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AIで消える仕事以上にAIは仕事を生み出すって本当?
AIが人間の知能を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)が近いと言われ、大きな議論を呼んでいます。シンギュラリティが訪れずとも、人間の仕事がAIによって徐々に奪われていくことに多くの人が危機感を持っています。
他方、「AIで消える仕事以上に、AIが仕事を生み出す」という人もいます。これはいったいどういうことなのか、その真相を調べてみました。
ITmedia エンタープライズでは、「2019年にかけては、AIが生む仕事よりもAIによって消える仕事が多くなるが、2020年にはこの不足分を補って余りある数の仕事をAIが創出すると、Gartnerは確信している」という発言を紹介しています。ウィリス氏はさらに「2021年には、AIによって2兆9000億ドル規模の経済価値と62億時間相当の労働生産性が生み出される」と明言。Gartner(ガートナー)は「AIが主体なのではなく、あくまで人の仕事をAIが補完した形になると考えている」のだそうです。
他方、「医療や教育といった一部の業界では、仕事がなくなることはないだろう」と指摘しています。
医療と教育の未来について、マツコロイドの開発者としてよく知られているアンドロイド研究の第一人者・石黒浩氏は、ウィリス氏とは異なる意見を提示しています。
ダイヤモンドオンラインの記事において「医師の仕事は決まりに沿ったルーティンワーク」であり、「AIの進化によって、彼らは職場を追われるか、給与がみるみるうちに落ちていくかもしれない」と述べているのです。
ビジネス+ITの記事では、石黒氏はウィリス氏と同様、いかにAIと共存するのかに触れ、「こうした問題にも解決の糸口はあり、「一つは教育により、誰でも技術を使えるようにすること、そしてもう一つは、ロボットと人間の融合が進むことで、教育を経ずに、直接人間の能力を向上させるようにすることだ」と述べています。
その根拠としてAIの「フレーム問題」を挙げています。これは簡単に言うと「人工知能は自分で問題を作り出せない」ということです。ここにこそ、人間とAIの大きな違い、人間の独自性があるのです。
AI時代に求められるのは、問いを生み出す力です。記事のなかで、ゲームデザイナーの山本貴光氏は、だから今こそ哲学が活用できると指摘しています。なぜなら、「哲学の仕事は問いを作ること」だからです。「ものの見方を変えること」とも言い換えることができます。
出版界において哲学的要素がふんだんに盛り込まれた『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社)が大ベストセラーとなったり、新書分野で佐藤優現象といわれるほど佐藤氏の哲学に関する書籍が売れているのは、AIに対する潜在的な危機感の表れなのかもしれません。
AIと雇用については今後もさまざまな情報が飛び交うと予想されますが、雇用が減る、増えるといった情報に踊らされるのではなく、「問いを生み出す力」を地道に磨いていくことが最善の対策になるでしょう。
他方、「AIで消える仕事以上に、AIが仕事を生み出す」という人もいます。これはいったいどういうことなのか、その真相を調べてみました。
AIは230万の雇用を創出する
日経SYSTEMSの記事によると、米国の業界最大規模のICTアドバイザリ企業ガートナー(Gartner)のシニア・リサーチ委員会の委員長を務めるデイヴィッド・ウィリス氏(バイスプレジデント兼最上級アナリスト)は、「AIは180万人の仕事を奪うが230万の雇用を創出する」と述べました。ITmedia エンタープライズでは、「2019年にかけては、AIが生む仕事よりもAIによって消える仕事が多くなるが、2020年にはこの不足分を補って余りある数の仕事をAIが創出すると、Gartnerは確信している」という発言を紹介しています。ウィリス氏はさらに「2021年には、AIによって2兆9000億ドル規模の経済価値と62億時間相当の労働生産性が生み出される」と明言。Gartner(ガートナー)は「AIが主体なのではなく、あくまで人の仕事をAIが補完した形になると考えている」のだそうです。
消える仕事と残る仕事
ただし、「AIによって消える仕事」があることを忘れてはなりません。ウィリス氏は「実際にAIが脅威となる仕事はある。事務、銀行窓口、そのほか一部のホワイトカラーの仕事はなくなるだろうと考えている」。つまり、「いわゆる“事務仕事”は消滅していく」というわけです。他方、「医療や教育といった一部の業界では、仕事がなくなることはないだろう」と指摘しています。
医療と教育の未来について、マツコロイドの開発者としてよく知られているアンドロイド研究の第一人者・石黒浩氏は、ウィリス氏とは異なる意見を提示しています。
ダイヤモンドオンラインの記事において「医師の仕事は決まりに沿ったルーティンワーク」であり、「AIの進化によって、彼らは職場を追われるか、給与がみるみるうちに落ちていくかもしれない」と述べているのです。
教師は人間の仕事として残る可能性がきわめて高い
教師については石黒氏もウィリス氏と同意見です。「人に何を教えればいいのか、どうやって興味を持たせればいいのか、といった問題は極めて複雑で、簡単に自動化できないのです。少なくとも医学や法学に比べて自動化が難しい分野だと断言できます」とし、「医師と教師の地位はいずれ逆転しかねない」とも発言しています。ビジネス+ITの記事では、石黒氏はウィリス氏と同様、いかにAIと共存するのかに触れ、「こうした問題にも解決の糸口はあり、「一つは教育により、誰でも技術を使えるようにすること、そしてもう一つは、ロボットと人間の融合が進むことで、教育を経ずに、直接人間の能力を向上させるようにすることだ」と述べています。
AI時代に求められるのは哲学の力
FUZEの「哲学は人工知能の時代を生き抜くサバイバルキット:鼎談 三宅陽一郎×大塚英樹×山本貴光」という記事では、ゲームAI開発者の三宅洋一郎氏がシンギュラリティについて「職業が無くなるとか無くならないといった議論はナンセンス」と述べています。そして「実際には自分の仕事の何割かが人工知能に置き換わるといった話になるはず」としています。その根拠としてAIの「フレーム問題」を挙げています。これは簡単に言うと「人工知能は自分で問題を作り出せない」ということです。ここにこそ、人間とAIの大きな違い、人間の独自性があるのです。
AI時代に求められるのは、問いを生み出す力です。記事のなかで、ゲームデザイナーの山本貴光氏は、だから今こそ哲学が活用できると指摘しています。なぜなら、「哲学の仕事は問いを作ること」だからです。「ものの見方を変えること」とも言い換えることができます。
出版界において哲学的要素がふんだんに盛り込まれた『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社)が大ベストセラーとなったり、新書分野で佐藤優現象といわれるほど佐藤氏の哲学に関する書籍が売れているのは、AIに対する潜在的な危機感の表れなのかもしれません。
AIと雇用については今後もさまざまな情報が飛び交うと予想されますが、雇用が減る、増えるといった情報に踊らされるのではなく、「問いを生み出す力」を地道に磨いていくことが最善の対策になるでしょう。
<参考サイト>
・日経SYSTEMS:「AIは180万人の仕事を奪うが230万の雇用を創出する」、米ガートナーVP
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/103102567/
・ITmediaエンタープライズ:2020年、AIによって消える以上の仕事を“AIが創出”する??ガートナーが説く、その根拠は
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171106-00000034-zdn_ep-sci
・ダイヤモンドオンライン:医師と教師の地位はいずれ逆転しかねない
http://diamond.jp/articles/-/126041?page=4
・ビジネス+IT:阪大 石黒浩教授など各国のAI権威が語る「人工知能の深淵」
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34177#head2
・fuze:哲学は人工知能の時代を生き抜くサバイバルキット:鼎談 三宅陽一郎×大塚英樹×山本貴光
https://www.fuze.dj/2016/09/ai-philosophy5.html
・日経SYSTEMS:「AIは180万人の仕事を奪うが230万の雇用を創出する」、米ガートナーVP
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/103102567/
・ITmediaエンタープライズ:2020年、AIによって消える以上の仕事を“AIが創出”する??ガートナーが説く、その根拠は
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171106-00000034-zdn_ep-sci
・ダイヤモンドオンライン:医師と教師の地位はいずれ逆転しかねない
http://diamond.jp/articles/-/126041?page=4
・ビジネス+IT:阪大 石黒浩教授など各国のAI権威が語る「人工知能の深淵」
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34177#head2
・fuze:哲学は人工知能の時代を生き抜くサバイバルキット:鼎談 三宅陽一郎×大塚英樹×山本貴光
https://www.fuze.dj/2016/09/ai-philosophy5.html
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