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実際人は何歳まで働いているのか?
人生100年時代、超高齢化社会、生涯現役時代、定年消滅社会などといわれるようになった昨今ですが、実際人は何歳まで働いているのでしょうか?
今回は、社会と年齢と働き方の関係について、考えてみたいと思います。
「生産年齢」とは、“生産活動ができる年齢”で、“通常は15歳以上65歳未満”を指します。
一昔前までは、生産年齢は働いている人の年齢は近似値とされてきました。したがって、生産年齢の最高年齢である64歳前後が、働いている人の最高年齢ともいえました。しかし、現在では、生産年齢より年長であっても、多くの人が働いています。
2021年1月、総務省統計局より発表された「労働力調査」(2020年平均)から、2020年平均の就業者数6,676万人のうち、生産年齢以上の年代である65歳以上の就業者数は906万人となっています(ちなみに、前年比から約14万人増加しています)。
同様に、「労働力調査」内の「年齢階級別就業率の推移」をみてみましょう。(2010年平均)と(2020年平均)は、以下のようになっています。
「年齢階級別就業率の推移」(2010年平均)
年齢:65~69歳・70~74歳・75歳以上
総計:36.4%・22.0%・8.3%
男性:46.8%・29.1%・13.4%
女性:26.9%・16.0%・5.1%
「年齢階級別就業率の推移」(2020年平均)
年齢:65~69歳・70~74歳・75歳以上
全体:49.6%・32.5%・10.4%
男性:60.0%・41.3%・16.0%
女性:39.9%・24.7%・6.8%
2020年の「年齢階級別就業率の推移」では、65~69歳の就業率は男性では60.0%、女性では39.9%。男女合わせた全体をみても、60代後半は約5割の人が働いていることや、75歳以上でも全体で約1割の人が働いていることがみえてきます。
そして、10年前の2010年のデータと比較してみると、年齢を重ねても働き続ける人が増えていることがわかります。
「健康寿命」とは、“ある年に生まれた人がその後生きることが期待される平均年数”である「平均寿命」に対し、“良好な健康状態で生きることが期待される平均年数”を指します。
厚生労働省が発表している「平均寿命と健康寿命の推移」は、以下のようになっています。
「平均寿命と健康寿命の推移」(男性)
西暦:平均寿命・健康寿命
2001年:78.07年・69.40年
2004年:78.64年・69.47年
2007年:79.19年・70.33年
2010年:79.55年・70.42年
2013年:80.21年・71.19年
2016年:80.98年・72.14年
「平均寿命と健康寿命の推移」(女性)
西暦:平均寿命・健康寿命
2001年:84.93年・72.65年
2004年:85.59年・72.69年
2007年:85.99年・73.36年
2010年:86.30年・73.62年
2013年:86.61年・74.21年
2016年:87.14年・74.79年
「年齢別の就業率の変化」と「健康寿命の推移」を照らし合わせてみると、健康寿命と“実際に”働いている年齢の相関関係がみえてきます。
もちろん、誰もが健康寿命=“実際に”働いている年齢とはいえません。しかし、超高齢化かつ生涯現役社会においては、多くの人が生涯にわたって健康で働き続けられることを望むことが予想されます。
しかしそれ以上に、“社会”もできるだけ多くの人(国民)に、生涯にわたって健康かつ働き続けることを求め、求められた個人がそうせざるを得ない状況になることによって、「健康寿命≒“実際に”働いている年齢」の伸長とならざるを得ない時代となるのかもしれません。
ただし、定年延長があったとしても、健康寿命や寿命そのものが延長された定年以上に延びたりすれば、働く年齢や“働きたい年齢”、さらには“働らかざるを得ない年齢”も、それ以上に延びることが予想されます。
そして、定年消滅社会や生涯現役時代の到来は、終身雇用や年功序列といった体制の崩壊とセットとなっています。世代や年齢の区別がない一方で考慮もされないような、ある意味でジェネレーションギャップよりも厳しい、「年齢」フリー社会となるのかもしれません。
しかしながら、生産年齢が伸長するということは、それだけ働くということが年齢に縛られない可能性を秘めていると考えることもできます。それは同時に、義務教育以降のすべての年代の人々が働く必要はあるけれども、“常に全力で働き続ける必要がない”ことや、“働き方と年齢を一般化も固定化もしなくてもよい”社会をつくっていけるともいえるのではないでしょうか。
現代社会は、一人ひとりの人生が長くなっています。持続可能な社会が望まれるように、社会を構成するすべての人々の健康的で不安のない生活が持続可能となるためにも、個人にも社会にもできるだけ負担がなく、かつ持続的な働き方が多様に実現できる社会が望まれています。
今回は、社会と年齢と働き方の関係について、考えてみたいと思います。
「生産年齢」以上で働いている人の割合は?
最初の質問です。皆さんは、「生産年齢」をご存知でしょうか。「生産年齢」とは、“生産活動ができる年齢”で、“通常は15歳以上65歳未満”を指します。
一昔前までは、生産年齢は働いている人の年齢は近似値とされてきました。したがって、生産年齢の最高年齢である64歳前後が、働いている人の最高年齢ともいえました。しかし、現在では、生産年齢より年長であっても、多くの人が働いています。
2021年1月、総務省統計局より発表された「労働力調査」(2020年平均)から、2020年平均の就業者数6,676万人のうち、生産年齢以上の年代である65歳以上の就業者数は906万人となっています(ちなみに、前年比から約14万人増加しています)。
同様に、「労働力調査」内の「年齢階級別就業率の推移」をみてみましょう。(2010年平均)と(2020年平均)は、以下のようになっています。
「年齢階級別就業率の推移」(2010年平均)
年齢:65~69歳・70~74歳・75歳以上
総計:36.4%・22.0%・8.3%
男性:46.8%・29.1%・13.4%
女性:26.9%・16.0%・5.1%
「年齢階級別就業率の推移」(2020年平均)
年齢:65~69歳・70~74歳・75歳以上
全体:49.6%・32.5%・10.4%
男性:60.0%・41.3%・16.0%
女性:39.9%・24.7%・6.8%
2020年の「年齢階級別就業率の推移」では、65~69歳の就業率は男性では60.0%、女性では39.9%。男女合わせた全体をみても、60代後半は約5割の人が働いていることや、75歳以上でも全体で約1割の人が働いていることがみえてきます。
そして、10年前の2010年のデータと比較してみると、年齢を重ねても働き続ける人が増えていることがわかります。
「健康寿命」≒“実際に”働いている年齢?
次の質問です。皆さんは、「健康寿命」をご存知でしょうか。「健康寿命」とは、“ある年に生まれた人がその後生きることが期待される平均年数”である「平均寿命」に対し、“良好な健康状態で生きることが期待される平均年数”を指します。
厚生労働省が発表している「平均寿命と健康寿命の推移」は、以下のようになっています。
「平均寿命と健康寿命の推移」(男性)
西暦:平均寿命・健康寿命
2001年:78.07年・69.40年
2004年:78.64年・69.47年
2007年:79.19年・70.33年
2010年:79.55年・70.42年
2013年:80.21年・71.19年
2016年:80.98年・72.14年
「平均寿命と健康寿命の推移」(女性)
西暦:平均寿命・健康寿命
2001年:84.93年・72.65年
2004年:85.59年・72.69年
2007年:85.99年・73.36年
2010年:86.30年・73.62年
2013年:86.61年・74.21年
2016年:87.14年・74.79年
「年齢別の就業率の変化」と「健康寿命の推移」を照らし合わせてみると、健康寿命と“実際に”働いている年齢の相関関係がみえてきます。
もちろん、誰もが健康寿命=“実際に”働いている年齢とはいえません。しかし、超高齢化かつ生涯現役社会においては、多くの人が生涯にわたって健康で働き続けられることを望むことが予想されます。
しかしそれ以上に、“社会”もできるだけ多くの人(国民)に、生涯にわたって健康かつ働き続けることを求め、求められた個人がそうせざるを得ない状況になることによって、「健康寿命≒“実際に”働いている年齢」の伸長とならざるを得ない時代となるのかもしれません。
「年齢」フリー社会の到来?
2021年4月、改正高年齢者雇用安定法が施行されました。企業は65歳までの雇用確保義務に加えて70歳までの就業確保が努力義務となり、70歳までの定年引き上げや定年制の廃止等の措置を講ずる努力義務が新設されるなど、政策も働く年齢の引き上げを推奨しています。さらに今後も、定年の延長が見込まれています。ただし、定年延長があったとしても、健康寿命や寿命そのものが延長された定年以上に延びたりすれば、働く年齢や“働きたい年齢”、さらには“働らかざるを得ない年齢”も、それ以上に延びることが予想されます。
そして、定年消滅社会や生涯現役時代の到来は、終身雇用や年功序列といった体制の崩壊とセットとなっています。世代や年齢の区別がない一方で考慮もされないような、ある意味でジェネレーションギャップよりも厳しい、「年齢」フリー社会となるのかもしれません。
しかしながら、生産年齢が伸長するということは、それだけ働くということが年齢に縛られない可能性を秘めていると考えることもできます。それは同時に、義務教育以降のすべての年代の人々が働く必要はあるけれども、“常に全力で働き続ける必要がない”ことや、“働き方と年齢を一般化も固定化もしなくてもよい”社会をつくっていけるともいえるのではないでしょうか。
現代社会は、一人ひとりの人生が長くなっています。持続可能な社会が望まれるように、社会を構成するすべての人々の健康的で不安のない生活が持続可能となるためにも、個人にも社会にもできるだけ負担がなく、かつ持続的な働き方が多様に実現できる社会が望まれています。
<参考文献・参考サイト>
・「特集 定年消滅 -70歳現役社会がやってくる-」『週刊東洋経済』(2020/10/17号、東洋経済新報社)
・『ジェネレーションフリーの社会』(北岡孝義著、CCCメディアハウス)
・『定年消滅時代をどう生きるか』(中原圭介著、講談社現代新書)
・「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の要約」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
・図表1-2-6 平均寿命と健康寿命の推移
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-06.html
・高年齢者雇用安定法 改正の概要 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694689.pdf
・「特集 定年消滅 -70歳現役社会がやってくる-」『週刊東洋経済』(2020/10/17号、東洋経済新報社)
・『ジェネレーションフリーの社会』(北岡孝義著、CCCメディアハウス)
・『定年消滅時代をどう生きるか』(中原圭介著、講談社現代新書)
・「労働力調査(基本集計)2020年(令和2年)平均結果の要約」
https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index1.pdf
・図表1-2-6 平均寿命と健康寿命の推移
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-06.html
・高年齢者雇用安定法 改正の概要 - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000694689.pdf
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