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1人の人間が心の底から信じたことを書いた本の力

読書と人生(2)「本当のことが書いてある本」の価値

概要・テキスト
本は「本当のことが書いてある本」を読むべきだという。つまり、ある1人の人間が、本当に信じたことを書いた本を読め、ということである。ヒトラーの『わが闘争』にせよ、マルクスの『資本論』にせよ、あれほどの人を巻き込んだということは、それだけの力が内在しているということなのである。それをあえて看過するのは、歴史に押しつぶされた「文明の疲弊」である。(全10話中第2話)
※インタビュアー:神藏孝之(10MTVオピニオン論説主幹)
時間:09:40
収録日:2019/05/14
追加日:2019/08/23
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≪全文≫

●「1人の人間が本当に信じたことを書いた本」が重要


執行 本は、「本当の本」を読まなければいけません。ここが今の人にとって一番厳しいところです。「いい本」を読むかどうかではなく、本は「本当のことが書いてある本」を読まなければいけません。「本当のこと」に関しては、どんな意見でもいいから読んで取り上げなければダメです。

 今の人はわりあいセントラルドグマ(揺るぎない絶対的な考え)があり、今の人間観に合っているものしか読みません。僕がよく例に出すのが、ヒトラーの『わが闘争』です。

 内容がいいとか、肯定しているという話ではなく、大事なのは「言いたいことが書いてある」ということです。これが重大なことなのです。

 この本は牢屋の中で口述筆記したものですが、ヒトラーの政治信条が全部書いてあります。その内容を、いいと言っているわけではありません。しかし人間というものは、とくにインテリには嘘つきが多い。当時のドイツのインテリは、みんな『わが闘争』を読んでいました。ただ政治家の言うことだから、どうせ嘘だろうと思っていた。政権をとるため、アジテーターで書いていると思っていたのです。

 だからドイツの有能な学者たちを含めて、多くの人がヒトラーを支持して、選挙で総統にまでしてしまった。ところが書いてあることは、彼の本心だった。龍の尻尾を踏んでしまったのです。

―― 自分たちがそうだから相手もそうだと思っていたけれど、ヒトラーは真剣に書いていたのですね。そして言ったとおりに行動した。

執行 今の人はヒトラーが嫌いだから、みんなあの本を嫌いますが、僕が言いたい読書論は、違います。言ったことが間違っているかどうかではなく、「ヒトラーという1人の人間が本当に信じ、思ったことを書いてある本は価値がある」という話です。

 聖書に価値があるのも、キリストという人間が、本当に信じていることを話し、それを聞いていた人が筆記したからです。だから聖書は価値がある。それがわからないと、読書の価値はわかりません。

 ある1人の男が、われわれの前にこの地球上で生きた1人の人間が、本当に信じたことを書いている本だということが重要なのです。

―― 生き様そのものですからね。

執行 そうです。それを受け入れるか受け入れないかは、また別問題。これは全然違う問題です。


●理論とは「魂」である


―― ...
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