テンミニッツ・アカデミー|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツ・アカデミーとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.09.23

ドローンでピザが宅配される日

 東京・浅草の三社祭にドローンを飛ばして撮影すると示唆し逮捕された「ドローン少年」の騒動や、首相官邸に放射性物質の付いたドローンが落下した事件など、ネガティブな面ばかりが強調されがちなドローン。

 だが、無人航空機が小型化、低価格化したことで活用分野が次々と広がっている。ここではポジティブな面に着目してみよう。

 ドローンは空中から撮影する機能が注目されやすいが、そもそもドローン=空中撮影機ではなく、あくまでドローンは小型の無人航空機のこと。形状は一般的にローター(回転翼)を複数持つマルチコプターと呼ばれるものが多い。その用途は偵察、爆撃など軍事目的から、流通を始めとした商用目的まで幅広い。

 インターネット通販大手のアマゾンは2013年に「プライム・エアー」と名付けた輸送サービスの構想を発表。軽量の商品に限定されるものの、アマゾンが出荷した商品を注文から30分以内に届けるというものだ。

 宅配ピザチェーン・ドミノピザの英国法人も、2013年にドローンでピザを宅配するサービス「ドミコプター」の動画を公開し話題を呼んだ。どちらも法規制を筆頭に実用化へのハードルは高いが、導入されればドローンがグッと身近なものになるだろう。

 SNS世界最大手の米Facebookが開発したのは、インターネット接続サービスを提供するための巨大ドローン「Aquila」。
 ソーラーパネルで発電しながら約3カ月飛行することが可能で、インターネット環境が未整備の地域へ空からネット環境を届けることが狙いだという。言うなれば空飛ぶWi-fiスポットだ。
 こちらもまだ実用化の時期は明らかになっていないものの、世界の端から端までネット環境を広げようという同社の壮大な野望がはっきりと伝わってくる。

 災害時に活①日に用するという使い方もある。
 2015年9月は愛知県警がドローンを使った救助訓練を実施。震度7の地震が発生したという想定で、崩壊した建物内に取り残された人がいないか確認する用途などで使用した。
 警備大手のセコムはドローンを利用した警備サービスを2015年6月に開始。不審車両や不審人物を発見すると対象を撮影し、防犯に生かすという。

 医療分野での活用例もある。米国のベンチャー企業「Matternet」は発展途上国で医薬品の輸送を展開。道路が整備されていない地域でもドローンなら迅速に医薬品を運ぶことができる。1分の遅れが命取りになることもありうる医療の現場での需要は大きい。

 もちろん従来なかなか撮ることができなかった写真や映像を撮影できるという機能も見逃せない。地形的や気候など環境の問題で人間が入り込めない場所の撮影であったり、よりダイナミックなスポーツ中継にも生かせることだろう。

 米国際無人機協会は、2025年までに米国内だけでドローン市場規模は820億ドル(約9・8兆円)にまで拡大すると予想している。空を飛ぶ物体なだけに安全面の配慮は念入りにしなければならず実態に即した法整備が待たれるが、上に挙げた例を見るだけでも、新たな市場を作り出せる潜在能力を持っていることは間違いない。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
“社会人学習”できていますか? 『テンミニッツTV』 なら手軽に始められます。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,500本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由

数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に

世界では「創造性がどれくらい大事か」という問題意識が今、急激に高まっている。創造性とは全ての人にあり、偏差値などでは絶対に計れない、まさに無限軸の創造性のこと。そうした創造性を育む学びが「STEAM教育」である。最終...
収録日:2025/04/16
追加日:2025/09/18
中島さち子
ジャズピアニスト 数学研究者 STEAM 教育者 メディアアーティスト
2

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか

続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景

国際的に見て、政府の債務残高が大きい日本。その背景には、バブル崩壊後の財政赤字を取り戻せていないことがあった。その一方で、預金残高も高い日本。所得が低いのに預金が多い日本の謎を解説する。(全4話中第2話)
※...
収録日:2025/07/10
追加日:2025/09/17
養田功一郎
元三井住友DSアセットマネジメント執行役員 YODA LAB代表 金融・経済・歴史研究者
3

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長

経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力

人が成長していくために重要な経験学習。その学習サイクルを適切に回していくためには、「経験から学ぶ力」が必要になる。ではそこにはどのような要素があるのか。ストレッチ、リフレクション、エンジョイメントという3要素と、...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/17
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授
4

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴

「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率

日本の政治史を見る上で地理的条件は外せない。「島国」という、外圧から離れて安心をもたらす環境と、「山がち」という大きな権力が生まれにくく拡張しにくい風土である。特に日本の国土は韓国やバルカン半島よりも高い割合の...
収録日:2025/06/14
追加日:2025/09/15
片山杜秀
慶應義塾大学法学部教授 音楽評論家
5

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか

外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い

外交とは国益を最大化しなければいけないのだが……。35年にもわたる外交官経験を持つ小原氏が8年がかりで書き上げた著書『外交とは何か 不戦不敗の要諦』(中公新書)。小原氏曰く、外交とは「つかみどころのないほど裾野が広い...
収録日:2025/04/15
追加日:2025/09/05
小原雅博
東京大学名誉教授