テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2018.02.26

転職で「給料が下がる」のは本当なのか?

 転職希望者にはうれしいことに、転職市場は 2018年も活況というニュースが飛び交っています。求人情報を検索したり、転職サイトに登録してみたり、誰でも一度は転職を考えたことがあるはずです。

 でも、「もしも」のリスクを考えると次なる一歩がなかなか踏み出せないもの。とくに気になるのは転職による収入ダウン。そんな情報を良く耳にします。これこそ、今回のテーマです。転職で給料が下がるというのは、はたして本当なのでしょうか。

転職で給料アップのほうが多い

 厚生労働省が政府統計として雇用の動向について調査・発表しています。平成28年の「雇用動向調査結果の概況」によると、平成28年1年間の転職入職者の賃金変動状況は、前職より賃金が増加した割合が35.3パーセント、減少した割合は 34.1パーセント、変わらない人の割合は 28.8パーセントとなっています。

給料ダウンでも10パーセント以上減る人は少ない

 もうすこし統計を詳しく見てみると、アップした人のうち、23.1パーセントが「1割以上の増加」でした。他方、ダウンした人のうち、25.8パーセントが「1割以上の減少」。ダウンの人に着目すると、ほとんどの人が1割以下の減少にとどまっていることがわかります。つまり、全体でみると、転職して給料が「1割以上の減少」する人はかなり少ないというわけです。

過度に心配はしなくていい

 以上の結果から、減少する人は全体的に少ないことがわかりました。とは言うものの、およそ3分の1の人は減少しているので、「転職で給料がダウン」という情報は完全に間違っているとは言えません。転職を本気で考えるなら、このリスクは無視できません。

 仮に転職者が日本人の平均年収420万円であることを想定すると、たとえば、ちょうど1割減少した場合、どうなるか。380万円ほどとなって400万円を割ってしまいます。これはたしかに厳しい状況に陥ります。

 でも、あまり過度に心配するのは避けたほうがいいでしょう。これまでの話をまとめると、ポイントは、転職で給料が増加もしくは変動なしの人に比べて減少した人は少ないこと、それから、減少したとしても「1割以上の減少」する可能性は低いということです。結論として、転職で給料がダウンすることを過剰に強調する情報はあまりフェアとはいえません。

 もちろん、冒頭で述べた転職市場活況のニュースも手放しで喜んでいい情報なのかどうかはきちんと見定める必要があります。どんなニュースにも過度に油断したり警戒したりせず、適切な距離をもって接していくことが大切です。

<参考文献>
・厚生労働省:平成28年雇用動向調査結果の概況
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/17-2/dl/gaikyou.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾

民族自決原則とは?多民族国家が抱える難題と矛盾

地政学入門 ヨーロッパ編(6)「ロシア世界」と民族自決原則

「ルスキー・ミール」という言葉で代表される「ロシア世界」――それは、実際の国境にとどまらず、自国語を話す周辺領域の市民をも包括した概念。プーチンはそれを使ってウクライナ侵攻を正当化するが、国家外の自民族の保護を優...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/09
小原雅博
東京大学名誉教授
2

米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか

米国史で最も「主権主義者」を体現しているのはトランプか

トランプ2.0と中東(2)保守主義者から主権主義者へ

トランプ2.0の政治手法や姿勢からは、支持者が信じる保守主義の影が薄れている。「自国第一主義」を守るためなら、桁外れの関税も議事堂襲撃も恐れない。むしろ大国仲間としてロシアに接近する風すらうかがえる。見えてくるのは...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/08
山内昌之
東京大学名誉教授
3

問題だらけの閣僚たち…トランプ政権の真の公約とは?

問題だらけの閣僚たち…トランプ政権の真の公約とは?

第2次トランプ政権の危険性と本質(5)トランプの政治手法の問題とは?

トランプの経済政策は、文化戦争の手段としての反グローバリズムという軸で理解するしかないが、そのような政策を進めるトランプ政権の政治手法の問題点はなにか。その背景には、陰謀論者が全部入ってしまったような閣僚の問題...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/07
柿埜真吾
経済学者
4

その後の余命が変わる!続けるべき良い生活習慣とは

その後の余命が変わる!続けるべき良い生活習慣とは

健診結果から考える健康管理・新5カ条(7)良い生活習慣が健康寿命を延ばす

健康診断の結果に一喜一憂するだけではなく、そのデータを活用し、生活習慣を見直すことが大切である。今回は、内臓脂肪の管理が健康維持に直結する理由や、体重増加と糖尿病リスクの関係、さらには良い生活習慣が寿命に与える...
収録日:2025/01/10
追加日:2025/05/27
野口緑
大阪大学大学院医学系研究科 公衆衛生学 特任准教授
5

健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症

健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症

老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気

東京大学工学系研究科・医学系研究科教授の鄭雄一氏による「老いない骨のつくり方」シリーズ講話。鄭氏はレクチャー冒頭で、「情報に溺れず正しい情報を選択する能力がいかに大切か」と語り、誤った情報は「人生の栄養失調」に...
収録日:2016/09/14
追加日:2016/10/20
鄭雄一
東京大学大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻教授