●文明発展に伴う食生活の変化が病気を引き起こす
大切なのは、食べ物の質です。これ(図表4)を見てください。すごいでしょう。1800年、つまり18世紀まで、アメリカではがんや心筋梗塞はほとんどなかったそうです。そういう病気はそれから徐々に増えます。特に1910年を見てください。アメリカの東西が鉄道でつながって、経済発展します。そこから、文明、文化が発達します。そうすると、必ず乳製品が増えていくのです。1940年代のアメリカは、第二次世界大戦の軍事産業で潤ったので、経済状態が良くなり、肉と卵の消費が増えるのです。反対に、1910年から一貫して、穀類とイモ類の消費は減っていきます。つまり、国の経済、文明が発展すると、必ず肉・卵・牛乳の消費が増えて、穀類とイモ類が減っていくのです。
これはどの国でも経験してきたことです。そして、今この真っただ中にいるのが中国です。そのため、中国でも私の『「食べない」健康法』などが売れて、4、5年前に北京政府から「断食道場やるから協力してくれ」と要請が来たことがあります。ちょっと忙しいと言って断りましたが。そういうことで、栄養状態が良くなったので、中国も今そういう状態になっているのです。
●肺がんの原因はたばこではない
さらに図表5と図表6を見てください。がんになるのに、20年かかると言いました。図表5と図表6は、統計開始の20年後、1930年から始まっています。図表5は、女性のがんです。子宮頸がんと胃がんが減ってきますね。反対に、乳がんと大腸がんは増えて横ばいです。図表6は男のがんです。胃がんが減ってきます。反対に、大腸がんと前立腺は増えて横ばいです。そして肺がんがものすごい勢いで増えています。
肺がんは、たばこが原因だと思うでしょう。でもアメリカでたばこを吸う人は、このあたりから減ってきたのです。それなのに肺がんが増えてきたことは、たばこが原因ではないということです。皮膚がんは太陽が原因だとよく言いますが、それならばアフリカ人とインド人の全員がならないとおかしいですが、そんなアフリカ人やインド人はいません。皮膚がんになりやすいのは、オーストラリアやアメリカに住む人で、高脂肪食を食べた上に太陽に当たるとなりやすい。肺がんも同じです。高脂肪食を食べた上にたばこを吸うと、肺がんになりやすい。この図表は、そういうことを表しているのです。
●日本人はタンパク質を取るようになって、がんで死ぬ人が増えた
今度は図表7と図表8を見てください。縦軸は、その国の国民1人当たりの、1日の動物性タンパク質の摂取量を示します。横軸は、人口10万人当たりで大腸がんや乳がんになった人の、1年間の死亡数です。多いのは、ニュージーランド、アメリカ、カナダ、オーストラリア、フランスなどです。つまり動物性タンパク質を多く取る国ほど、大腸がんや乳がんで死ぬ人が多いということです。日本だけは下の方にあるでしょう。でも実はこれは、1954(昭和29)年に国連が出したグラフなのです。
なぜそんな古いものを見せたのかと思われるでしょう。欧米では、そのこ頃から動物性タンパク質の摂取量はあまり変わっていません。それに対して日本の死亡数は、チリやギリシャを抜いて、どんどん上がってきています。今の若い人ほど、大腸がんや乳がんで同じグラフができます。大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、前立腺がん、すい臓がん、白血病、食道がんなど、全部このグラフと同じです。いかに食べ物が大切かということです。
●糖質制限はかえって危険である
最近では、低炭水化物ダイエットや糖質制限食が流行っています。でも私は、何かおかしいなと思っていました。それなのに、大学教授級の人が次から次へと似たテーマの本を書くのですよ。そんな状態が頭にきたので、高糖質ダイエットの本を3日で書きあげました。糖質こそ生命にとって一番大切で、糖質制限は危険だという内容の本です。
低血糖発作というのがありますね。でも低タンパク質発作、低脂肪発作というのはないでしょう。血糖が下がると発作が起きる、痙攣を起こす、失神する。だから血糖は、そのぐらい大切なのですね。空腹感や満腹感も、血液の中の糖が関係します。血糖が下がると空腹中枢が空腹を感じます。反対に血糖が上がると、満腹中枢が満腹を感じます。だから、糖が一番大切なのです。
それなのに、なぜあのような本が出るのか。糖が悪いわけではないのです。でも糖というのはおいしいですから、食べ過ぎるわけですね。食べ過ぎると、当然肥満になります。肥満になると、今度は高脂血症、高血糖、高血圧、それからがんにもかかりやすくなります。だから、そういう肥満にならないよう、糖を食べさせないのです。
糖質制限食というのは知ってい...