テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2016.06.23

「発酵で復興」ご当地発酵グルメはいかが?

 塩麹から端を発し麹そのもの、そして甘酒などの発酵食品全体の健康効果が見直されて、大ブームとなった昨今。しかし、発酵食品は古くから日本人に親しまれてきた馴染み深いもので、醤油、味噌、納豆、などは日々の食卓に欠かせないものです。その土地の風土にあわせた地域色豊かなものがたくさんあるので、お出かけのついでにぜひ地元のものを手に入れてみてはいかがでしょう。

 というのも保存が効く発酵食品は、持ち帰って楽しめるという点で、お土産にピッタリ。家に着いてからその土地の味をいただいて旅の思い出を振り返る、なんていう楽しみ方もオススメです。

「全国発酵食品サミット」で各地を次々と活性化

 発酵文化研究・実践の第一人者、食文化評論家で東京農業大学名誉教授の小泉武夫氏は、今から10年ほど前に全国調査をもとに発酵文化による地域活性化に取り組み始めました。

 その中で味噌、麹、漬物、お酒、納豆といった発酵食品を古くから作り続けてきたお店が多い秋田県横手市のような「発酵の町」が、全国各地にあることを発見。「全国発酵のまちづくりネットワーク協議会」という組織を結成し、2008年、第1回「全国発酵食品サミット」を横手市で開催。その後、全国各地で毎年行ってきました。その活動はどんどん広がり、今では1日に10万人から15万人が訪れる大イベントになっているそうです。

「発酵で復興」。震災後の地域復興にも

 「全国発酵食品サミット」は、これまでに鮒鮓(ふなずし)で有名な滋賀県高島市やフグの卵巣のぬか漬けで知られる石川県白山市などで行われ、好評を博しています。その後、東日本大震災で被害にあった宮城県大崎市でも開催されました。小泉武夫氏は大崎市での開催について、10MTVの中でこのように語っています。

 “大崎市は、仙台味噌の醸造所が中心地にたくさんあり、造り酒屋がいっぱいあって、ここも素晴らしい発酵の町です。そこが震災で大変だというので、われわれ全国発酵のまちづくりネットワーク協議会は、『発酵で復興』をキーワードに、全国から発酵のまちづくりの町を集めて支援し、町で発酵文化推進機構が中心となって、発酵のまちづくりを進めました。これも地元・大崎市の皆さんに、多少の力を与えてあげられたのではないかと自負していますが、とにかく発酵は素晴らしい。ワクワクすることばかりです”

 地域の応援にも一役買っているご当地発酵グルメの可能性は、まだまだ広がりそうな予感。期待したいところです。

発酵食品を求めて出かけよう

 この「全国発酵食品サミット」は各自治体からも熱い視線を集めており、2016年は11月12日、13日には山梨県甲府市で開催されるとのこと。味噌、麹、漬物はもちろんですが、山梨といえばワインですよね。ヨーグルトやチーズなども紹介される予定とのことで、大いに盛り上がりそうです。

 また、千葉県神崎市には「道の駅 発酵の里こうざき」という発酵食品を取り揃えた道の駅があるのをご存知でしょうか。こちらの「発酵市場」では、全国から厳選した発酵食品を販売。カフェ & レストラン「オリゼ」では豚肉の味噌麹焼き定食や鶏の塩麹ポン酢唐揚げ定食、塩麹冷製パスタなど発酵食品を生かしたメニューが並び、道の駅ならではの新鮮な野菜類も販売しています。利根川沿いの豊かな自然に触れ合いながらショッピングや食事を楽しめるので日帰りドライブにはうってつけ。都心のお住まい方には、新宿から車で1時間半弱という近さもうれしいですね。

 その土地の発酵食品を探してお出かけするのもアリですし、行った先で探すのもアリ。ぜひお出かけ候補を探すときのキーワードに加えてみてはいかがでしょう。

<参考サイト>
・発酵文化推進機構
http://hakkou-bunka.jp/info
・道の駅 発酵の里こうざき
http://www.hakkounosato.com/access/index.html
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

相互依存で平和は保てるか…EUの深化・拡大の難題とは

地政学入門 ヨーロッパ編(9)EUの深化・拡大とトルコの問題

国際政治の理論として国同士の経済交流、相互依存が安全保障、つまり平和を維持できると伝統的に考えられてきたが、今般の国際政治ではそれは必ずしも当てはまらないようだ。そこでEUの問題である。国の垣根を越えて世界国家に...
収録日:2025/02/28
追加日:2025/06/30
小原雅博
東京大学名誉教授
2

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

最悪のシナリオは?…しかしなぜ日本は報復すべきでないか

第2次トランプ政権の危険性と本質(8)反エリート主義と最悪のシナリオ

反エリート主義を基本線とするトランプ大統領は、金融政策の要であるFRBですらも敵対視し、圧力をかけている。このまま専門家軽視による経済政策が進めば、コロナ禍に匹敵する経済ショックが世界的に起こる可能性がある。最終話...
収録日:2025/04/07
追加日:2025/06/28
柿埜真吾
経済学者
3

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事

AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か

昨今、生成AIに代表されるようにAIの進化が目覚ましく、「AIに代わられる仕事、代わられない仕事」といったテーマが巷で非常に話題となっている。では、AIに代わられない事とは何であろうか。そこで、『江藤淳と加藤典洋』(文...
収録日:2025/04/10
追加日:2025/06/25
與那覇潤
評論家
4

遍歴とアバター…多様な仏、多様な菩薩が変容する面白さ

遍歴とアバター…多様な仏、多様な菩薩が変容する面白さ

おもしろき『法華経』の世界(5)遍歴するアバター

『銀河鉄道の夜』の著者・宮沢賢治にとってもそうだが、『法華経』の重要なテーマは「遍歴」であると考えられる。遍歴や修行の旅は、仏教的には方便を用いて悟りに向かうことだが、『大日経』住心品には悟りと大悲こそが究境と...
収録日:2025/01/27
追加日:2025/06/29
鎌田東二
京都大学名誉教授
5

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ

「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス

「重要思考」で考え、伝え、聴き、そして会話・議論する――三谷宏治氏が著書『一瞬で大切なことを伝える技術』の中で提唱した「重要思考」は、大事な論理思考の一つである。近年、「ロジカルシンキング」の重要性が叫ばれるよう...
収録日:2023/10/06
追加日:2024/01/24
三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授