テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.02.09

大賞はあの会社!「ブラック企業大賞」受賞企業

 2019年12月23日、第8回となる「ブラック企業大賞」が発表され、都内で授賞式とシンポジウムが開かれました。2019年度の大賞は三菱電機株式会社(メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社)に決定。ほかの受賞企業は以下のとおりです。

・特別賞:株式会社電通、株式会社セブンーイレブン・ジャパン社
・#MeToo賞:長崎市
・ウェブ投票賞:楽天株式会社

大賞に選ばれた理由

 2017年末、メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社では、当時40代の技術者が自死。2019年10月に但馬労働基準監督署(兵庫県豊岡市)によって長時間労働による労災であると認定されたことが報道されました。

 三菱電機グループでは、2014年以降、社員が自死したり精神障害を発症したケースが3名明らかになっています。このような複数の過労自死を出した大企業の子会社において、新たな過労自死が発生していることから、三菱電機及びその子会社である同社が注目されたという次第。

 メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社は、福岡市にある三菱電機パワーデバイス製作所内に本社を置く三菱電機の子会社で役員の過半数は三菱電機の社員であることから、2018年に続いての三菱電機株式会社の大賞受賞となりました。

変わらない企業体質

 特別賞を受賞した株式会社電通。2019年9月、2018年の社員の違法残業や、残業時間の上限を定める労使協定(36協定)の違法な延長などを指摘され、労働基準法と労働安全衛生法に違反したとして三田労働基準監督署から是正勧告を受けたことが明らかになりました。「ブラック企業大賞2016」の大賞を受賞した反省はなく、労基法違反の有罪判決を受け、社会的にも大きな批判にさらされているにもかかわらず、再び複数の違法行為で労基署から是正勧告を受けたという悪質性はもっとしられてもよいでしょう。

 特別賞は株式会社セブン‐イレブン・ジャパンにも。2019年12月、全国のフランチャイズ加盟店から「代行」して支払っていたアルバイト・パートらの残業代の一部が少なくとも1978年から未払いだったことを公表しました。対象となるのは本部にデータが残る2012年3月以降だけで8129店の計3万405人、未払い額は遅延損害金を含めて4億9000万円!低賃金にあえぐ非正規労働者の賃金を永年にわたり搾取し、その事実を隠蔽したことの重大性に加え、対加盟店の関係でも依然多くの問題を抱える状況は企業体質の問題として糾弾されてしかるべきでしょう。

世間の厳しい評価

 #MeToo賞を受賞した長崎市、ウェブ投票賞を受賞した楽天株式会社は、時勢を得た注目ポイントとして興味深いです。

 長崎市は、2007年7月、原爆祈念式典に向けての取材にあたる女性記者に同市の原爆被曝対策部長(当時)が性暴力をふるうという事件が発端。当該部長の自殺によって、事件の調査が加害者の主張のみを聴取するにとどまったまま終了。同市は被害者への謝罪もなく、2014年の日本弁護士連合会による人権侵害勧告にも応じないことから、2019年4月、被害者は損害賠償を求めて同市を提訴という事態へ。世界的に#MeToo運動が広がる一方で、同じく世界に知られる平和都市である長崎市が被害者への謝罪も救済もしていないことからの受賞となりました。

 楽天株式会社は、2016年6月、当時、社員だった男性が受けたパワハラが発端。プロ野球球団を運営するような大手企業において、しかも会議中に暴行事件が発生するなどという事案に注目が集まっての受賞でした。

ブラック企業に命を奪われたくなければ、労働環境を要チェック

 今回、大賞特別賞に漏れたノミネート企業は以下の4社ですが、ブラックであることにかわりはありません。

・KDDI株式会社
 サービス残業からの20代社員の自死、同社によって残業代を搾取された従業員の数や金額の大きさ、日本を代表する企業がこうした不祥事を長年にわたり隠蔽してきた行為の重さを考慮してノミネート。

・株式会社ロピア
 従業員の過失から、解雇の撤回などを求めた裁判から発覚した、パワハラ体質と残業代が支払われない「名ばかり管理職」といったブラック企業でありがちな事象がいくつも確認されたことからノミネート。

・トヨタ自動車株式会社
 2015年4月に入社した男性社員がうけたパワハラから、2016年10月に社員寮の自室で自死した事件が発端。パワハラが社会的に大きな問題になる中で、日本を代表する大企業が新入社員を短期間に自死まで追い込んだ事案からノミネート。

・吉本興業株式会社
 「闇営業」問題が報じられる過程で、同社と、同社にマネジメントを委託する所属タレント間でのギャランティ配分が不公平であること、またタレントとの間で正式な所属契約書をかわしていないことなどが指摘された問題。同社社長の所属タレントに対する言動がパワハラであるという指摘などからノミネート。

<参考サイト>
・ブラック企業大賞
http://blackcorpaward.blogspot.com/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

アジア的成熟国家モデルづくりへ、日本が目指すべき道とは

日本の財政と金融問題の現状(4)日本が目指すべき成熟国家への道

機関投資家や経営者の生の声から日本の金融市場の問題点を見ていくと、リスクマネーを供給するための市場づくりや人材育成等の課題が浮き彫りになる。良質なスタートアップ企業を育てるにはどうすればいいのか。今こそアジア的...
収録日:2025/04/13
追加日:2025/07/01
木下康司
元財務事務次官
2

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題

国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
小原雅博
東京大学名誉教授
3

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
4

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家
5

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由

睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション

私たちに欠かせない「睡眠」。そのメカニズムや役割についていまだ謎も多いが、それでも近年は解明が進み、私たちの健康に大きく関与することが明らかになっている。まずは最新情報を盛り込んだ睡眠が果たす5つの役割を紹介し、...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/06/05
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授