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DATE/ 2017.05.31

全国で一番「魅力的な街」はどこなのか?

 株式会社リクルート住まいカンパニーが毎年発表している「みんなが選んだ住みたい街ランキング」。今回は、より掘り下げて、「住みたい」と「住んでよかった」街から「魅力的な」街にも迫ってみましょう。

神奈川や埼玉で人気の街と、その理由は?

 東京都以外でも「住みたい街」はたくさんあります。神奈川県の街をあげる人は神奈川県民だけでなく、埼玉県民の10位に「横浜」が挙げられたのは、副都心線により東急東横線と東武東上線が結ばれた効果が浸透したせいでしょうか。

 総合ランキングを見ると、「横浜」3位、「武蔵小杉」6位が光るほか、「鎌倉」14位、「藤沢」「たまプラーザ」22位、「川崎」30位と健闘しています。また、女性では神奈川県央の「海老名」に住みたい人も27位です。

 「横浜」には、東京とは違う雰囲気や利便性を求める層からの人気が集中。海があり、夜景がきれいで、文化的というロケーションの魅力は、男性より女性に響くようです。また、子育てファミリーにとって、横浜市が推進する「子育て支援」は何よりの魅力。「たまプラーザ」も横浜市内ながら、渋谷や大手町へ直行できるアクセス、雰囲気のよい街並みが人気です。

 川崎市で人気が高いのは「武蔵小杉」。JR3路線、東急2路線のターミナル駅を降りると、高級タワーマンションが乱立する風景は圧巻! 複合ショッピングセンター・グランツリー武蔵小杉には感度の高い子育てファミリーやDINKSが集まり、「ムサコ・マダム」の名も生まれました。少子高齢化を忘れさせる街並みに勢いが溢れています。

 埼玉県で上位に名前が挙がっているのは、「大宮」と「浦和」。大宮は北陸新幹線や北海道新幹線にアクセスできる交通の利便性が何よりの魅力。浦和は、2015年11月に駅ナカにアトレがオープンし、拡張工事が続いています。また、上野東京ラインの開通以来、東京駅や品川駅へのアクセスが向上しました。さいたま市は、政令指定都市20市中「幸福度」ランキング(日本総研編集、2016年版)総合1位にも入っています。

でも、実際に「東京」に住める可能性はあるのか?

 総合ランキングで9位にまで浮上したのが「東京」。しかし、東京駅のお膝元で、丸の内や銀座に歩いていけるような「住まい」なんて、本当にあるのでしょうか?

 調べてみると、東京駅の東南方面からは「八丁堀」や「茅場町」、「水天宮前」近辺であれば、20分程度で徒歩通勤が可能です。30分かける余裕があれば、佃大橋を渡って「月島」周辺から歩くこともできます。

 北側はさらに住める可能性の高い(家賃がそこまでべらぼうではない)エリアが広がっています。「東日本橋」「岩本町」「神田」「秋葉原」「御茶ノ水」「神保町」など、すべて「東京」駅へ徒歩圏内と言えるのです。

 また、中央区や文京区はシェアハウスが盛んに行なわれている土地柄。身軽なシングルの人なら、街の住み心地を確かめてみるという手もあります。

本当に住んで幸せな街「官能都市」とは?

 「住みたい街」と「住んでよかった街」の違いを出発点に「Sensuous City[官能都市]」というコンセプトを導き出して、新たなランキングを実施しているのが、LIFULL HOME'S 総研です。

 「センシュアス・シティ」調査では、街の魅力を「関係性:他者との関係に生きる都市」と「身体性:五感で感じる都市」に分け、八つの指標を探るため、実際の経験を問うアンケートを行っています。
 
 まず、「関係性:他者との関係に生きる都市」では、
1. 共同体に帰属している(お寺や神社にお参りをした。馴染みの飲み屋で店主や常連客と盛り上がったなど)。
2. 匿名性がある(カフェやバーで一人自分だけの時間を楽しんだ。平日の昼間から外で酒を飲んだなど)。
3. ロマンスがある(デートをした。ナンパをした/されたなど)。
4. 機会がある(刺激的で面白い人たちが集まるイベント、パーティに参加した。ためになるイベントやセミナー・市民講座に参加したなど)
が問われます。

 「身体性:五感で感じる都市」では、
5. 食文化があること(庶民的な店でうまい料理やお酒を楽しんだ。地元でとれる食材を使った料理を食べたなど)。
6. 街を感じられること(街の風景をゆっくり眺めた。公園や路上で演奏やパフォーマンスしている人を見たなど)。
7. 自然を感じること(木陰で心地よい風を感じた。公園や水辺で緑や水に直接触れたなど)。
8. 歩けること(通りで遊ぶ子供たちの声を聞いた。外で思い切り身体を動かして汗をかいたなど)
を基準として、答えを求めています。

日本で一番の「官能都市」は東京都文京区!

 この指標に基づいた調査は、2015年3月23~29日に、全国の都道府県庁所在都市、および左記以外の政令指定都市に居住する20~64歳までの男女1万8300名を対象として行われました。結果は「幸福度」「満足度」「寛容度」などを表すものとして、新書にもなっています。

順位 市区名 センシュアス度スコア
   突出する指標

1位 東京都文京区 608.0 共同体に帰属している(1位)
2位 大阪市北区  566.5 ロマンスがある(1位)
3位 武蔵野市   550.4 街を感じる(1位)
4位 東京都目黒区 548.6 ロマンスがある(3位)
5位 大阪市西区  530.1 匿名性がある(1位)
6位 東京都台東区 525.9 機会がある(3位)
(※1位は大阪市北区、2位は東京都文京区)
7位 大阪市中央区 525.4 匿名性がある(2位)
8位 金沢市    515.0 食文化が豊か(1位)
9位 東京都品川区 508.7 街を感じる(6位)
10位 東京都港区  488.6 匿名性がある(6位)

 ちなみに「自然を感じる」街の1位は「あきる野市」、「歩ける」街の1位は「東京都文京区」でした。ご自分がどういう点に「住みやすさ」を感じるのかを研究してみると、住まい選びの参考になりそうですね。

<参考文献・参考サイト>
『本当に住んで幸せな街 全国「官能都市」ランキング』(島原万丈+HOME'S総研著・光文社新書)
・SUUMO住みたい街ランキング2017 関東版
https://www.recruit-sumai.co.jp/press/upload/sumitaimachi_2017_kanto.pdf
・Sensuous City[官能都市]
http://www.homes.co.jp/search/assets/doc/default/edit/souken/PDF2015/sensuous_city_all.pdf
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