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DATE/ 2017.03.16

「体に良い食べ物」が次々出てくるのはなぜ?

 「自然派食品」や「オーガニック」は、健康情報に興味がない方でも、一度は耳にする言葉です。テレビや本で紹介された「体に良い食べ物」はすぐに売れてしまうため、手に入れるために必死になる人も多いのではないでしょうか。

 「これさえ食べればもう安心」という食べ物があれば、それは売れ続けるはずですが、情報がどんどん変わっていき、昨日まで良いとされていたものが良くないということになっていたり、さほど注目もされていなかったものが一躍人気食材にのぼりつめたりすることも少なくありません。なぜ、光が当たるものが次々と変わるのでしょうか。

ヘルシーフードが次々と出てくるのはなぜ?

 『体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか』(畑中三応子著、ベストセラーズ)によると、まず健康食品の流行は、ありきたりな食べ物から科学者が新しい発見をし、専門家が本を出すことによって始まっていくのだといいます。日本人は食べ物に対して、善悪を分けるのが好きで、肉の良し悪し、野菜の良し悪し、主食の米にいたるまで、意見が分かれることがしばしば。結局、体に良いの?悪いの?ということを知りたがる人も多く、そこに「これがいい」という食材が現れれば、たちまち虜になってしまう、ということです。

 畑中氏は、栄養学者で研究者の高橋久仁子氏が定義する『フードファディズム』について言及しているのですが、『フードファディズム』とは「食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を過大評価すること」。そこで畑中氏は、まさに「これさえあれば」と人々に過度の期待を持たせ、まるで薬かのようなうたい文句でその含有量にかかわらず宣伝するので、皆わかっていても踊らされてしまい、健康を願う人にとってこれを避けるのは難しいのだ、と言っています。

ほとんどの食材がヘルシー・ファッション・フードとなる!?

 そんな中、健康食品に大きな変化が起こっているのだといいます。平成27年4月に「機能性表示食品」制度が始まりました。機能性表示食品とは、「事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品」のこと。消費者庁によると、「国の定めるルールに基づき、事業者が食品の安全性と機能性に関する科学的根拠などの必要な事項を、販売前に消費者庁長官に届け出れば、機能性を表示することができます」とのこと。対象は、特定保健用食品など一部を除き、「生鮮食品を含め、すべての食品」とありました。詳しくは、消費者庁のホームページをご覧いただきたいのですが、つまり健康食品について、科学的根拠をもとにどの成分によってどういう効能が期待できるか、ということが書けるようになったということです。そうなると、ほとんどの食材がヘルシー・ファッション・フードとなる可能性があるのかもしれません。

ブームで食材を選ぶのは悪いことなのか

 そうした状況をみて感じるのは、健康食品ブームは必ずしもすべて否定されるものではないということです。なぜなら、いろんな食材が注目されることによって生活に彩りが出てきますし、食べたことのないものに挑戦してみるという楽しみも生まれてくるからです。また、慣れ親しんできた食材がこんな一面も持っていたのかと、知るきっかけにもなります。

 とはいえ、ブームに踊らされて偏った食事をし、お金や時間をかけすぎたりして、心と体の健康を損なうという方は考え直すべきです。畑中氏は「健康のハードルが上がりすぎている」と主張しています。つまり、はたしてブームに乗ることが本当に健康的なことなのかどうか、一度よく考えてみることが大事なのです。

<参考文献・参考サイト>
・『体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか』(畑中三応子著、ベストセラーズ)
・消費者庁ホームページ:「機能性表示食品」って何?
https://hfnet.nih.go.jp/usr/kiso/pamphlet/150407kinousei1.pdf
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授