本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
北一輝の思想…『日本改造法案大綱』は右翼の社会主義だ
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(3)「右翼の社会主義者」の強烈な主張
渡部昇一(上智大学名誉教授)
日露戦争の頃から広がりを見せ始めた社会主義は、大正時代に入ると大きく流行した。従来の社会主義運動は「貧乏人を救え」というぐらいの話だったが、ロシア革命が起きて共産主義政権が成立すると革命運動になり、日本でもさまざまな方面に影響を及ぼすようになった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第3話。
時間:4分03秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月24日
≪全文≫
 大正時代の一つの大きな問題は、日露戦争の頃から広がりを見せ始めた社会主義が、大きく流行したことだ。女権拡張運動が起きたり、明治時代後半に翻訳され始めたノルウェーの劇作家イプセンの『人形の家』が広く読まれたのも、この頃である。

 従来の社会主義運動は、「貧乏人を救え」というぐらいの話であって、多少過激なものはあっても、私有財産の廃止や皇室の廃止などを唱える恐れはなかった。要するに、良性の社会改良運動だったのである。

 ところがロシア革命が起きて共産主義政権が成立すると、ソ連は「万国の労働者よ、団結せよ」と唱え、国境を越えて国際共産主義運動を展開し始めた。そうなると、これまで「貧乏人を救え」という程度だった観念が、「国家を転覆せよ」という観念に変わってくる。これは単なる社会改良運動ではなく革命運動であり、これが日本でもさまざまな方面に影響を及ぼすようになったのだ。

 もう一つの問題は、左翼と右翼の混在である。左翼はもちろん社会主義に端を発していて、「貧乏人の味方」という旗印は昔からあった。ところが今度は、左翼が「皇室廃止」という革命思想を持つようになったため、左翼的な志向を持っていながら「反皇室」には与しない人々が、天皇陛下を奉ってはいるものの社会政策としては左翼とほとんど変わりがない主張を打ち出すようになったのである。天皇陛下を奉っているために「右翼」と称されるが、しかし、その実は「左翼」的な運動が展開されたのである。

 戦前の右翼のバイブルとして有名なのは、やはり北一輝の『日本改造法案大綱』であろう。

 この中で北は、まず、

〈天皇は全日本国民と共に国家改造の根基を定めんがために天皇大権の発動によりて三年間憲法を停止し両院を解散し全国に戒厳令を布く〉(※読みやすさに配慮して文字遣いや表記を適宜変更し、句読点などを補う。以下同)

 とするが、それで実現するものは、

〈華族制を廃止し、天皇と国民とを阻隔し来れる藩屏を撤去して明治維新の精神を明かにす〉

〈従来国民の自由を拘束して憲法の精神を毀損せる諸法律を廃止す。文官任用令。治安警察法。新聞紙条例。出版法等〉

〈天皇はみずから範を示して皇室所有の土地山林株券等を国家に下附す。皇室費を年給三千万円とし、国庫より支出せしむ〉

〈日本国民一家の所有し得べき財産限度を壱百万円とす。海外に財産を有...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
核DNAからさぐる日本のルーツ(1)人類の起源と広がり
人類の祖先たちの「出アフリカ」…その時期はいつ頃?
斎藤成也
本当のことがわかる昭和史《1》誰が東アジアに戦乱を呼び込んだのか(1)「客観的かつ科学的な歴史」という偽り
半藤一利氏のベストセラー『昭和史』が持つ危険な面とは?
渡部昇一
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋 (1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
堀口茉純
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘

人気の講義ランキングTOP10
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(1)桜田門外の変と井伊直弼の人物像
「桜田門外の変」の謎…井伊直弼の警護に問題はなかったのか
山内昌之
編集部ラジオ2026(28)自由喪失の危機に考えるハイエク-1
斎藤幸平氏に物申す…自由喪失の危機に読みたい自由主義の近現代史
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
地政学入門 歴史と理論編(1)地政学とは何か
地政学をわかりやすく解説…地政学の「3つの柱」とは?
小原雅博
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
徳川家康の果断と深謀~指導者論と組織論(1)率先し陣頭指揮する
徳川家康の「天下泰平」デザインとは?…陣頭指揮とカリスマ性
片山杜秀
生成AI「Round 2」への向き合い方(8)「責任あるAI」への課題と覚悟
責任あるAI――マイクロソフトが掲げるコンセプトと覚悟
渡辺宣彦
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介