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マルチスケールエンジニアリングによる安心で安全な未来

教養としてのナノテクノロジー(10)界面現象とマイクロ流体システム

概要・テキスト
ナノメートルスケールの発見をメートルサイズスケールの人間の生活に役立てるには、実用に供するデバイスをつくり出す必要がある。近年、マイクロ流体システムを使用したデバイスの開発により、医療効率が格段に上がることが予想されている。最終話では、マルチスケールエンジニアリングの大切さと、そのことがもたらす安心で安全な未来について解説する。(全10話中第10話)
時間:14:25
収録日:2021/03/29
追加日:2021/09/23
≪全文≫

●新型コロナウイルスの脅威と3つの検査


 東京理科大学工学部機械工学科の元祐昌廣と申します。ここでは「界面現象とマイクロ流体システム」という話をしたいと思います。

 これまで、ナノテクノロジー、マルチスケール解析、そして界面活性などさまざまな話をしてきましたが、ここではエンジニアリングとしての生かし方である「マイクロ流体システム」という話をします。

 これは世界地図です。

 このように、2019年から現在にかけて世界は新型コロナウイルスの脅威にさらされています。これより以前にウイルスの脅威に世界がさらされたのは、ちょうど100年ほど前のスペイン風邪の時なので、まさに100年たって人間は新たな試練にさらされているわけです。このウイルスの驚異的な拡散に対して、100年前とは違って、現在われわれには情報、そして科学があり、新たな方法で立ち向かうことができます。

 まず、われわれがウイルスに感染したかもしれない、ウイルスに感染しているのではないかという恐れを持ったときにどうすればいいのでしょうか。現在の日本では保健所に行って検査を受けます。ウイルス感染の検査は、PCR検査・抗原検査・抗体検査の大まかに3種類の検査が存在します。

 この3種類はそれぞれ検査する対象が違っており、PCR検査はウイルスの中の遺伝子情報を増幅して検出します。上図のように、「サーマルサイクラー」という装置で熱の力を利用してウイルスを増殖させて、その増殖の伸長反応に伴う蛍光反応を利用して検出します。そのときに酵素と熱を使います。

 抗原検査はウイルスを直接検出します。真ん中の図にあるのは、新型コロナウイルスの模式図で、ウイルスの表面のギザギザはたんぱく質です。このたんぱく質の一部の抗原を検出する、言い換えると、このたんぱく質の一部に特異的に結合するような抗体を入れておいて、それに結合するかどうかを見る、という検査です。そのため、これを検出するにはある程度の数のウイルスが必要になります。

 抗体検査はある人の体内にウイルスが入って、それに闘ってできる抗体が体の中にできたかどうかを見るための検査です。上の2つは唾液やの...
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