本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
犬養内閣組閣時に漏れてしまった宇垣一成大将の大事な忠告
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(15)半年後に再び計画された十月事件
渡部昇一(上智大学名誉教授)
1931年3月に計画された「三月事件」から半年後、青年将校たちは再び「十月事件」と呼ばれるクーデターを計画する。この頃から、将官をはじめとする偉い人たちは全部駄目で、「青年将校」という概念が確立し始めた。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第15話。
時間:9分57秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月27日
≪全文≫
 そしてその約1カ月後に浜口首相が辞任し、第二次若槻礼次郎内閣(昭和6年〈1931〉4月14日~12月13日)が発足する。宇垣大将は三月事件の責任を取って陸相を辞任し、同年6月に予備役に編入され、朝鮮総督に任命された。第二次若槻内閣の陸軍大臣は南次郎大将になり、その次の犬養毅内閣(昭和6年〈1931〉12月13日~7年〈1932〉5月26日)では荒木貞夫中将(のち大将)が陸相を務めている。

 先にも触れたが、犬養首相は立派な人物ではあったが、統帥権干犯を掲げて浜口元首相を激しく批判するという、非常に害のあることも行なっていた。だが犬養首相と宇垣大将は郷里が同じ岡山で仲が良く、宇垣大将は犬養首相が組閣をするときに朝鮮から手紙を送り、いろいろと注意を与えていたという。

 その注意の中でたった一つだけ漏れたことがある。

 それは、荒木中将を陸軍大臣にしてはいけないということだった。

 先ほど述べたように上原勇作大将は反長州閥をつくっていて、荒木中将はその流れに連なる人物であった。これがのちに皇道派と呼ばれるようになる。

 三月事件の結果、宇垣大将が失脚したことで、陸軍を政治的に抑える力を持った人がいなくなってしまったことが改めて悔やまれる。そういう力を持った人物は、のちの第二次近衛内閣(昭和15年〈1940〉7月22日~16年〈1941〉7月18日)で東條英機中将(のち大将)が陸相になるまで、ついに現われなかった。

 荒木中将は陸相になると、恥ずかしげもなく反宇垣人事を実行していくが、それについては後述することとする。

 さて、三月事件は未遂に終わったものの、国家改造の夢を抱く青年将校たちの行動は止まらない。三月事件から約半年経った昭和6年10月に、橋本欣五郎中佐、長勇少佐らはいわゆる十月事件と呼ばれるクーデターを計画する。今度は陸相や軍務局長といった上層部を介さず、青年将校だけで蹶起(けっき)することにした。しかも今回は閣僚や政党幹部、財界の有力者などを暗殺し、荒木中将を首班とする軍事政権を樹立する計画を立てるところまでエスカレートしている。

 要は、上は頼むに足らず、ということだ。彼らはそのクーデターを10月24日に実行することにしていた。

 昭和6年といえば満洲事変が起こった年である(事変勃発は9月18日)。

 陸軍からすれば、幣原外...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
最初の日本列島人~3万年前の航海(1)日本への移住 3つのルート
最初の日本列島人はいつ、どうやって日本に渡ってきたのか
海部陽介
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
百姓からみた戦国大名~国家の本質(1)戦国時代の過酷な生存環境
戦国時代、民衆にとっての課題は生き延びること
黒田基樹
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原
遊女の実像…「苦界?公界?」江戸時代の吉原遊郭の真実
堀口茉純

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(2)運命・世界・他者
「私をお母さんと呼ばないで」…突然訪れた逆境の意味
津崎良典
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎