本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
監獄どころか料亭で遊び放題だった十月事件の首謀者たち
本当のことがわかる昭和史《3》社稷を念ふ心なし――五・一五事件への道(16)首謀者たちに下されたきわめて甘い処分
渡部昇一(上智大学名誉教授)
1931年10月に計画されたクーデター「十月事件」も、三月事件同様、結局は挫折し、未遂に終わった。ところが、首謀者の青年将校たちが収容されたのは、監獄どころか東京都郊外の料亭だった。上智大学名誉教授・渡部昇一氏によるシリーズ「本当のことがわかる昭和史」第三章・第16話。
時間:4分47秒
収録日:2014年12月22日
追加日:2015年8月27日
≪全文≫
 十月事件が実施される予定だった前月の昭和6年9月、陸軍省では長少佐を危険視し、北京駐在武官を命じたが、長少佐は赴任を嫌がり、上官に説得されてようやく北京に発った。ところが長少佐はものの1週間で北京を抜け出し、東京・築地の金龍亭という料亭で芸者を侍らせて潜んでいた。そのとき彼は出所不明の20万円を所持していたが、これは大川周明が渡したものだといわれている。

 ところが桜会のメンバーの中にも、このクーデターの計画が粗雑かつ時期尚早で、大量殺人につながることに反対した人たちがいた。積極派にしてみれば「自分たちの計画は建設的とはいえないが、破壊だけは成功する」というわけで、戦後の大学紛争時代の全学連に似たようなものである。クーデターに反対した青年将校たちは、彼らの上司である参謀本部作戦課長の今村均大佐に計画を打ち明けた。

 今村大佐は大東亜戦争で、第十六軍司令官としてジャワで善政を敷いたあと、第八方面軍司令官としてラバウルで戦い、戦後も立派な人物として讚えられている。部下からクーデターの話を聞いた今村大佐は、二宮重治参謀次長に報告し、二宮次長は南陸相に報告を入れた。そこで南陸相は、クーデター政権の首相に指名されている荒木教育総監部本部長に、首謀者たちの説得を依頼したのである。

 荒木中将はやはり、自分がクーデター政権の首相に担がれることには抵抗があったのだろう。荒木中将は当時人事局補任課長を務めていた岡村寧次大佐をともない、料亭に潜伏していた橋本中佐と長少佐のもとを訪れ自首を勧めた。橋本中佐ら5人の中心メンバーは料亭から憲兵隊に連行され、保護検束を受けたためクーデター計画は挫折した。

 ところが、その後の処置に大きな問題があった。クーデターを計画した青年将校たちが、監獄どころか東京都郊外の料亭に「分散収容」されていたのだ。

 酒は飲み放題で芸者も呼び放題だったから、処罰というより歓待である。クーデターも未遂に終わり軍法会議も開かれなかったから、内々の行政処分になっている。橋本中佐は謹慎20日間、長少佐と田中弥大尉が同10日間および地方転出になり、その他は無罪放免というきわめて甘い処分が下された。

 ところがこのクーデターの話は、どこからか宮中にも漏れていて、「橋本事件はいったいどうなっているのか」という問い合わせがあったらしい。そこで南陸相が報告書...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
独裁の世界史~ギリシア編(1)世界史の始まり
「独裁政から始まる」という世界史の諸相に迫る
本村凌二
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
豊臣政権に学ぶ「リーダーと補佐役」の関係(1)話し上手な天下人
織田信長と豊臣秀吉の関係…信長が評価した二つの才覚とは
小和田哲男
敗戦から日本再生へ~大戦と復興の現代史(1)厚木飛行場に降り立った占領者
敗戦した日本の武装解除はなぜ無血だったか…その背景とは
島田晴雄
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎

人気の講義ランキングTOP10
徳川将軍と江戸幕府~井伊直弼編(3)水戸藩の問題と安政の大獄
安政の大獄は失政!?…井伊直弼は何を見誤ったのか
山内昌之
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(2)教義の宗教と覚りの宗教
キリスト教は教義の宗教、仏教は覚りの宗教…仏教はなぜ普遍宗教か
橋爪大三郎
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
資本主義の再定義…哲学で考える(1)アダム・スミスの「市場と感情」
資本主義を哲学する…まずアダム・スミスの見えざる手と道徳感情論
中島隆博
『江戸名所図会』で歩く東京~日本橋 (1)日本橋に見る徳川家康の手腕
徳川家康と江戸の町づくりー江戸時代の「日本橋」の姿とは
堀口茉純
原因と結果の迷宮~因果関係と哲学(6)不在因果の問題
不作為(◯◯しなかったこと)の原因は無限に拡散する
一ノ瀬正樹
ギリシア悲劇への誘い(7)ギリシア悲劇を論じた歴史
アリストテレス、ニーチェ…哲学者によるギリシア悲劇批評
納富信留
デカルトの存在論に学ぶ(1) 「我思う、ゆえに我在り」
「我思う、ゆえに我在り」はデカルトの専売特許ではない
津崎良典