●病気の欧米化が「逆さ仏」現象を生んでいる
がんと言うと、昔は胃がんと子宮頸がんばかりでした。脳卒中と脳出血の数はすごく減っていくのです。増えているのが、肺がん、大腸がん、乳がん、卵巣がん、子宮体がん、前立腺がん、すい臓がん、白血病、食道がんなどです。さらに心筋梗塞、脳梗塞が増えました。赤で書いたのは、病気が欧米化してきたということです。欧米化した原因は何かというと、食生活の欧米化です。図表3見てください。1950年からの食生活が出ていますね。まず乳製品を見てください。50年後に17.25倍になっています。肉類は50年後は9.82倍、玉子が6.23倍です。すごい増加量です。反対に、いも類は10分の1です。さらにここには書いていませんが、米類は半分です。
若い人、といっても55歳以下は若い人と思ってください。というのは、平均寿命は男が80歳、女が87歳、平均で83.5歳、だいたい84歳とします。それより以下は、若い人だと思ってください。この若い人が、いま死んでいるのです。いま親が子どもの葬式をしないといけない「逆さ仏」現象というのが出てきています。ここにいる55歳以下の人は、注意してください。
●「空腹の時間」の欠落が若い世代の死を招く
55歳以上の人は、手を挙げてみてください。私もです。この人たちは大丈夫です。現在55歳以上の人たちは、戦中戦後の「わが青春に“食い”なし」の、食べ物がない時代を生きてきました。ここまできたらしめたもので、いつまでも生きます。むしろ、皆さんの子どもさんやお孫さんを注意してあげてください。本当に危ないですから。
皆さん、若いのです。本当に注意してください。今日からでもいいですから。がんの診断は突然ですが、そこまでになるのに20年かかっているのです。食生活を見てください、これだけ変わっているのです。私たちの子どもの時代は、ごはんに味噌汁、納豆、豆腐、めざしがあれば良い方で、それもないときにはごはんに醤油だけかけて食べたのですよ。
当時は「わが青春に“食い”なし」と言いまして、食べ物がなかったのです。でもそれが良かったのです。今になって分かったのは、それなのです。今の若い人がどんどん死んでいくのは、空腹の時間・時代がないからなのです。それから欧米食でしょう。これでどんどん死んでいくのです。平均寿命というのは、今年生まれた赤ちゃんが何歳生きるかの予測です。つまり今年のゼロ歳の平均寿命のことを言っているのですから、皆さんとは全然関係がありません。私は昭和23年生まれで、当時の平均寿命は52歳です。だから、もう14~5年ぐらい前に死んでいないとおかしい。
石原慎太郎先生と食事をしている時、「親父もあの裕さん(石原裕次郎)も、52歳で若死にしてな」と言うので、先生ちょっと待ってくださいと言いました。慎太郎先生が昭和7年9月30日、裕次郎さんが昭和9年10月28日の生まれです。昭和7~9年の男の平均寿命は、44歳だったのですよ、と言ったら「ええ?」と言っていました。そんなものですよ。今の子どもたちは、絶対にその半分も生きません。実際、20代で乳がんや卵巣がんになって、もう死んでいるのですから。それは、空腹の時間がないからなのです。
●空腹になれば「長寿遺伝子」が活発化する
それを証明してくれたのが、アメリカのマサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ教授です。彼は、西暦2000年に、人間も動物も、空腹になるとサーチュイン遺伝子、別名「長寿遺伝子」という遺伝子が活発化して、活性酸素を除去し、病気を防ぐ、治す。そうやって長寿になれるということを言ったのです。
生きる人は生きるのです。でも死ぬ人は、本当に死んでしまいます。私が医者になった40年以上前は、50代でがんになる人がいたら、びっくりしていたのです。それから10年ぐらいたったら、40代の人が出てきたのですね。この時もびっくりしました。さらに10年すると30代の後半、あと10年すると20代後半です。最近は20代の前半です。18~19歳の乳がん、卵巣がん、子宮体がんももうすぐ出てきます。どんどん若年化してくるのです。
だから平均寿命が80歳とか87歳とか、世界一とか言っていますが、そんなのは夢のまた夢で、完全に逆縁、逆さ仏になっています。私も含めて、今55歳以上の人たちは生きますので、もう本当に逆さ仏が危ないですから、子どもさん、お孫さんは注意してあげてください。
そういうことで、1日1回か2回は空腹の時間をつくらないと駄目です。空腹になるとサーチュイン遺伝子が活発化し、胃の中からグレリンというホルモンが出て、脳を刺激します。そうなると、とても記憶が良くなる、工夫ができる、物事を考えられるようになります。人類...