めていくうちに、松村先生の提唱する「仕掛学(しかけがく)」誕生へとつながっていきます。
[問 題]歩道沿いの自転車置き場が乱雑になる
「しかけ」白い線を引く
[解 決]線にそって自転車を停めたくなる
(1)公平性:誰も損をしていない
(2)誘因性:つい線にそって自転車を停めたくなる
(3)目的の二重性:「しかけ」を設置する人の目的(解決したい課題)は、自転車置き場の整理・「しかけ」を使う人の目的(行動理由)は、誘因性による行動の結果
考えてみると、いくら正論をいわれたとしても、人はなかなか行動に移せないのではないでしょうか。そして、行動に移せなかった結果、それが問題になったりすると、たのしくない日常を作り出してしまいます。
しかし、別のアプローチで“たのしく”誘ってくれる「しかけ」があれば、自主的に行動に移すことにつながります。それこそが「しかけ」の役割であり、「しかけ」の効用といえます。
しかしながら並行して、「しかけ」を“たのしく”活用することで自主的な行動へと変換することができ、ひいては私たち自身で問題を解決できるようになる、その可能性を、松村先生は本書を通して示してくれています。
ただ、ここでひとつ注意点ですが、「しかけ」にはよい「しかけ」だけではなく、悪い「しかけ」があることも意識しておくといいということです。とはいえ、その区別は簡単です。“しかけられる側”が“しかける側”目的を知ったときに、「素晴らしい、一本取られた!」と笑顔になるのがよい「しかけ」、逆に「だまされた!もう二度と引っかからない!!」と不快にさせるのは悪い「しかけ」です。
つまり、よい「しかけ」はネタバレしても問題なく、むしろワクワクするためネタを知っても人に伝えたくなります。反対に悪い「しかけ」は、うしろめたい気持ちがあってネタバレを避ける「しかけ」といえます。
これは、「しかけ」の定義の一つである“公平性”からも大切な観点です。「しかけ」を見つけたり作ったりする際に、必ず心がけてほしいと思います。
大切なことですので繰り返しますが、気づいた人を“たのしく”させる「しかけ」が私たちの世界にはたくさんあります。そして、その「しかけ」は、誰でも見つけることも作ることもできるのです。
日常のいろいろな問題で困っている方は、ぜひ「しかけ」の視点に立って、毎日を“たのしく”変えてみてください。そのためのヒントが、本書にあふれているのです。
[問 題]書類の整理ができない
「しかけ」並べたファイルボックスの側面に斜めの線を引く
[解 決]直線になるように並べ替えたくなる
[問 題]運動不足なのについエレベーターを使ってしまう
「しかけ」階段をピアノに見立てて音がでるようにする
[解 決]階段を使ってピアノの音を鳴らしたくなる
[問 題]トイレをきれいに使ってほしい
「しかけ」トイレの中に的をつける
[解 決]的を狙いたくなる
大阪大学大学院経済学研究科教授で大阪大学シカケラボを主催する松村真宏(まつむら・なおひろ)先生の『しかけは世界を変える!! 毎日がたのしくなる!まほうのしかけ』(徳間書店)には、小学生から“たのしく”「しかけ」に取り組むための「仕掛学」の理論と実践が、網羅的かつわかりやすく書かれています。
「しかけ」への気づき・「仕掛学」の誕生
さかのぼること2006年の夏、人工知能の研究を進めていた松村先生は、研究に行き詰まりを感じていたそうです。そこで、ぶらりと遊びに行った大阪市にある天王寺動物園の「アジアの熱帯雨林」エリアで、ふと通路脇に設置された望遠鏡のような筒に気がつきます。穴があいているだけでレンズも入っていない筒をのぞいてみると、筒の先にゾウのうんちの模型が見えました。この筒こそが、「動物以外のものも見てほしい」という動物園スタッフの「しかけ」であり、松村先生に初めて「しかけ」の可能性に気づかせてくれた「しかけ」となりました。
そこから、松村先生は“人に気づかせることが重要。そのために「しかけ」をデザインすればいい”というブレイクスルーを得ます。さらに「しかけ」の事例を集めていくうちに、松村先生の提唱する「仕掛学(しかけがく)」誕生へとつながっていきます。
「しかけ」の定義と効用
では「しかけ」とはなにか。より具体的にどのようなモノであり、またどのような効用があるのでしょか。松村先生は「しかけ」の定義として、(1)公平性(2)誘因性(3)目的の二重性――をもつモノとしています。次の「しかけ」を例に、それぞれの特徴を具体的に見てみましょう。[問 題]歩道沿いの自転車置き場が乱雑になる
「しかけ」白い線を引く
[解 決]線にそって自転車を停めたくなる
(1)公平性:誰も損をしていない
(2)誘因性:つい線にそって自転車を停めたくなる
(3)目的の二重性:「しかけ」を設置する人の目的(解決したい課題)は、自転車置き場の整理・「しかけ」を使う人の目的(行動理由)は、誘因性による行動の結果
考えてみると、いくら正論をいわれたとしても、人はなかなか行動に移せないのではないでしょうか。そして、行動に移せなかった結果、それが問題になったりすると、たのしくない日常を作り出してしまいます。
しかし、別のアプローチで“たのしく”誘ってくれる「しかけ」があれば、自主的に行動に移すことにつながります。それこそが「しかけ」の役割であり、「しかけ」の効用といえます。
よい「しかけ」と悪い「しかけ」の見分け方
以上のように見ていくと、世界は「しかけ」にあふれていることがわかってきます。そして、「しかけ」が必要な対象者は多岐にわたることも見えてきます。そのうえで、「私たちが直面する問題の多くは私たち自身の行動が作り出している」と、松村先生は説きます。しかしながら並行して、「しかけ」を“たのしく”活用することで自主的な行動へと変換することができ、ひいては私たち自身で問題を解決できるようになる、その可能性を、松村先生は本書を通して示してくれています。
ただ、ここでひとつ注意点ですが、「しかけ」にはよい「しかけ」だけではなく、悪い「しかけ」があることも意識しておくといいということです。とはいえ、その区別は簡単です。“しかけられる側”が“しかける側”目的を知ったときに、「素晴らしい、一本取られた!」と笑顔になるのがよい「しかけ」、逆に「だまされた!もう二度と引っかからない!!」と不快にさせるのは悪い「しかけ」です。
つまり、よい「しかけ」はネタバレしても問題なく、むしろワクワクするためネタを知っても人に伝えたくなります。反対に悪い「しかけ」は、うしろめたい気持ちがあってネタバレを避ける「しかけ」といえます。
これは、「しかけ」の定義の一つである“公平性”からも大切な観点です。「しかけ」を見つけたり作ったりする際に、必ず心がけてほしいと思います。
「しかけ」で私たちの毎日を“たのしく”変える一冊
いかがですか。“たのしい”「しかけ」の可能性を、感じていただけたでしょうか。大切なことですので繰り返しますが、気づいた人を“たのしく”させる「しかけ」が私たちの世界にはたくさんあります。そして、その「しかけ」は、誰でも見つけることも作ることもできるのです。
日常のいろいろな問題で困っている方は、ぜひ「しかけ」の視点に立って、毎日を“たのしく”変えてみてください。そのためのヒントが、本書にあふれているのです。
<参考文献>
『しかけは世界を変える!! 毎日がたのしくなる!まほうのしかけ』 (松村真宏著、徳間書店)
https://www.tokuma.jp/book/b493701.html
<参考サイト>
大阪大学シカケラボ
https://mtmr.jp/ja/
『しかけは世界を変える!! 毎日がたのしくなる!まほうのしかけ』 (松村真宏著、徳間書店)
https://www.tokuma.jp/book/b493701.html
<参考サイト>
大阪大学シカケラボ
https://mtmr.jp/ja/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
国力がピークアウトする中国…習近平のレガシーとは?
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(6)習近平のレガシー
「時間は中国に有利」というのが中国の認識だが、中国の国力はすでに衰え始めているとの見方を提示した垂氏。また、台湾問題の解決が習近平主席のレガシーになり得るかだが、かつての香港返還問題を事例として、その可能性につ...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/10/16
人間とAIの本質的な違いは?記号接地から迫る理解の本質
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(5)AIに記号接地は可能か
昨今、めざましい発展を遂げているAI技術。流暢にチャットをやりとりする生成AIはしかし、本当の意味で使っている言葉を理解することができるのだろうか。言語学習の根本にある「記号接地」問題から、人間とAIの本質的な違いに...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/14
学力喪失と「人間の理解」の謎…今井むつみ先生に聞く
編集部ラジオ2025(24)「理解する」とはどういうこと?
今井むつみ先生が2024年秋に発刊された岩波新書『学力喪失――認知科学による回復への道筋』は、とても話題になった一冊です。今回、テンミニッツ・アカデミーでは、本書の内容について著者の今井先生にわかりやすくお話しいただ...
収録日:2025/09/29
追加日:2025/10/16
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
反知性主義が跋扈する現代社会。21世紀も四半世紀が過ぎ、知性で社会を理解しようとすればするほど葛藤が生まれるこの時代、日本人にとってはもう一度読み直すべき作家が夏目漱石ではないだろうか。実は1世紀以上前の明治の終...
収録日:2024/12/02
追加日:2025/03/02
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10