●「明るく元気に、大きな声で」話すことが人間力をつける
皆さん、こんにちは。今回は、「明るく元気に、大きな声で」ということを、人間力をつけるという意味で説明させていただきます。
私の大好きな経営者の一人に、エイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄氏がいらっしゃいます。澤田氏には本当にさまざまなことで応援していただきました。私の方は全然恩返しができていないのですが、恩返しできることを生涯目指して挑戦しています。
「明るく元気に、大きな声で」ということは、多くの方が似たようなことをおっしゃっていますが、澤田氏がエイチ・アイ・エスを通じてハウステンボスを買収して再建に乗り出した際に、まずこれを実践したと伺っています。
また、明るく元気に大きな声でということは、私自身も昔から言われ続けたことでもあります。私はもともと暗記力も理解力もなく、要するに人より劣っていると思っていたので、大変暗い子どもでした。ですから、明るく元気に大きな声で話すことは、私にとっては結構な挑戦でした。そもそも、私は人前で話すのが大の苦手でした。ですから、今皆さんの前でお話しするということ自体が、奇跡だとしか言いようがありません。実は、前は声が震えてしまうことや、脂汗が出てきて途中でしゃべれなくなることも、往々にしてありました。
●浜口氏の挑戦:『仕事のルール』の出版
そんな私が話をするきっかけになったのは、本を出版したことです。私は以前、『仕事のルール』という本を書くことに挑戦しました。私には国語力がないので、本を書けばそれを乗り越えたことになるかと思い、挑戦し始めました。
それで出版社を回っていたのですが、どの出版社からも、あなたはすでに本を書いたことがあるのですか、と聞かれました。それに対して、ありませんと答えるのですが、すると、一冊でも書いてから来てくださいと言われました。これは本当に鶏と卵のようなものでして、すでに本を書いていないと、どこからも相手にされませんでした。
その時、私はビジネス書を出している日本中の約200の出版社のリストを作り、大手から順番に回っていきました。全部門前払いだったのですが、33社目に伺った明日香出版社というビジネス書の出版社とご縁がありました。この時は、企画書を三つほど持っていったのですが、一瞬にして、これは売れませんと全て却下されてしまいました。
しかしながら、それで帰ろうとした時に、「浜口さんは面白いバックグラウンドを持っていますね」と言われました。要するに、こんなに変わった経歴の人は見たことがないということです。
私は、国語も英語も勉強ができない中、アメリカに行きました。そこで、世界最大の会計事務所兼コンサルティング会社に入って、マネージャーになり、シニアマネージャー、それから、ディレクターになりました。そこで10年間努めて独立して、国際経営コンサルタントとして世界中を飛び回っていました。特に勉強が苦手でしたが、結果的にはアメリカのビジネススクールでMBAを取り、博士課程まで出ました。このことは、ある意味で、仕事の仕方にも通じるのではないかということで、『仕事のルール』という本を書かせていただくことになりました。
●ベストセラーになった『仕事のルール』
そうしたら、その本が、30万部近い部数が売れて、ビジネス書のカテゴリーでベストセラーになりました。それがきっかけとなって、いろいろな講演に呼ばれました。特に忘れられないものが、私が非常に尊敬している起業家である千本倖生氏から講演に呼ばれたことです。千本氏は、今はソフトバンクに買収されましたが、イー・アクセスという会社の創業者の方です。
『仕事のルール』という本は、本来は社会人一年目の新入社員を対象にして書いたつもりの本でした。なぜならば、当時は私自身が会社を立ち上げたところで、入ってきた新入社員があまりにも仕事の基本ができていませんでした。それで毎日怒っていたのですが、怒り疲れてしまい、書面にして渡そうと考えました。そこで、仕事の基本を100ほどのルールにして、読みなさいということでそれを新入社員に渡しました。その仕事のルールを101個にリスト化して出版したものが『仕事のルール』です。
このルールは、自分自身の変わった体験に基づくものでした。またこれは、仕事に使える、生き抜くポイントになる、と思いました。なぜならば、私は国語力がないので難しいことは書けず、誰にでも分かることしか書けない。しかしそれは逆に、誰にでも分かるから読みやすかったということで、ベストセラーになったそうです。
面白かったのは、ビジネス書の売上ベストテンの中で、絶対に1位や2位にはならなかったのですが、半年の間、必ず7位や8位といった順位のまま残っていたことです。...
(浜口直太氏著、明日香出版社)