社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
新しい幸福論!話題の「アドラー心理学」とは?
話題のアドラー心理学、そのキッカケは「勇気の二部作」
学校や職場の成績、スタイルやファッションなど、まわりの人との比較で悩んでしまうことはありませんか?ひとときのKYという言葉に象徴されるように、周囲の空気を読まなければならないストレスなど、悩ましい問題の多くは対人関係に帰着します。人から認められたいという気持ちは、社会的な動物である人間の根本ともいえる心情です。しかし、人の目を気にするあまり本来の自分を見失っていく、現代社会においてはそんな風に精神を病んでしまうことが少なくありません。
人づきあいから自由になりたい、他人の目を気にすることなく生活したい、空気を読むことなく過ごしたいという同時代的な悩みとシンクロするように、「トラウマなど存在しない」「嫌われる勇気を」「性格は変えられる」といった、これまでと違った視点からの幸福論を掲げたアドラー心理学が静かなブームとなっています。
そのキッカケは、哲学者・岸見一郎さんと編集者・古賀史健さんによる『嫌われる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え』という著作になります。
2013年12月から版を重ね、日韓で100万部を売り上げ、「勇気の二部作」完結編に当たる『幸せになる勇気―自己啓発の源流「アドラー」の教え<2>』は2016年2月に上梓されました。書店でのコーナー展開や、NHKの「100分de名著」でアドラーの『人生の意味の心理学』が取り上げられたことから、ご存じの方も多いのではないでしょうか。
「どうすれば幸福になれるのか」「いかにして生きていけばいいのか」
心理学というと、フロイトやユングが思い浮かびますが、アドラーは、第一次世界大戦の戦争体験などを通して、人間の心理の本質へ迫るべく、フロイトともに活躍した心理学者です。アドラーは、「劣等感の克服」を重視し、フロイトとは真逆のアプローチで相談者の悩みを解決するよう考えます。フロイトとは相反する考えに至り、また、ライバル視されたことから、アドラーはフロイトのもとを去り、「個人心理学会」という新しい研究グループをつくります。心理学者というと専門的で難しい言葉に辟易とさせられたり、騙されているのではと錯覚する印象がありますが、アドラーは違いました。相談者に対して、また、講演においても、難解な専門用語をできる限り使わず、「どうすれば幸福になれるのか」「いかにして生きていけばいいのか」など、具体的なイメージでシンプルに伝える努力を惜しまなかったようです。
なにか問題が起きたら、その原因を探るのがフロイトに代表される心理学のアプローチです。原因を取り除くことで問題が解決できるという考えに対して、アドラーの心理学では、問題に対して、それはどんな目的にもとづいているのかを起点として問います。
たとえば、「モテない=恋人がいない」という悩み。常識的には、「容姿」や「性格」を原因にするかもしれません。アドラーは、「フラれるとキズつくことをさけるという目的」のために、「あえて告白しない」から「モテない」というように考えます。
私たちの考え方や行動は、どのような目的に向かっているのかによって変わってきます。「本当はどんな目的のためにこの行動をしているのかな?」「どうやったら、うまくいくかな?」と問いかけてみると、その考え方や行動の本来の目的を再発見する手がかりになります。
こんな時代だからこそ、常識的な見方やとらえ方から自らを解放し、アドラー心理学の基本的な考えかたを学び、幸せに生きる方法をシンプルに探ってみるのはいかがでしょう。
<参考文献>
・『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
・『幸せになる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
・『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
・『幸せになる勇気』(岸見一郎・古賀史健著 ダイヤモンド社)
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは
地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題
国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか
第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ
反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
遍歴とアバター…多様な仏、多様な菩薩が変容する面白さ
おもしろき『法華経』の世界(5)遍歴するアバター
『銀河鉄道の夜』の著者・宮沢賢治にとってもそうだが、『法華経』の重要なテーマは「遍歴」であると考えられる。遍歴や修行の旅は、仏教的には方便を用いて悟りに向かうことだが、『大日経』住心品には悟りと大悲こそが究境と...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/06/29
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24