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「父祖の遺風」が教えてくれる国を守る気概と歴史的教訓

独裁の世界史~未来への提言編(7)国を守る気概と歴史意識の構築

本村凌二
東京大学名誉教授/文学博士
概要・テキスト
歴史上、成功した世界の指導者には「父祖の遺風」を守るという共通項があった。日本の「憲法9条」問題もそうした歴史的視座から捉えると、「国を守る気概」という重要な見方が浮かび上がってくる。かつてそれがない国を他国が救ってくれたという事例はあっただろうか。日本は今後どうふるまうべきか、世界史の教訓に学びたい。(全10話中第7話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10:01
収録日:2020/08/07
追加日:2020/12/11
カテゴリー:
≪全文≫

●「父祖の遺風」と憲法9条の関係


―― 前回は指導者の条件のような部分にも入ってきましたが、 その中で少なくとも独裁的な部分を含めて成功したところとして印象的なのが、「独裁の世界史」シリーズを通して先生のお話に共通している「父祖の遺風」のような歴史意識を持ってやってきた人が指導者に立ったところが比較的成功しているケースが多いことです。そうではなくて、一種進歩主義的な考え方や何らかのルサンチマンを持つような指導者が立ったときには、独裁もたいていひどい形で失敗していってしまうようなパターンがあるのかと思います。

 今の日本なり世界を前提として、これまで言われた共和主義的なものを世界史に学ぶといったときに、これからどういうように歴史意識や父祖の遺風のようなものを構築していけばいいかというところになります。これについては、どのようにお考えでしょうか。

本村 今の話を聞くと、どうしても憲法9条問題に関わることを想起します。私は一貫して憲法9条第2項を削除すべきという意見の持ち主です。「絶対悪である戦争を廃絶しなければならない、戦争に訴えてはいけない」ということで、第9条はいいと思います。ところが、第2項で「そのためには」という形で自衛権すら否定しています。

 自衛権を否定することがなぜいいのかというと、結局戦力を持たなければ戦争にはならないからです。戦争はいつも自衛を口実に始まると言われますから、自衛権すら否定していれば戦争は始まらない。そうすれば、少なくとも自分たちから戦争を起こすことはない。そういう意見は理想主義的な意味では正しいかもしれないけれども、現在のように一歩先にどんなことが起こるか分からない局面になると、どうなのか。やはり非常事態・緊急事態は、いつもどこかで考えておかなければいけない問題です。

 あと何百年かたって人間がもう少し進化すると、お互いに信頼関係が持てたり、疑心暗鬼にならずにお互いの人間性を信頼できる段階に至るかもしれない。そうすれば、そういう考え方でもいいと思いますが、21世紀になりたての今の人間に対してそんなことを求めてもどうなのか。

 自分たちさえ自衛権を持たず、「他には攻めていきませんから、他の人も攻めてこないでください」という非武装中立的な考え方を表明すれば、それでいいのか。軍事力を持つ相手が力でねじ伏せようとしてきたら、それは戦...
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