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残念ながら、東京裁判史観は過去の問題ではなく、現在進行形で続いている現代の問題である。
たとえば平成18年(2006)、小泉純一郎元首相が靖国神社を参拝したが、当時の経済同友会は首相に靖国参拝を自粛するよう求めた提言を行なっている。
その幹事会の中で、こういう発言があった。
〈靖国神社も絡め、東京裁判は妥当だったかという話もあるが、戦勝国の裁判が間違っていたと学んだとしても、六十年前には戻れない〉
(平成18年〈2006〉6月8日付、産経新聞)
だが、戻ることができる。
いや、戻らなければ、シナや韓国が日本に仕掛けている歴史戦争に負けてしまう。その大きなポイントになる一つが、先のマッカーサー証言である。
歴史とは非常に面白いもので、ある出来事が起きてから6、70年ぐらい経つと新しい史料が数多く出てきて、思わぬ方向に展開していくものである。
たとえば米国では、日米開戦当時の米大統領であるルーズベルトに対する批判もかなりある。ジョージ・ナッシュというアメリカの歴史家が、これまで非公開にされていたフーバー元米大統領のメモなどをまとめた『FREEDOM BETRAYED(裏切られた自由)』という本を発刊した。
フーバーはルーズベルトの前の大統領で、同書によれば、彼はルーズベルトを「対ドイツ参戦の口実として、日本を対米戦争に追い込む陰謀を図った『狂気の男』」と批判したという(2011年12月8日付、産経新聞朝刊)。同記事は、「マッカーサーも、『ルーズベルトは四一年夏に日本側が模索した近衛文麿首相との日米首脳会談を行い、戦争回避の努力をすべきだった』と批判していた」と指摘している。
アメリカで最も尊敬されている歴史家と呼ばれたチャールズ・A・ビーアドの著書(邦題『ルーズベルトの責任──日米戦争はなぜ始まったか』〈藤原書店〉)も、昭和23年(1948)に出版されてまもなく禁書になっていた。
ところが、戦後も半世紀以上が経つと、こういう本が出版されるようになってくる。同様にマッカーサー証言も、再びそれを世に出せば、少なからぬ人たちが反応してくれるような土台ができつつあるといってもいいだろう。
歴史は取り戻すことができるし、70年前に戻ることもできる。戻らなければ、日本の精神的な再建はあろうはずがない。戻らなければならないのである...
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概要・テキスト
東京裁判史観は過去の問題ではなく、現在進行形で続いている現代の問題である。平成18年、経済同友会は小泉首相に靖国参拝を自粛するよう求めた提言を行なっているが、その幹事会の中で、「戦勝国の裁判が間違っていたと学んだとしても、六十年前には戻れない」と発言している。だが、歴史は取り戻すことができるし、戻らなければ、日本の精神的な再建はあろうはずがない。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第七章・第18回。※本項には該当映像がありません。
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(チャールズ・A・ビーアド著、藤原書店)